“ヤクザヴァンパイア”に噛まれた人間は次々とヤクザに変わってしまう奇想天外な極道エンターテイメント、映画『極道大戦争』。これまで多くのヤクザ映画を手がけてきた三池監督と『神様のパズル』以来7年ぶりにタッグを組んだ市原隼人。
極道の世界に入ったものの敏感肌で刺青も入れられない若きヤクザ・影山を演じ、俳優としてまた新たな一面を魅せてくれた。そんな彼に本作への思いや共演者とのエピソード、さらに今後の役者としての話を聞いた。
◆こんなにブッ飛んだ映画は他にはない!
― 本作が映画公開を経て、今度はDVD&ブルーレイとしてまた多くのみなさんにご覧いただくことになりました。今のお気持ちをお聞かせください。
早く衝撃的映像を観てほしいですね。こんな映画があるんだ!というくらい、本当になかなか出会うことができない作品ですから。挑戦状のような、実験的のような、どこかに風穴を開けるような作品だと思います。
― 最近は小説やアニメなど、原作を実写化する作品が多い中、本作は完全オリジナル版ですね。
今は、なかなか無いですよね。これが出来たこと自体、事件ですよ(笑)。
― 初めて脚本を読まれたとき、どのように思われましたか?
まったく想像できなくて・・・「面白そうだな」と思ったし、「遊んでいるな」「突っ張った映画だな」と思いました。
― 映画を観ていると、次にどんな画面が出てくるのか全く想像できないのですが、演じていて難しくはなかったですか?
本当に次に何が出てくるのかわからない(笑)。カエルが出てきて、カッパが出てきて、首が飛んで・・・これはどう捉えればいいのかなと思いました。だから、自分は親父(ヤクザの親分)の背中を追いかけていることは常に忘れずにいました。任侠の世界なんですが、追いかける親父がたまたまヤクザだったということだけ。映画の撮影中は、一つ一つのシーンをまっすぐに、真剣にやっていればいいものができるんじゃないかなと思って臨んでいました。
◆ヤクザもパンパイアも、共演者も刺激的
― メイキングを見ると、けっこう撮影現場は楽しそうですね。久しぶりに三池監督とダッグを組まれましたが、市原さんにとって三池監督とは?
現場は、めちゃくちゃ楽しかったですね。三池さんは熱心で、一つ一つにかぶりついていくタイプ。器が大きくて、作り方であっても考え方であっても、遊び心を忘れずにいろんなモノを着崩せる人。着崩すということは、ちゃんとした着方を知らないと着崩すことはできない。常識を持っていて、それと同じくらい非常識を持っているような方で、きっと何年ずっと一緒にいても「三池崇史はこういう人」ということは、分からないんじゃないかなと思いますね。でも、現場にいると凄く安心感があるんです。今回は、監督からは何かを指示されることはなかったのですが、ついこちらから、「こういうのはどうですか?」「こういう動き、面白くありませんか?」と、見せたくなる監督ですね。
― それに合わせ、個性的なキャストが揃いました。
多いですよね、本当に(笑)。
― 特に、冒頭から共演シーンが多い、ヤクザの親分役のリリー・フランキーさんとの共演はいかがでしたか?
リリーさんは、とっても自然体な方。キャパシティが広くて、どんなことでも受け止められるような人だと思います。話していることは凄くハードなんですけど(笑)。他の人が聞いたら、きっと後ずさりするんじゃないかなという会話も自然にしているし、隠すこともなく本当にオープンなんです。現場で演じていても、人間味があって温かい、一つの言葉に重みがあるんです。凄く特殊でなかなかいないタイプの人ですね。
― 映画の舞台あいさつの時も、リリーさんが「この作品はR15じゃなくて、R28でもいいんじゃないか?」なんておっしゃっていましたが。
現場では、これ、もう公開できないんじゃないか?と思えるシーンがたくさんありました(笑)。
― 市原さんは、ヤクザ役は初めてとか?
はい、初めてです。「初めて?というくらい、しっくりきてる」と、よく言われます(笑)。
― アクションもハードだったのでは?
アクションは、ヤヤン・ルヒアンさんというインドネシアで活躍されているアクション俳優の方とご一緒させていたいたんですが、ハリウッド映画『サ・レイド』にも出演されている方と共演できるということで、凄く嬉しかったです。トレーニングの時から一緒でしたが、アクションの手の動きがとても早いんです。格闘技のプロですから、軸もぶれないし呼吸も相手を殺すようなリズムをとってくるんです。実際にバシッと当ててくるので、刺激の多い毎日でした。
― 市原さんの動きも素早かったですよ。かなりトレーニングされたのですか?
トレーニング・・・そんなにしたかなぁ? もともと体を動かす事が好きです。2歳から器械体操と水泳、空手とボクシングもやっていました。
― やっぱり、基本が出来上がっているんですね。撮影の合間にもダンベルで筋トレを普通にしていましたね。
はい、やっていました。その後ろをリリーさんがフラフラ歩いているし。もう本当に自由(笑)。
― バンパイア役も初めて?
はい、初めてです。バンパイアになったら、俺はどう動けばいいのかなと思いましたよ。
― メイクも凄いですね。
いちばん最後・・・、何処に行っちゃうのかな?(爆笑)
ここは絶対見て欲しいところです。続きがあるんじゃないか?って(笑)
続きがあったら、是非やってみたいですね。
メイクもだんだん白くなっていくんです。バンパイアだからね。ヘアメイクさんに「今日は何%くらいですか?」と聞くと、「今日は30%くらいです」「今、75%くらいです」とか言われて・・・(笑)。
― ご自身もノリノリになっていったのでは?
今回、演技指導とかはなくて、自由に遊べるような感覚だったので楽しかったです。
― これまで数々の映画やTV、舞台に出演されていますが、ちょっと違うタイプの作品でした?
全く違いますね。今まで感じたことのない衝撃的なことばかりでした。映画に携わっている人間として面白かった。こういう映画が大好きです。こういう事を仕掛けてくる人たちが好きですね。
― バンパイアに噛まれて、バンパイアになりましたが、もし他になるとしたら?
「大阪のおばちゃんになりたい」って言ったことがありますが、女性になってみたいですね。女性の気持ちがまったく分からないので。男と女って全然違う生物じゃないですか。女性の輪の中に入ってみたいですね。女性は男性よりもいろんな感情がたくさんありそうで、繊細な世界があるのかなと。
― 分からないほうがいいところもあるかもしれませんよ。
あるかもしれませんね(笑)。
― ところで、任侠でバンパイアという特殊な作品ですが、市原さんが成海さんにお茶を飲ませてあげるシーンは、ホッとする場面ですね。
あの場面は面白いシーンですね。目を隠している人との会話って不思議で。目が見えないからこそ、会話にちょっと間が空いても違和感がないし、目が見えないからこそ、人の外面だけではない、内面的な感情を汲みとろうとする気持ちがすごく大きくなると思う。ずっと見ていたくなるようなシーンでしたね。
― 成海さんとの共演はいかがでしたか?
彼女は、私は女優!といった気張ったところもなく、空気のように自然に現場に溶け込んでいました。その中でもしっかり凛とした力強く突き刺さるものがあって、共演していて気持ちよかったです。
◆モノ作りが好き!役者が好き!
― 本作において、市原さんがこだわったところはありますか?
ちょっとブッ飛んでいてクレージーな作品なので、だからこそもっと真剣にやらなくてはいけないと思っていました。演じている者がふざけていたら、見る人が内容がバラバラになって訳がわからなくなってしまいます。昭和の時代の世界観でみんなが横に繋がっているような中、自分は人間臭い人物でいられたらいいなというのが一番の思いでしたね。
― セットの商店会が雰囲気出ていましたね。
あのセットは日活最後のセットだったんですよ。(その後取り壊しとなりました)
― 特に見てほしい、お気に入りのシーンは?
KAERUくんの見た目と行動のギャップ。あと、終盤のヤヤンさんとの決闘のシーン。あれは台本なしですから。そして、この作品の向かっている方向を見てほしいです。こんな作品が作れちゃうんだぜ、凄いでしょ?と言いたいですね。
― 今年は主演で『最後のサムライ』の舞台にも立たれて大活躍ですが、映画、舞台、ドラマなどそれぞれスタンスが違うと思いますが、好みの違いはありますか?
