Open Close

草彅剛×真飛聖 対談インタビュー! 映画『ミッドナイトスワン』 「一果がそこにいたから僕の演技は必要なかった」(草彅)、「剛さんは憑依型役者、美しかった・・・」(真飛)

『ミッドナイトスワン』-(6)

草彅剛が主演を務める、内田英治監督オリジナル脚本の映画『ミッドナイトスワン』が、ついに9月25日(金)に公開。本作は、トランスジェンダーとして日々身体と心の葛藤を抱え新宿を舞台に生きる凪沙と、親から愛を注がれず生きるもバレエダンサーを夢見る少女・一果(服部樹咲)の姿を通して“切なくも美しい現代の愛の形”を描くラブストーリー。

少女に出会い、母性が目覚め、命がけで愛情を注いでいく主人公・凪沙役を草彅、一果の才能を見出し、彼女を支えるバレエ教室の先生・実花役を真飛聖が演じる。観る者の魂を揺さぶる圧倒的な演技、繊細な役どころを務めた二人が、本作への思いを語ってくれた。

●メイン1 s52_51_re

― 今作のオファーを受けるにあたり、強く心惹かれた部分や感じたことがあったら教えてください。

草彅剛(以下、草彅):本作は内田監督が脚本も書いていらっしゃるのですが、台本を読んでとても感動しました。この物語をどうやって、映像にするのだろうかと。トランスジェンダーという役に初めてチャレンジしましたが、一果に対する愛情が芽生え、やがて自分にとって一番かけがえのない存在になっていく・・・。人間愛が溢れていてとても心を打つ作品だと思いました。

真飛聖(以下、真飛):台本を読んで、剛さんの演技を想像していました。ご本人を目の前にして失礼かもしれませんが、私は剛さんのお芝居が大好きなんです。

草彅:そうなんですか? 僕も真飛さんのこと好きですよ!

真飛:両想いですね(笑)。台本を読んだときに、活字から思い描く剛さんの凪沙に鳥肌が立って、これは剛さんしか出来ないだろうし、この世界に自分も入ることができるのであれば絶対に参加したいと強く願いました。

草彅:そんなに? なんか嬉しいですね。

真飛:ご本人がここにいると、ちょっとウソっぽいですよね(笑)。でも本当です。

草彅:真飛さんとはドラマ「37歳で医者になった僕〜研修医純情物語〜」(2012年)で共演しましたが、その時の撮影現場がとても良くて、共演者がみんな仲良くなったんです。その後、真飛さんは吾郎(稲垣吾郎)さんと舞台をご一緒されて、またここで一緒にお芝居できるという良いタイミングでした。なんか、縁あるよね。

真飛:私もご縁があると思っていました。私が宝塚歌劇団を卒業して初めての映像ドラマが剛さん主演の作品だったんです。

草彅:(水川)あさみちゃんも同じドラマで一緒だったよね。

真飛:そうなんですよ。今回10年ぶりくらいにまた集まった感じでした。

草彅:僕も本当に真飛さんとあさみちゃんがいてくれてこの役ができたと思います。初めて挑戦する役だったので、一緒にいてくれて心強かったです。真飛さんは優しい先生で、バレエ教室のシーンも凄くよくできたと思っているので、とても感謝しています。

真飛:いや、ちょっと・・・(笑)。(草彅の言葉に大照れ)

草彅:真飛さんに感謝しています。真飛さんがいなかったら僕はこの役を演じられていたかわかりません。(笑)

真飛:もう~、それ以上はいいです!(笑)

草彅:でも、「嘘の戦争」(2017年)のときはちょっと悪い女の役だったんだよね。

真飛:そうでしたね。こうやって何年かごとに剛さんとご一緒できて幸せです。とにかく映画は大号泣でとても良かったです。

草彅:うん、良かった・・・。

『ミッドナイトスワン』-(40)

― 繊細な役を演じられましたが、役作りで苦労されたことはありますか?

草彅:一果役の樹咲ちゃんは今回初めての演技だったので、監督から色々と演出を受けていて、とても緊張されていたようでした。でも、実際にカメラの前に立つ彼女は一果そのものだったんです。その姿を見て、僕があまり“演技”をするのは良くないなと感じました。僕は彼女の瞳をしっかり見て臨むだけ。 “演技”をするとわざとらしくなるから。そこまで自分を持っていくことができたのは、現場の環境のおかげです。「どう演じようか」などと考えずに一果のことを愛おしく思うように・・・というか本当に思ってくるんです。それは監督の狙いでもあったのかなと。どれだけ演技しないようにするかが一番の役作りでした。

『ミッドナイトスワン』-(33)

― トランスジェンダーを演じるにあたって、所作などを研究されたりしましたか?

草彅:撮影が始まる前にトランスジェンダーの方とお会いしたり、監督から資料をいただいて勉強をしましたが、実際に撮影現場に入ると周りに(トランスジェンダーの方が)いらっしゃるので自然に雰囲気に包まれていきました。

― 共演された真田怜臣さんとそのことについてお話しされましたか?

