照屋年之監督長編2作目にして、世界各国で高く評価されている注目作!
死者の骨を洗う風習・儀式を丹念に描いた感動作
映画『洗骨』
「ガレッジセール」のゴリこと照屋年之が監督を務め、第40回モスクワ国際映画祭、上海映画祭、ハワイ映画祭など世界各国の映画祭でも話題を呼んでいる映画『洗骨』の公開直前試写会が1月17日(木)に東京・有楽町の丸の内TOEIで開催。上映前に照屋監督をはじめ、奥田瑛二、筒井道隆、水崎綾女、坂本あきら、鈴木Q太郎、筒井真理子、古謝美佐子が登壇した。
“洗骨”とは、沖縄の離島などごく一部にいまなお残っている、死者を風葬にし、さらに数年後にもう一度取り出して骨を洗うという風習。照屋監督は「3年前まで沖縄出身の僕さえ知らなかったです」と明かし「え? いまのこの時代にミイラ洗ってんの? 怖いな…って最初は思ったけど、話を聞いて、実際の映像を見ると、全く怖くなくて。命を繋いでくれたご先祖にいまの自分があるのを感謝するというとても美しい行為だったので、映画にしたいと思った」と明かす。
奥田さんは、これから映画を見る観客を前に「これだけは断言します。損はさせません。みなさんを裏切ってみせます! 以上です」と自信満々。沖縄の男・信綱を演じるにあたって「東京で台本を何度も手繰ってイメージして臨んだけど、現地に行くと、自然の美しさ、空気感、想像を超える幻のようなものがあって『沖縄には勝てないな』と思いました。とにかく無になって、何も考えずそこに肉体を置こうと思いました。朝起きても信綱、撮影中も信綱、撮影後に泡盛を飲んでも信綱、2杯飲んでも信綱…3杯飲むと奥田瑛二が出てきて、4杯飲むとスケベな奥田になって、12時を回ると解散(笑)。撮影中の記憶がない」と振り返った。
これに対し、照屋監督は「僕らは酔っぱらった奥田さんの一言一句をよく覚えてます」と語り、水崎さんも「5時から12時までずっと覚えてます(笑)」とツッコミを入れ、会場は笑いに包まれた。
筒井は信綱の長男・剛を演じたが、信綱との間に確執がある関係のため、現場ではほとんど奥田さんと言葉を交わさなかったとのこと。筒井は「多少ですよ」と笑うが、照屋監督は「撮影中も食事中も、一切、話さないので、確執のある人たちをキャスティングしたのかと思った」と苦笑を浮かべていた。
水崎さんは、信綱の長女で臨月の妊婦である優子を演じたが「最初は(お腹を)タオルで膨らませる予定でしたが『命を繋ぐ』『生と死』がテーマで、妊娠姿が重要だったので、『自腹でもいいので(お腹に装着する)シリコンの重いやつを用意してほしい』とお願いして、寝るときもごはんの時も、お風呂に入る時以外はずっとつけっぱなしで生活していました」と明かす。
そのため、撮影期間中、沖縄の人々に本当に妊娠していると誤解されることもあったそう。照屋監督は、奥田さんとお腹の大きな水崎さんが撮影後に食堂で食事をしていた時のエピソードを明かし「周りのお客さんが(2人を)チラチラ見てました(笑)。奥田瑛二が若い女優をはらませて、落ち着くまで沖縄潜伏してるんじゃないかと(笑)。誰も声を掛けられず『隣にいるのって奥さん? いや、水崎綾女…?』って(笑)」と思わぬスキャンダル未遂事件(?)を暴露し、会場は爆笑に包まれた。
坂本さんは「沖縄は暑かったです。この映画を見て熱くなってください!」と呼びかけたが、照屋監督からは「地元の漁師に見えました」と絶賛の声が! 一方、水崎さん演じる優子の恋人役で俳優デビューを果たした鈴木さんは、照屋監督から「バラエティのクセでカメラ目線でしゃべってた」とダメ出しを食らい「全力でやりましたんで、みなさん、温かい目で見てください!」と呼びかけていたが、“恋人”水崎さんから「全力のイエスキリストさまが見られます」といじられ「カレシです!」と強調していた。
沖縄出身の古謝さんは「私に父親もオバアも洗骨しました。オバアは私が高校生の時ではっきり覚えています。映画を見て、オヤジやオバアを思い出して涙が出ました」としみじみと語った。
そして、信綱の妻役で数シーンの出演を果たしている筒井真理子は、司会者の「出番は少なくともある意味で主役のようでした」との言葉に「そう見えたなら、(家族を演じた)みなさんの母や妻を思う気持ちが素晴らしかったから」とニッコリ。照屋監督によると、遺影の表情や病死して埋葬される際のメイクについて、筒井さんからは何度も提案、リテイクの要求があったそう。照屋監督は「(死体役で)桶に入っても、何度も目を開けて『監督、頬がこけるメイクをもうちょっといいですか?』と言われて、『早く死ねよ!』と思った(笑)」と冗談交じりに筒井さんの執念の演技を称賛した。
一方で、彼女の死を受け止められない情けない男を熱演した奥田さんについても「汚い白ブリーフの奥田瑛二を見るのはみなさん、初めてだと思います」と改めて、その役者魂を惜しみなく讃えていた。
また、上映後にもキャストたちも登壇し、主題歌を披露するサプライズが!!
