男優劇団スタジオライフが三原順原作の『はみだしっ子』を初舞台化する。
『はみだしっ子』は1975年から1981年まで「花とゆめ」taiに連載され、熱狂的なブームを巻き起こした傑作漫画。親に見捨て られ、この世の「はみだしっ子」となったグレアム、アンジー、マックス、サーニンという4人の少年たちがある時はあたた かく、ある時はしたたかに生きていく様を描いた作品だ。スタジオライフでは2001年10月に『Sons』を取り上げて以来、16年ぶりの三原作品上演となる。
『はみだしっ子』上演に先駆けて、製作発表と、笹生那実とスタジオライフの脚本・演出の倉田淳との対談が行われた。
倉田淳 笹生那実
まずは対談からご紹介しよう。
笹生は三原と同じ年、同じ雑誌でデビューした元漫画家。
三原順の没後、三原ファンの立場から三原作品の単行本未収録作品の刊行を求める活動を続けている。
三原のデビュー直後から交流があったという笹生。
「三原さんはグレアムのように大人っぽく礼儀正しい方。でも外見は小柄 でサーニンとマックスをまぜたような可愛らしさがある。付き合いが深くなるとアンジーのように人が悪いところが出てくる んです(笑)」
と印象を述べた。一方、倉田は
「三原先生がいつも持っていらしたスリーアイテム=トランク、タバコ、帽子から、公演のトリプルキャストのチーム名にした」
と三原に寄せる深いリスペクトを感じるエピソードを明かした。
『はみだしっ子』の作品について笹生は
「親からの虐待など辛いことが描かれているが、そういう環境にない子供でも共感できる深さがある。少年4人のキャラ分けが魅力的だと思います」
と語る。三原作品に出てくる深い言葉、えぐられるような言葉に強い感銘を受けたという倉田が
「三原先生は人生を見極め、突き詰める目をどこで培われたんでしょう」
と尋ねると、笹生は
「それは三原さんが生まれ持ったもの。他の人には真似できないもので、魂の底から出て来ている感じがする」
と答えた。
三原は1995年に病気で他界したが
「絶対に埋もれさせてはならない、未来永劫語り継がれなければいけない」
と三原作品の魅力を世に伝える活動を続ける笹生。
「アダルトチルドレンという言葉がない時代から、子供にも大人にも人間社会の闇の部分があるということを容赦なく描き続けた。三原作品を読むことで救われる人は今もたくさんいると思う」
と力説すると、倉田も
「抱えている孤独や痛みにシンパシーを感じずにはいられないんです」
と同意した。
倉田は『はみだしっ子』舞台化に関して
「魂の言葉が散りばめられている作品。長いストーリーですが、ダイジェストにはしたくない。シンプルな舞台作りで、観客の方たちと一緒にイメージの中でワープしながら、子供たちの奥底に入っていけるような舞台を作っていきたい」
と意気込みを語る。笹生は
「ファンの方の中には“5歳児をどうやって表現するんだ”と不安に思う方もいらっしゃるかもしれない。でも、スタジオライフなら作品の魂を受け継いで表現してくださると思う。大人の男性が女の子や少年も演じるというスタジオライフだからこそ、見る側も頭の中で作り上げていくことができるんです」
とエールを送った。
対談に続いて、『はみだしっ子』製作発表が行われた。
劇団代表の藤原啓児は「三原順先生を愛してやまない方たちのお力をいただきご縁が広がっていることに感激している。皆さんからいただいた素晴らしいご縁を深い絆にできるよう、出演者一同頑張りたい」、倉田は「生き続けている作品。今も熱い三原ワールドにいらっしゃる方たちを裏切ることなく、奥が深い世界に大事に取り組ませていかなければいけない」と決意を新たにした。
続いてTRK(トランク)チーム、TBC(タバコ)チーム、BUS(帽子)チームのトリプルキャストで演じるキャストが作品に寄せる熱い思いを述べた。グレアム役の仲原裕之(TBCチーム)は「4人の血よりも濃い絆は、劇団だからこそ見せられるんじゃないかと思う。原作を擦り切れるまで読んで、実感に落とし込んで演じていきたい」と役作りの一端をのぞかせ、久保優二(BUSチーム)は「原作を読んで感じたことを一番大事にもって稽古に取り組んでいきたい」と意欲を見せた。
アンジー役の松本慎也(TBCチーム)は「原作を読んで感じたのは、漫画という表現方法を超えた、哲学的で奥深く悲痛な生のドラマが描かれているということ。アンジーの心の叫びを生身の人間としてその瞬間に心を動かしながら表現して、三原先生が原作で描きたかった思いを皆さんと共有したい」と語り、宇佐見輝(BUSチーム)は「この作品の輝きをアンジーという役を通してお客様にお届けできたらと思います」と述べた。
(なお、この他、TRKチームにはグレアム役の岩﨑大、アンジー役の山本芳樹が出演する)
最後に、松本慎也が初めて『はみだしっ子』でスタジオライフを見る観客に向けて「一番お伝えしたいのが、僕らが三原先生のファンであるということ。ファン歴は浅いですが、ファンの皆さんと同じ思いで作品を愛し、三原先生の思いを共有して同じ空間で作品を作っていけたら。どうなるんだろうという心配はあると思うんですがぜひ怖がらずに(笑)、信じて見に来ていただきたいと思います」とメッセージを送った。
劇団スタジオライフ公演、三原順原作『はみだしっ子』は2017年10月20日~11月5日、東京芸術劇場シアターウエストにて上演される。(文/大原 薫)
<公演データ>
スタジオライフ『はみだしっ子』!
原作:三原順 脚本・演出:倉田淳
[公演期間] 2017年10月20日(金)~11月5日(日)
[劇場] 東京芸術劇場シアターウエスト
[キャスト ] 山本芳樹 曽世海司 岩﨑大 船戸慎士 松本慎也 仲原裕之
緒方和也 宇佐見輝 澤井俊輝 若林健吾 久保優二 田中俊裕 千葉健玖
牛島祥太 吉成奨人 伊藤清之( Fresh) 鈴木宏明( Fresh) 前木健太郎
(Fresh) 藤原啓児