後列左から 横田栄司、吉田栄作、渡辺徹、今井朋彦
前列左から 江守徹、浦井健治、ソニン
世田谷パブリックシアターと文学座、兵庫県立芸術文化センターの3団体が共同制作するシェイクスピア作品『トロイラスとクレシダ』の制作発表が、6月2日開催され、豪華キャストがずらり勢揃いした。
シェイクスピアが『ハムレット』を完成させた1602年頃に書かれたのではないかと言われている『トロイラスとクレシダ』は、 戦争の中で翻弄される男女を主人公として、悲劇と喜劇の間を揺れ動き、シェイクスピア作品の中でも最も分類困難な“問題劇“とされている作品。
公共劇場と民間の実演団体とが共同制作することで、数多くの実をむすべるような作品づくりをめざす。
今回は舞台面と客席がフラット。殺陣もふんだんにあると予想されている。
まずマイクを任されたのは、翻訳の小田島雄志:
『トロイラスとクレシダ』は演出家が一番やりたがる本であり、観客が一番観たくない本であると。演出家は『オレだったらこうやる』というのがある。観客は、なんか、わけのわかんない。悲劇か喜劇か歴史劇か、全ての要素がありながら芝居の途中でぷっと終わっちゃうようなのは、観客はあまり喜ばない。
ところが人間というのははっきり割り切れるものじゃないんだという人間観が広まってきてから「この芝居、結構面白いんじゃないか」というのが観客の方にも沸いてきた。ちょうどそういう時期だと思います。
「分かんないけど面白い」じゃなく、「分かった上で面白い」作品になっているだろうと、鵜山くんの演出に非常に期待して楽しみにしています。
左 鵜山仁 右 小田島雄志
演出の鵜山仁:
昨年2月に文学座でシェイクスピア生誕450年にあやかって『尺には尺を』をやった稽古初日に、小田島先生が「これもめんどくさいけど、もっとめんどくさいのがある。それが『トロイラスとクレシダ』だ」とおっしゃるのを聞いて「これだ!』と。
たまたまヨーロッパとアジアの境目にある地域のお話なので、そこでいろんな価値観が、混在して、ひっくり返ったり、そういった混沌の中から未来の姿みたいなものが見えてくるのかどうかっていうのが、差し迫って我々の問題でもあるし、その辺にも触れることができたらという風に思っています。
トロイ王の末の王子、トロイラスを演じる浦井健治:
今、鵜山さんがおっしゃった「混沌から未来へ」っていうのが、テーマなんだろうなと漠然と思いながら、印象深かったんですけども。
僕の演じさせて頂く役は、開口一番で「戦争に行きたくない」って言っています。戦争中なのに。それが僕の中でインパクトがあって、とても人間的だなと思っている部分です。
トロイラスと永遠の愛を誓うヒロイン、クレシダ役のソニン
原作を読んで「これは難しいな」というのが第一印象でした。喜劇なのか悲劇なのか歴史劇なのかという話がありましたが、ふと「人生って、時に悲劇だったり、すごく滑稽だったり、美しかったり汚かったりという部分がすごく混沌としている世界だ」と思うので、そういうことがすべて混ざり合っているのではないかなと思っています。
クレシダという役も、すごく難しい役なので、どうなるのか、まったく描けないですが、それが逆に楽しみです。
クレシダを誘惑するギリシャの将軍、ダイアミディーズ役の岡本健一
僕が担当するのは、誘惑というか…出会ってしまったわけです。休戦中ではあるけれど、敵国の女性と出会い…それがひとつの運命じゃないかと思っています。
禁断の愛とか一切なく、互いに一目惚れして出会い、愛をささやき、語り…戦争など関係なく、男と女の結びつきを感じる。情欲担当ですかね?(笑)
愛あふれる舞台、シーンを作れるんじゃないかと。ソニンさんは本当に美しいですから。ギリシャの将軍が全員ひと目惚れするような。(ここでソニンが「私、整形しようかな」と言って困った表情を見せたので笑いが起きた)
トロイ王の長男、英雄へクター役の吉田栄作
稽古が始まっていないので、台本を読みながら想像をふくらましていますが、俺の担当は何なのだろう?(笑)
国を背負って戦争に出て、ギリシャの兵士をバタバタを倒してきたんであろうけども、読んでいると、たぶんへクターは戦いたくないのかな、血を流したくないのかなと感じるところもあります。与えられている台詞の中で、そういう部分が少しにじみ出ればいいのかなと。
トロイラスとクレシダの恋の取り持ち役、クレシダの叔父、パンダラス役の渡辺徹
パンダラス役は唯一歌を歌います。シェイクスピアですから、オペラタッチで歌うのか…とつい先ほど、そこで鵜山氏に「どうするんですか?」と聞いたら「ああ、月亭可朝みたいな感じで」と(爆笑)。相談しなきゃよかったなぁという感じ。それを聞いた瞬間、この作品は面白くなりそうだなぁと思いました。何が飛び出すか分からない。鵜山演出に任せておけば、絶対に面白くなります。なると思ってやります。面白くなかった時は、全部鵜山のせいです(笑)。
頭の回転の速いギリシャ軍の策士、ユリシーズ役の今井朋彦はみずからを「策略担当」と。
人間くさいギリシャ軍の英雄、アキリーズ役の横田栄司は「逃げ出したくてしょうがない」と、これまで数多くのシェイクスピア劇を演じてきたゆえに知るおそれをのぞかせた。
トロイ王プライアム役、江守徹
皆よくしゃべるので、僕は一言だけ。新人のつもりで頑張ります!(笑)
〈公演情報〉
世田谷パブリックシアター+文学座+兵庫県立芸術文化センター
『トロイラスとクレシダ』
【作】ウィリアム・シェイクスピア 【翻訳】小田島雄志
【演出】鵜山仁
【出演】
浦井健治 / ソニン / 岡本健一 / 渡辺徹 /
今井朋彦 横田栄司 / 鵜澤秀行 斎藤志郎 高橋克明 /
櫻井章喜 石橋徹郎 鍛治直人 / 松岡依都美 荘田由紀 吉野実紗 /
木津誠之 神野崇 内藤裕志 宮澤和之 / 廣田高志 若松泰弘 植田真介 /
浅野雅博 小林勝也 / 吉田栄作 / 江守徹
【演奏】 芳垣安洋 高良久美子
【東京】 7月15日(水)~8月2日(日) 世田谷パブリックシアター
【石川】 8月7日(金)~9日(日) 能登演劇堂
【兵庫】 8月15日(土)・16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【岐阜】 8月20日(木) 大垣市民会館大ホール
【滋賀】 8月23日(日) 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール