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舞台『僕のド・るーク』インタビュー 上口耕平&多和田任益 テーマは友情…裏テーマは嫉妬?! 

5人の男性キャストのみによる会話劇『僕のド・るーク』が、3月7日(木)~10日(日)オルタナティブシアターにて上演される。
ロシア語で“友達”を意味する“ドルーク”をテーマに、「サリエリとモーツァルト」、夏目漱石の「こころ」と絵本を元にした「森の主と少年」という3つの物語を鈴木勝秀の上演台本・演出で綴る。
今回は、5人のキャストから上口耕平と多和田任益が取材に応じてくれた。
まだ謎に満ちた本作の魅力と、取り組むふたりの思いをお伝えしたい。

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 多和田任益    上口耕平

―今日、本読みが行われたそうですね。おふたりは今回が初共演ですか?
上口多和田:初めましてですね。
上口:僕は以前から舞台上の姿は何度も拝見していますよ。
多和田:僕ももちろん拝見しています。ミュージカル『Color of Life』の二人芝居、美しく素晴らしかったです。
上口:ありがとうございます。今日は他にも取材をがあったので、たくさん話をしましたね。

―では、ここでは対談のようにおふたりの会話をたくさんお聞きしたいのですが…
上口:何の話をする?…好きな食べ物は何?(笑)
多和田:えっ?! オムライスが好きです。焼き肉もカシューナッツとかフィシュアーモンドも好きです。
上口:かわいいなぁ。まだ育ちざかりだね?
多和田:牛乳も好きで、学校ではじゃんけんして2杯以上飲んでいました。
上口:スクスク育ったんだね (笑)。僕はシーチキンが好きです。
多和田:どうやって食べるのがお好きですか?
上口:なんでも好き。一番おいしいのはシンプルに、マヨネーズにちょっと醤油をかけて七味をのせるの。
多和田:おしゃれ~!
上口:最近ではパーコー麺がとても好きですね。台湾料理かな?うっすらカレー風味の衣で揚げた豚肉がのっているパーコー担担麺。
多和田:食べてみたい!
上口:多和田くん演じるモーツァルトとの関係を深めるためにも、僕のお薦めの店に、今度是非行きましょう。さっき聞いたオムライスでも焼き肉でもなくて、多和田くんの気持ちを何も汲んでいませんが…。(笑)
多和田:でも、それは大事です。この味が好きなんだと理解するのは、大事なことです。
上口:そう!自分も食べてみて初めて知るっていうことがあるじゃないですか。パーコー麺の次には、オムライスや焼き肉を食べにいきましょう。(笑)
多和田:僕のお気に入りの店にお連れしますよ!(笑)

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―そうして互いを知っていくことは、演技にもかかわってくるものですか?
上口:関係ないという俳優もいるし、僕はどっちとも言い難いと思います。ただ今回は、僕の演じるサリエリは多和田くん演じるモーツァルトの才能に惚れます。そういう相手については「どういうものを食べているの?」「どんなものを聴いているの?」と、相手の趣味趣向にも絶対に興味があると思うので、僕は知りたいですね。カシューナッツ好きを知っていることが芝居のどこでどう役に立つのか、まったく分からないですが(笑)、彼がカシューナッツをポリッと食べている姿を見て、「彼の至福の時なんだな」と僕だけは知っているという感覚は大切な気がします。
多和田:それは嬉しいですよ!いっそう信頼が深くなります。
上口:役としてもサリエリは(現在のように高く評価されていなかった)モーツァルトの音楽を「僕は分かっている」と胸を張って言える人間ですから。互いにわかっているから、信頼し合っているから、甘え合えるし嫉妬し合えるんじゃないかと。だから今回は、小さなことでも互いを知っていけると面白いのではないかと思います。
多和田:すごい、きれいにまとめましたね!さすがです!
上口:はい。ピーンときました。(笑)

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―では、そのサリエリ役とモーツァルト役についてですが…
多和田:モーツァルトは自由奔放に…かな、サリエリに愚痴を言います。台本を頂いた時に、配役を頭に入れて読み始めたということもありますが、サリエリはモーツァルトより年上で人生経験も豊富な方が良いと強く感じました。今日は本読みの前に上口さんから「おはようございます」「台詞多いね」と言葉をかけて頂いただけで、2時間ほどの本読みの間、とても安心感があって不思議だなぁと思いました。それはこの作品が会話劇だからなのか、このふたりがこの関係性でキャスティングされたからなのかな…。
上口:僕が舞台に出演し始めた20代前半頃は、周りは素敵な先輩方ばかりだったのに、僕は今、33歳。いつの間にか、先輩と呼ばれることが多くなった今日この頃です。(笑)でも、そこに喜びみたいなものをふつふつと感じることが多くなりまして…。
それは僕が良い先輩方に恵まれて、たくさん甘えてきて、いろんなことを教えて頂いてきたという素敵な巡り合いを経験できたおかげなのかなと思っています。良い先輩に出会っていれば出会っているほど、自分もそうありたいと思うので。
今日、一緒に本読みをしてみて、モーツァルトという大変な役を演じる多和田くんの純粋な声や優しい表情を知って、寄り添いたくなりました。多和田くんと出会えて、今しかないめぐり合わせなのかなと、とても嬉しく思いますし、今までお見せしたことのない姿をお届けできるんじゃないかという楽しみが、とっても大きくなっています。