草彅:特別にお話しをすることはなかったんですが、一緒にいると空気を感じ取ることができていい影響を受けたと思います。

『ミッドナイトスワン』-(46)

ー 真飛さんはいかがですか?

真飛:私はバレエの先生役でしたが、あまり強すぎてはいけないと考えました。実花は一果に対しての(凪沙とは)違う形の愛情を捧げて、自分の人生をかけます。一果の才能を見つけて、彼女に没頭していくところが描かれているので、ただのバレエの先生でいるだけではなくて、ちゃんと気持ちを動かしながら演じることが大切。樹咲ちゃんは初めての演技なので緊張はしていましたが、初々しさと必死さが一果と重なっていたので、どうにかこの子をバレエダンサーとして育てたいと本当に思うようになった。役作り云々ではなくて、彼女と居ることでそういう感情が沸いてきました。剛さんが母親としてバレエ教室に来るシーンでも、監督から「ナチュラルに、ナチュラルに」と。バレエの先生らしく姿勢や歩き方は気を付けましたが、優しく話すように心がけていました。これまでハキハキ話す役が多かったので今回は少し難しい部分もありましたが、一果ちゃんや凪沙さんと一緒にいると自然に実花としていることができました。

『ミッドナイトスワン』-(47)

― 真飛さんからご覧になった、草彅さんの凪沙はいかがでしたか?

真飛:もう剛さんが日に日にキレイになっていくんです、本当に!

草彅:ホント?(笑)

真飛:本当です。これを語ったら時間が足りなくなっちゃいますよ(笑)。どんな感じで登場するのか、おおよそ想像はしていたんですが、凪沙として初めて会ったときからまったく違和感がなかったですし、どんどん美しくなって所作も女性より女性でした。とても研究されたのかなと思いましたが、剛さんは憑依型というか役に入られるイメージがあるので、形ではなく凪沙として生きていることで自然とそういう仕草になっていたんだろうなと思います。本当にステキでした。

草彅:ありがとうございます。なんだか照れちゃうな(笑)。真飛さんもステキでしたよ。

真飛:それはいいから(笑)。

草彅:みんなステキでした。みんな輝いていたよね。本当にこの作品はいい映画だと思う。一果と(上野鈴華演じる)りんとの関係性もすごく良かった。キスシーンも自然だったし、やっぱり監督は凄いなと思いました。それが凪沙との関係の相乗効果になっているし。
本当にいい! 僕、だいたい自分が出演している作品はいいと思っちゃうんだけどね(笑)。だけど、自分のひいき目じゃなくても、やっぱりいいよね、この作品。単に悲劇で悲恋ではなく、エンターテイメントとしてもちゃんと成立している。クスっと笑えるところもあるし、ドストレートなハッピーエンドではないけれど、希望が見える。本当に自信をもってお勧めできます。たくさんの方に観てほしいです!

『ミッドナイトスワン』-(3)

― 何気ないシーンでもなぜか涙が出てきてしまいます。

草彅:そう! それが言いたかったんです。

『ミッドナイトスワン』-(18)

― 実花先生から、凪沙さんはどういう人物に見えたのでしょうか? また、凪沙は学校の先生には不愛想な態度ですが、実花先生には誠実に対応しています。凪沙から実花先生はどのように見えたのだと思いますか。

真飛:実花から見た凪沙さんは、嘘をつくことをやめて自分の心に正直に生きることを決めた人。そして一果と会ったことでさらにそれを深く感じて一生懸命生きたいと思っている。今までは、自分が女性になるために仕事をして資金を集めることに必死だったけれど、そのお金を一果のバレエ費用に使うように変わっていくのです。自分に正直になろうと女性の姿で生きることを決めたのですが、一果という少女との出会いによって、自己愛から相手に対しての愛が芽生えてきた。そのことに戸惑いながらも正直に生きていく凪沙さんが実花には見えたんだと思います。この人には嘘はつきたくない、つけないと思った。素直に人を思いやることが加わったことで、凪沙はさらに輝きを増したのではないかと。人生に生きる希望を持つことができたのではないかと実花は感じたと思います。

草彅:実花さんは優しい先生だからね。凪沙は実花さんのことが好きだと思います。一果にはバレエをずっと続けていってほしいので、そこに実花の指導は絶対に必要なもの。優しいけれど、厳しいところもある先生。凪沙はあまり社交的ではないけれど、どこか実花先生には頼っているんです。実花先生がいることで安心もしていたんじゃないかな。そして、真飛さんがステキな笑顔を僕にくれるんです(笑)。殺伐としたシーンが多いなか、バレエ教室に行く日常は、唯一心が温かくなるシーンですね。

『ミッドナイトスワン』-(22)

― 凪沙が唯一笑顔になるシーンがありますね。

草彅:そうそう。「お母さん」って言われて嬉しかったんですね。僕もあのシーン好きなんですよ。あそこまで凪沙が笑うことないんだもの。いいシーンですよね。

『ミッドナイトスワン』-(44)

― ところで、劇中に出てくる「ハニージンジャーソテー」がとても美味しそうです。お二人もお料理がお得意だと思いますが、今ご自分で作って食べたいと思うお料理があったら教えてください。

草彅:凄く美味いものがあるんですよ! 知りたいですか?

