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鈴木おさむ劇場『美幸―アンコンディショナルラブー』 鈴木浩介インタビュー

放送作家として、ドラマや映画の脚本家、舞台の作・演出としても活躍する鈴木おさむが、妻の大島美幸の話をきっかけに書いた「無償の愛」の物語『美幸』。
深い悲しみと衝撃を秘めたこの作品が、「鈴木おさむ劇場『美幸-アンコンディショナルラブ-』」というふたり芝居となってよみがえる。
この濃密な舞台に挑むのは、鈴木浩介と大島優子だ。

★★_ABE7305オフィシャル写真

物語は、些細なことから理不尽ないじめを受けるようになり、悲惨な学生時代を送ってきた美幸が主人公。大人になって出会った雄星に、自分の過去と同じ境遇を感じ、彼に無償の愛をささげることを違う。その愛は次第にエスカレート。彼を悲しませるすべての人々に、秘密裏に復讐を企てていく…。

鈴木浩介は、鈴木おさむからのラブコールを受けて、雄星をはじめ、男性の登場人物五役を一人で演じる

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―ふたり芝居で、1人で5役ということですが、ふたり芝居は初めてですか?
初めてではないんですよ。以前、『LOVE 30 〜女と男と物語〜』というふたり芝居が3組のオムニバスの作品をやったことがありますが、それよりも今回は分量が多いので、がっつりとしたふたり芝居というのは初めてです。

―でもふたり芝居の経験がおありになるというのは、全然違いますね?
そうですね。舞台上にふたりしかいないという経験は、一度していますから。

―やはり重圧でしょうか?
緊張すると思いますね。ただでさえ舞台に出るのは、すごく緊張しますので、ふたりだけという状況だけでも相当緊張すると思います。

―しかも、今回は1人で5役とのこと。如何ですか?
これまでに1人で十何役ということもあったんですよ。

―えっ、そうですか?!
割と何役やるかということについては、深くは考えないですね。台本に書かれていることを丁寧に積み重ねていけば、自然とその役になっていくのではないかと思います。「自分が5役もやるんだ」ということを考えすぎてしまうと難しいことは確かなので、それよりも1つの作品をやるときに、たまたま5役あるというくらいの感覚にしています。

―5役を想像すると、愛される役、復讐される役とふり幅が大きそうで、素人考えでは「切り替えるのは大変そう」と思っていたので、今、お話を伺って「そうか、役ってそんな表面的なことじゃないんだ」と知りました。
でも楽しいと思いますね。できる自信はないけれど、楽しんでやりたいなと思っています。こういう役を演じさせて頂ける機会というのは、貴重な経験…。有難いです。制作発表でもお話ししましたが、代わりの俳優はいくらでもいるわけですから、やりたい方もたくさんいる。その中で自分をキャスティングして頂いたことは本当に光栄に思いますし、その気持ちにちゃんと応えるのが自分の責任だと思いますので、それを楽しんで取り組みたいなと思っています。

―大島さんが「ここは2人ということで、ライバル同士とも思いつつ、仲間同士とも思いつつ、食らいつくぐらいついていきたい」とおっしゃっていましたね。
ストーリーテラーである弁護士の役が、美幸という人物の抱えている悲しさやせつなさをなんとかして救いたいという気持ちを持っているのかな…と台本を読んで思いましたので、そういう気持ちをもっていれば、良い相乗効果で積み重なっていくんじゃないかと思います。

―表面的な愛される役、復讐される役に目を奪われていましたが、美幸に寄り添う役も演じられるのですね。
そうですね、そっちが一番のベースで、そこを考えながらやりたいと思います。先ほど鈴木おさむさんと大島さんと三人で話しまして、「一緒に作っていく」ということだと感じました。そして、やはりそこに大島さんがいるのですから、なんというか、神輿に担いで…という言い方は変なのかもしれませんが、作っていきたいですね。

―さらに大島さんの相手役ですから世間の男性には恨まれるかもしれません?!
確かに!そうですよね…、そこは考えてなかったです。

―制作発表では大島さんからの「恋愛については、浩介さんに教えてもらおうと思います」という言葉に「じゃぁ教えます!」と自信あふれる発言もされていたので、その部分だけ切り取ると大変なことになりそうですよ。
いやぁ、でもあそこではああ言わざるを得ないじゃないですか!(笑) 教えられるわけがないですから!大島さんのファンのみなさんに失礼のないように、演じさせて頂きたいです。やはり楽しんで頂ける作品にしたいので…。脚本を読むと、面白い箇所もたくさんあるんですよ。つらいけど可笑しみがある。「よくそんな復讐を思いつきましたね」という部分など、すごく面白いですし、それを大島さんがどういう風に演じていかれるのかというのも、すごく楽しみです。