どれが一番好きということはないです。ドラマはトレンドやニーズを取り入れやすいし、映画は編集の時間も長く取れて、フィルターやフィルムとか機材等にこだわって、アートとして考えたり、舞台はお客樣に向けるエンターテイメントとして、声の出し方、振る舞い、間のとり方など他とは全部違い、本番の緊張が本当にクセになります。
どの作品にも「どうしてこのレンズなのかな?どうしてこの照明なのかな?」と照明の当て方から、アングルの取り方、メイクの仕方など、全部にメッセージが込められていると思うんです。そういった総合芸術の中心にいられる役者が本当に楽しいです。相対性理論ではないですが、短い時間が長く感じられるほどいろんなことを感じられる空気が好きですし、現場が一番好きです。俳優はずっと続けていきたいですね。道端でも、お客さんが一人でもやっていきたいです。
― 役者だけではなく、監督や演出も向いているのでは?
それも好きです。何か自分で映像を撮って家で編集したり。モノを作るのが好きなんです。子供が積み木を重ねる、図工感覚で。
― 監督として長編映画を撮ってみるとか?
はい、いつか撮ってみたいですね。
― 最後にこの作品を見てくださる方にメッセージをお願いします。
どこをとっても唯一無二の世界観になっていると思います。挑戦的で実験的な作品です。もうなかなか見る機会がないかもしれないので、ぜひ見て爆笑していただけたら嬉しいです。
市原隼人 サイン入り『極道大戦争』パンフレット プレゼント!!
【市原隼人 プロフィール】
1987年2月6日、神奈川県出身。
2001年『リリイ・シュシュのすべて』で映画主演デビュー。2003年に『偶然にも最悪な少年』主演(03)で日本アカデミー賞新人賞受賞。その後も、『チェケラッチョ!!』(06)、『神様のパズル』(08)、『ROOKIES-卒業-』(09)、『猿ロックTHE MOVIE』(10)、『ボックス!』(10)、『DOG×POLICE 純白の絆』(11)、『「黄金のバンタム」を破った男~ファイティング原田物語~』(14/CX)など多数くの主演映画作品、テレビドラマに出演。2014年に、初めて監督、主演したショートフィルム『Butterfly』が「第16回ショートショートフィルムフェスティバル& アジア」で話題賞を受賞。2016年は映画『ホテルコパン』、『星ヶ丘ワンダーランド』が公開予定。本作『極道大戦争』での三池崇史監督作品への参加は『神様のパズル』(08)以来、2度目の主演となる。
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Photo:植村忠透
Hair and make up:高橋幸一(Nestation)
stylist:小野和美(Post Foundation)
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『極道大戦争』ブルーレイ&DVD 11月3日(火)発売、レンタル開始
噛まれたら、みんなヤクザ。
『極道大戦争』
三池崇史監督の原点回帰、唯一無二のオリジナル大作。
「噛まれたら、みんなヤクザ」という日本の未来をかけた超絶YAKUZA WARZ開戦!
主役は、三池とは『神様のパズル』以来のコンビを組む市原隼人が、トレーニングを重ねた肉体を披露。ヒロインには『妖怪大戦争』以来10年ぶりに三池映画出演となる成海璃子。『そして父になる』や『凶悪』のリリー・フランキーは三池映画初出演となる。ほか、脚本では男だった若頭に高島礼子や、青柳翔(劇団EXILE)、渋川清彦が出演。さらに『ザ・レイド GOKUDO』の全身凶器ぶりで強烈な印象を残したヤヤン・ルヒアンが壮絶な死闘を展開。豪華キャストで贈る、前人未到のエンターテインメント大作、誕生!
【極道大戦争 プレミアム・エディション 】ブルーレイ・セル
発売日:2015年11月3日
品番:BIXJ-0211
価格:5,200円 (税抜)
仕様:カラー / 115分 / 1層 / 2枚組
発売元:日活
販売元:ハピネット
(C)2015 「極道大戦争」製作委員会
【極道大戦争 プレミアム・エディション 】DVD・セル
発売日:2015年11月3日
品番:BIBJ-2870
価格:4,200円 (税抜)
仕様:カラー / 115分 / 片面2層 / 2枚組
発売元:日活
販売元:ハピネット
(C)2015 「極道大戦争」製作委員会
市原隼人主演 『極道大戦争』 ブルーレイ&DVDリリース!詳細はこちら