―映画『アマデウス』で描かれたようなサリエリとモーツァルトとは違う物語がありそうですね。

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ーもう一つの『こころ』はいかがですか?
上口:今度は『サリエリとモーツァルト』とは逆に、僕は先生の友人のKという役で、多和田くんは先生とKの関係を観客に届けてくれる私という役を演じます。今日の本読みでは、台詞は高尚で難しそうなのですが、多和田くんが演じると等身大で、すんなり聞けました。それが多和田君の魅力だと思います。有名な作品ですが、受け入れ易い新しい形でお届けできるなと思いました。
多和田:昨日まではまったく思っていなかったのですが、実際に本読みをして感じることがたくさんありました。僕の役は、僕が的外れなことをしてしまったら、お客様を混乱させてしまうポジションだと思います。台詞が多く、「妻」を「さい」を読むような昔の言い方もあって難しいのですが、僕のような若手がやることで、作品の核の部分をちゃんとお伝えしたいなと、今日の本読みをやってみて思いました。まだまだスタートラインに立ったばかりですが、文字と向き合っていきたいです。
上口:本読みで見えてくるものが多いのは、会話劇ならではですね。台本ではすごい数の文字が並んでいますが、僕たちの心の動きとしてお届けできれば、観客のみなさんに「あっという間だった」と感じて頂けるのではないかと思います。響き方もいろいろな可能性があるなと感じています。
多和田:そうですね。そこは楽しみですし、大きなチャレンジだと思います。

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―夏目漱石の『こころ』は難しいのではないか…と思わなくていい?
多和田:僕は有名な作品だとは知っていましたが、読んだことはありませんでした。たぶん劇場においで下さるお客様の中にも知らない方がいらっしゃると思うので、その方々にどう伝えるかも一つの勝負ポイントだと思います。
上口:題材は知られているかもしれませんが、読んでみると身近な人への思いはどの世代もどの時代もどの国も同じだと思ったので、時代は過去に設定されていますが、物語や思いはニュートラルに伝えられるのではないかと思います。
多和田:そして今回は『友達』がテーマですよね。友達には家族とはまた違った愛…尊敬や信頼があると思いますが、今回の作品には嫉妬心がしっかりと描かれていて、その嫉妬心を「わかる!」と思いました。僕も先輩や仲間・信頼している人に対して「すごい!」と思う時に、同時にちょっと嫉妬心が芽生えてしまうことがあります。彼の良さを知っているからこそ「自分はどうしたらそうなれるのか」と考えてしまうんです。
上口:嫉妬心はとても大事な感情ですよね。嫉妬があるから、尊敬するし向上しようと思う。でも、嫉妬心はちょっとしたことでとんでもない方向に向かってしまうこともあります。きっとこの世の中の全員が、そんな可能性を秘めたままギリギリのところで生きているのではないかなと思います。
多和田:この作品では、そのあたりをストレートに攻めています。人とのつながりという部分でも、いろんな角度からえぐったところまで見せているので、そこをしっかりお伝えしたい。そこに『僕のド・るーく』をやった達成感みたいなものもありそうです。
上口:『サリエリとモーツァルト』『こころ』という2つの物語を、嫉妬心がない『森の主と少年』の物語が一本の串で刺すように貫いて対比させているのが今回の公演です。
『森の主と少年』が2つの物語の合間にはさまれることで、いっそう嫉妬の愚かさや、「でも、わかる!」っていう気持ちが浮き彫りになって、心をグラングラン揺さぶってくる。この作品はすごい作りだと僕は感じています。

―今日の本読みで、作品に惚れ直しましたね。
多和田:ただ観客のみなさんは深く考えず、僕等がやっている目の前で起きていることを見て、それぞれが感じてもらって、友達に思いをはせてもらえるようにできたらいいなと思います。
上口:こうして、自分たちのハードルをまた上げてしまいました。(笑)
多和田:やるしかないと…
上口:俳優って少しおバカな生き物ですね。自分で自分の首を絞めて、一人になった時に
多和田:大変だと、プレッシャーに苛まれて…。
上口:がんばりましょう。
多和田:はい!よろしくお願いします!

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【公演概要】
公演名: 「僕のド・るーク」
上演台本・演出:鈴木勝秀
出演:上口耕平、多和田任益、辻本祐樹、
小早川俊輔/井澤巧麻(Wキャスト)
小林且弥/鎌苅健太(Wキャスト)
公演日程:2019年3月7日(木)~10日(日)オルタナティブシアター
3月7日(木)19:00 (小林且弥、小早川俊輔)
3月8日(金)14:00 (小林且弥、小早川俊輔)
3月8日(金)19:00 (小林且弥、小早川俊輔)
3月9日(土)13:00 (鎌苅健太、井澤巧麻)
3月9日(土)18:00 (鎌苅健太、井澤巧麻)
3月10日(日)12:00 (小林且弥、井澤巧麻)
3月10日(日)16:00 (鎌苅健太、井澤巧麻)
公式ホームページ http://le-himawari.co.jp/