―ドロドロなだけではないのですね?
はい、鈴木おさむさんが書かれていますから、台本中に面白い箇所がたくさんあります。作品としてのベースは辛いのですが、そこに到る過程には可笑しみがあったり、喜劇的な要素もあると思います。
三人で話をしている時に、大島さんは「美幸」を読んで「気持ちよかった」とおっしゃっていました。僕は弁護士目線で見ているから「彼女は本当に救われたのだろうか」ということころで、やはり辛い。鈴木おさむさんも「本を読んだ人も、男女で感想が違う」とおっしゃっていました。なので、お客様が観て下さって、どのように受け止めるのだろうと、とても気になります。女性目線では「かっこいい」と思われるのかなぁ…。そういう風に生きること、人をそこまで愛することができるのは、幸せなのかもしれないと言われれば、そうかもしれない。でも僕はやはり切ないと思う。
そもそも彼女がそうなってしまう原因は、彼女は何も悪いことはしていないのに始まったイジメです。そこから彼女の人生が転がっていく…。そんなことはあっちゃいけない。どれだけ彼女が苦しんだことか、傷ついたことか…という気持ちが残ってしまうんです。そういう意味の苦さです。

―それはいつ、誰に起こっても不思議じゃないかもしれないですね。
そうだと思います。どの年齢で起こっても不思議じゃない。小学生の時起こっても、会社に入ってからでも、老後に起こっても…もしかすると老人ホームで起こっていることかもしれない…。そういう人間が持っている残酷さ、怖さ。ある日突然、弱い人に向けて牙をむいてしまう残酷さが人にはあって、牙をむかれてしまう危うさを誰もが持っていると思います。

―それはお客様も観に行くと、鈴木浩介さんの演じる5人や美幸になったり…
感情移入できると思いますね。

―作品をグッと身近に感じました。さて、本作は「無償の愛」がテーマですが、鈴木浩介さんは「無償の愛」を何かに捧げておられますか?まずはお芝居でしょうか?
そうですね。お芝居、大好きなんですよ。

―「芝居が好き」「だから芝居がやめられない」と思われる瞬間は?
それが、むしろこんなに長く続けることができたのは、お芝居しかないんです。芝居は「自分がやりたい」と思っても続けられる仕事じゃないんです。やらせて頂ける環境がないと。それが20年以上続けてこられた…感謝の気持ちが大きいですね。「やめられない」より「続けてこられて感謝」です。「こんな自分でも続けてこられることがあったんだ」と。これ以外、僕にはひとつもないんです。趣味もないですし、スポーツもやりましたけど、長く続けてこられたスポーツもない。僕にはお芝居だけなんです。夢中になれるのは・・・。

―「夢中になっている瞬間」で、すぐ思い浮かぶのは?
何でしょうか…。僕はお稽古が好きなんですよ。日々の規則正しい生活の中で、お稽古をやらせて頂いている時に「舞台はいいなぁ」と。

―役を掘り下げていく毎日ですか?
お稽古で日々、変化していくわけですね。それは本番に入ってからも変化していくものですし、同じことをやっているようで、同じことは二度とないのです。
大島さんとふたりで、鈴木おさむさんの演出を受けながら、初日に向けて、そして幕が開いてからも大阪公演の楽日に向けて、どれだけの変化があるのかということが、すごく楽しみです。変化が楽しいのかもしれないですね。

―では、お客様にも何度も見て頂きたいですね。
それはとってもいいと思いますね。根本的なことは変わりませんが、印象は変わってくるかもしれません。ある意味、全然違うかもしれませんね。

―芝居は生き物…ということでしょうか?
そうですね、それが舞台の良さだと思いますから。

―楽しみなポイントを幾つも頂きました。ありがとうございました!

鈴木浩介(すずき こうすけ)
1974年生まれ。福岡県出身。
劇団青年座を経て、ドラマ、舞台で活躍。近年の舞台として『ガラスの動物園』『叔母との旅』『今ひとたびの修羅』『才原警部の終わらない明日』など。テレビ「LIAR GAME」「ドクターX」「遺産争族」など、幅広い役どころをこなし、インパクトの強い演技力で高い評価を受けている。

鈴木おさむ劇場『美幸―アンコンディショナルラブ―』
東京公演
2016/5/12(木)~5/24(火) 本多劇場 全15回
入場料金 指定席 7,500円 ※全席指定・税込 ※未就学児入場不可
お問合せ SLUSH-PILE. 03-5779-8366

大阪公演
2016/5/27(金)~30(月) サンケイホールブリーゼ
入場料金 指定席 7,500円 ※全席指定・税込 ※未就学児入場不可
お問合せ ブリーゼチケットセンター 06-6341-8888(11:00~18:00)

http://l-tike.com/mottorekishi

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