上映終了後、エンドロールが終了すると同時に、場内から大きな拍手が沸き起こった。
すると、上映前の舞台挨拶から、再度、上映後にも登場した照屋監督とキャスト陣。撮影のエピソードからもチームワークの良さが伺える。
そして、音楽を担当した佐原一哉さんがキーボードを、古謝美佐子さんが三線を手に披露されたのは、主題歌である「童神」。
古謝さんの、強い生命力を感じるような力強く美しい歌声が響く渾身のパフォーマンス。場内のお客様のみならず、舞台上でともに聞いていた奥田瑛二、水崎綾女が思わず涙をぬぐう場面も。
奥田は「まいりましたね。こよなく愛せるキャラクターを照屋監督が与えてくれた。そういったことを思い出して、感無量になってしまいました。」と何度も涙をぬぐう。
水崎は「個人的に、今日は阪神淡路大震災が起こって 24 年。わたしは 5 歳のときに被災しました。命をつなぐというのがテーマのこの作品で、個人的にこみ上げてくるものがあります」と涙ながらに語った。
照屋監督は最後に「みんな 100%の自信なんて持てない人がほとんどだと思う。不安やおびえ、コンプレックスを持った人を描きたいと思ってきました。そんなこといっても明日は来るから、一歩を踏み出してみようと映画にしたいと思いました。人に会いたくなる映画になれば」と語り、大きな拍手とあたたかな空気に包まれて舞台挨拶は終了した。
【Story】
洗骨――。今はほとんど見なくなったその風習だが、沖縄諸島の西に位置する粟国島などには残っているとされる。粟国島では西側に位置する「あの世」に風葬された死者は、肉がなくなり、骨だけになった頃に、縁深き者たちの手により骨をきれいに洗ってもらうことで、晴れて「この世」と別れを告げることになる。
沖縄の離島、粟国島・粟国村に住む新城家。長男の新城剛(筒井道隆)は、母・恵美子(筒井真理子)の“洗骨”のために、4 年ぶりに故郷・粟国島に戻ってきた。
実家には、剛の父・信綱(奥田瑛二)がひとりで住んでいる。生活は荒れており、妻の死をきっかけにやめたはずのお酒も隠れて飲んでいる始末。そこへ、名古屋で美容師として活躍している長女・優子(水崎綾女)も帰って来 るが、優子の様子に家族一同 驚きを隠せない。様々な人生の苦労とそれぞれの思いを抱え、家族が一つになるはずの“洗骨”の日まであと数日、果たして 彼らは家族の絆を取り戻せるのだろうか?
奥田瑛二 筒井道隆 水崎綾女 / 大島蓉子 坂本あきら 山城智二 前原エリ 内間敢大 外間心絢 城間祐司 普久原明 福田加奈子 古謝美佐子
鈴木Q太郎 筒井真理子
監督・脚本:照屋年之
音楽:佐原一哉 主題歌:「童神」(歌:古謝美佐子)
宣伝協力:新垣尊大 須藤淳子 平野誠也 スペシャルサンクス:粟国村 粟国村の皆さん
制作協力:キリシマ1945 制作プロダクション:ファントム・フィルム
制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
製作:『洗骨』製作委員会(吉本興業 ファントム・フィルム 朝日新聞社 沖縄タイムス社)
配給・宣伝:ファントム・フィルム(C)『洗骨』製作委員会
2018/日本/カラー/スコープサイズ/上映時間111分
公式HP:http://senkotsu-movie.com
1月18日(金)より沖縄先行公開 / 2月 9日(土)より全国公開