10月5日から草月ホールにて上演される音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』の稽古の様子を取材した。
本作は「日本人なら知っている唱歌の多くが作者不詳となっているのはなぜだろう」という謎を出発点にして生まれたオリジナルの音楽劇で今回が3度目の上演となる作品。
明治の天才音楽家と言われながら23歳の若さで亡くなった瀧廉太郎と、その友人・知人たちの留学先ドイツでの姿を描いている。
原田優一 和田琢磨 愛加あゆ
出演は、瀧廉太郎に和田琢磨。瀧の親友で、まだ名を知られていないの音楽家・岡野貞一役に原田優一。瀧をひそかに慕う留学生、音楽家の幸田幸に愛加あゆ。幸の世話人・フク役に星野真理。フクの元亭主・基吉役に白又敦と服部武雄がWキャスト。そして文部省の役人・野口貞夫役に佐野瑞樹。
演出はミュージカル『サイド・ショウ』『フォーエバー・プラッド』『シャーロック ホームズ~アンダーソン家の秘密』などを手掛け、来年早々には『フランケンシュタイン』を控えている板垣恭一という楽しみな布陣だ。
稽古が始まる前には出演する原田優一と愛加あゆにインタビューをさせて頂いた。
『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』 原田優一、愛加あゆ インタビューはこちらから!!
インタビュー中に稽古場に続々とキャストが到着。インタビューが終わる頃には、筋トレをする人あり、あちこちでおしゃべりする人あり。アットホームな雰囲気にあふれていた。
そして稽古開始。張りつめた空気に変わる。
この日は、終盤近くの場面から稽古が始まった。
病となった瀧(左 和田琢磨)は、音楽からも遠ざかり、その才能を惜しむ岡野から厳しく叱責される。音楽家としての前途も閉ざされた瀧は、やり場のない怒りを激しく表す。
だがその後、肩を落とす瀧に幸田幸(中央 愛加あゆ)がいたわるように語りかける。
その2人を見つめるのは
幸の世話人・フク役の星野真理と、フクの元亭主・基吉役の白又敦。
この場面の直後、瀧と幸を気遣うフクが、感情を表す場面で一瞬にして目をうるませるだけでなく、鼻の先まで赤くしていた。
瀧が去った後も瀧を心配する人たち。
そしてその人たち…岡野と幸の間で細やかな感情がやり取りされる。
相手を思いやる岡野に胸が苦しくなり、まっすぐな幸の生き方に慰められる気がした。
そんな中、ただ1人違うテンポで生きいる基吉(白又敦)。張りつめた空気の流れる場面の合間に、おもわず笑いのこぼれるシーンを生むきっかけとなる。
やがて戻ってきた瀧に岡野は、1つの方法を提案する。それは限りある命の、音楽家としての前途を閉ざされてしまった瀧を救う道だった。
そして3人はピアノを囲んで曲作りを始める。
絶望的な状況であったはずなのに、ピアノを囲み、ピアノが響きだすと笑顔を浮かべる瀧、岡野、幸田。
知らず知らずのうちに「音楽という魔法の力」を感じ、「生きるということ」と「命を長らえる」ことの違いを考えさせられてしまった。
そして人と人のつながりから生まれる可能性の大きさに胸が熱くなった。
取材を終えた時、憤る瀧、鼻まで赤く染めたフク、気持ちをまっすぐに伝え合う岡野と幸…の姿がよみがえり、 インタビューで聞いた「その場に生きている」という言葉が思い出された。
何度と繰り返される稽古でも役者は「生きている」のだと感じさせてもらった。
この稽古が積み重ねられ、披露される公演は10月5日(水)~10日(月・祝)に草月ホールにて。
明治という時代に西洋音楽に命を懸けて生きた若者たちの姿を目撃したい。
公演概要
公演名:音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』
公演日程:2016年10月5日(水)~10日(月・祝)@草月ホール
脚 本:登米裕一 演出:板垣恭一
出 演:原田優一、愛加あゆ、和田琢磨、白又敦・服部武雄(Wキャスト)、
佐野瑞樹、星野真里
ピアニスト:YUKA
チケット料金:S席8,000円、1階席6,800円、2階席6,000円、3階席3,300円 ※未就学児童入場不可
お問合せ:株式会社ショウビズ 03-3415-8832 http://www.show-biz.jp