真飛:わぁ、私も知りたい!

草彅:教えたくないんだよなあ(笑)。マジで知りたい? YouTubeであげようと思っていたんだけど・・・。簡単で超美味いんですよ。玉ねぎをスライスして、サバ缶の水煮をまぜてマヨネーズ入れて、ヤマサの昆布つゆをちょっと入れるんです。すっごく美味いから! 俺、毎日作ってるよ。玉ねぎを少し水にさらしてもいいけど、僕は辛いのも好きだからそのままで。超簡単で超美味いからやってみてください。ちょっとツナ和えっぽいと思うかもしれないけど、ツナとは味が違うんですよ。やっぱりサバ缶でやってほしいわけ。水煮の汁も全部入れてね。つまみにもなるし、おかずにもなるんですよ。サバ缶って万能だよね。もう今も食べたい!

真飛:もうちょっとだけ待ってくださいね・・・(笑)。じゃ、私はそれを食べたい。作りたい!・・・ということにしましょうか。

草彅:ダメだよ。真飛さんも何か教えてよ(笑)。

『ミッドナイトスワン』-(54)

真飛:はい(笑)。最近、蒸篭(せいろ)を買ったんです。上には季節の旬のお野菜をカラフルに10~15種類くらい詰めて、下にはキャベツやもやし、豚肉などを入れて2段にして蒸すんです。今、蒸し器で作る温野菜を極めているのでお野菜のことを色々知りたくて。その時々の旬のお野菜を知るためにスーパーに行くのですが、紫のキャベツや、見たことのないカラフルな野菜が次々に出てくるから楽しいんです。

草彅:美味そう! 蒸ししゃぶしゃぶ大好き! タレは何をつけるんですか?

真飛:ポン酢です。ほかには、オリーブオイルにちょっとトリフ塩も美味しいですね。

草彅:わぁ、おっしゃれー! さすが!

真飛:2種類のタレをお皿に並べてね。まずはシンプルに食べて、徐々にアレンジしていきたいなと思っています。

草彅:蒸篭を買ったところがいいよね。2段なんだ。
真飛:そう。2段になっているから、上にお野菜、下にお肉を。
草彅:レタスもいいよね。

(・・・・と、食べることが大好きなお二人の話が止まりませんでした(笑))

『ミッドナイトスワン』-(26)

【草彅剛(くさなぎ・つよし)プロフィール】
1974年7月9日生まれ。1991年CDデビュー。主な出演作は、『黄泉がえり』 (03/塩田明彦監督)、『日本沈没』(06/樋口真嗣監督)、テレビドラマ「僕と彼女と彼女の生きる道」(04/CX)、「任侠ヘルパー」 (09/CX)など、多数作品に出演。2017年9月にはオフィシャルファンサイト「新しい地図」を立上げ、その後自身主演の「光へ、航る」(太田光監督)を収めたオムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』(18)は2週間限定公開の中、28万人以上を動員し、大ヒット。また、音楽劇「道」(18/演出: デヴィッドルヴォー)、「家族のはなし」(作/演出: 淀川フーヨーハイ、 あべの金欠)、「アルトゥロウィの興隆」(作:ベルトルト·ブレヒト/演出:白井晃)など、舞台作品にも出演。 その他出演作に、西加奈子原作の『まく子』(19/鶴岡慧子監督)、『台風家族』(19/市井昌秀監督)がある。

【真飛聖(まとぶ・せい)プロフィール】
1976年10月13日生まれ、 神奈川県出身。1995年宝塚歌劇団に入団し、2007年花組トップスターに就任。2011年に退団後は舞台のみならず、映画やドラマに活躍の場を広げる。主な出演作に、 舞台「恋と音楽」(12年)、ミュージカル「マイフェア·レディ」(16年)、舞台「プレイヤー」(17年)KERA CROSS「グッドバイ」他。映画『拓欄(ざくろ)坂の仇討』(14年)、『娼年』(18年)、『愛なき森で叫べ』、 ドラマ「相棒」(12~15年)、「あなたの番です」(19年)など。

インタビュー撮影:ナカムラヨシノーブ

Midnight_Swan_ポスターデータB5

映画『ミッドナイトスワン』
<ストーリー>
故郷を離れ、新宿のショーパブのステージに立ち、ひたむきに生きるトランスジェンダー凪沙。ある日、養育費を目当てに、育児放棄にあっていた親戚の少女・一果を預かることに。常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。理解しあえるはずもない二人が出会った時、かつてなかった感情が芽生え始める。

出演:草彅剛
服部樹咲(新人) 田中俊介 吉村界人 真田怜臣 上野鈴華
佐藤江梨子 平山祐介 根岸季衣
水川あさみ・田口トモロヲ・真飛 聖
監督/脚本:内田英治(「全裸監督」「下衆の愛」)
配給:キノフィルムズ
©2020 Midnight Swan Film Partners
公式サイト:midnightswan-movie.com

9月25日(金)より TOHOシネマズ 日比谷他全国公開中!

真飛聖さん チェキプレゼント!
応募はこちらから

IMG_3584