1996年のデビュー以来、台湾のみならず中華圏最高の女性歌手のひとりとして活躍を続けてきた張惠妹(ア-メイ)が、久々に東京でライブを開催した!
これは2015年4月に台北公演で幕を開けたツアー、UTOPIA _MEI World Tour/(張惠妹烏托邦世界巡城演唱會)の一環として、ツアー36回目の公演を1月24日にZeep Tokyoで開催したもの。
中華圏では上海八万人体育場など数万人規模の会場でコンサートを行うことが多いアーメイだが、日本では彼女の歌をじっくりと味わい、近い距離で観客とのやりとりを楽しめる貴重なライブとなった。
「伝説のユートピアでは唯一の言葉は音楽でした。そこでは外見の違いも距離も性別もありません。さぁ、恥じらいを忘れて、一緒にユートピアに行きましょう」というアナウンスからコンサートが始まった。アーメイというアーティストの大さを感じさせる壮大なオープニング音楽に続いて、アーメイは「開門見山」「黑吃黑」でパワフルな歌声を響かせて登場。観客は手を振り上げ、体を揺らして一気にアーメイの作るユートピアへと突入した。
アーメイは最初のトークで「今日は東京での特別な特別なコンサート」と話し始めた。そして「ステージが(客席から)近いわ。観客のみなさんが上って来れそうなほど。私がここから落ちたら受けとめてくれる?」と冗談を飛ばした。いつもは長時間のアリーナショーのようなライブを行うアーメイは「今日は曲もセレクトした圧縮バージョンよ」と、他の場所とはひと味違ったスペシャルなライブを説明。「私はこんなライブが好き。みなさんと近くにいたいから。顔もはっきり見えるわ」と話し、アーメイの言葉ごとに返答する観客との会話を楽しんだ。「昔は結構、日本語を話したのだけど、すっかり忘れたわ」と言いつつも時折「ありがとう」「カワイイ」と話した日本語も日本のファンにはうれしかった。
「話が長いわね。ごめんなさい。さぁ、一緒に音楽についてきて!」と歌ったのは「你想幹什麼」「牙買加的檳榔」。会場は更にヒートアップした。
2回目のトークタイムでは「でも(観客と)近すぎて、恥ずかしいわ。面白いけど」とスタジアムライブを行うスターならではのシャイさを見せた。「次は叙情的な曲だから座って。後半は立つことが多いから」と観客を座らせてパワーあふれるバラード「血腥愛情故事」を聞かせ「母系社會」では「身近な女性を大切にしてね」と呼びかけた。
その後もアーメイの魅力の幅広さ、多彩さを見せつける場面が続く。観客の大合唱をバックにアーメイの伸びやかな美しい声を響かせた「掉了」、パワーだけでない、色っぽさやかっこよさに満ちた大人のロックに会場中がジャンプした「跳進來」、歌い終わっても客席からの歓声が止まらない「喝了」。アジアで800万枚以上を売り上げた「我可以抱你嗎?」は、観客の大合唱にアーメイが聞き入るほどの大きさとなった。アーメイの伸びやかな歌声が堪能できる「聽海」でも観客が一緒に歌い、アーメイも「感動した」を連発。客席からも「泣きそうだ~」という声が飛んだ。
「テストされるみたいで緊張するわ」と言いながらリラックスした笑顔を見せたリクエストタイムでは「如果妳也聽說」「勇敢」をサラリと披露。シンプルな伴奏でのアーメイの歌声の素晴らしさに改めて魅了された。また「もし落ち込んでいるなら、もっと辛くさせるけど、私の好きな曲を3曲続けて歌います。つらい人は泣いて。大声で泣いてもいいのよ。こっそり涙を拭ってもいい。この歌で心の圧力を抜いて欲しい」と披露したラブソング「三月」「我要快樂」「人質」では、年齢を重ねたアーメイの歌の深さを感じさせてくれた。
「彩虹」では会場のあちこちで観客の持ち込んだ虹色の旗がひらめいた。「我最親愛的」ではアーメイの「恥ずかしがらず愛を示して」「いろんな愛があるはず」とのリクエストに応えて、スクリーンに映されたカップルが次々とキス!それを目にした観客の顔にも自然に微笑みが浮かび、会場中が柔らかで温かな空気に満たされた。この優しさは、やはりアーメイだから生み出せたに違いない。
ライブの終盤は「愛があればなんでもできる」「もっと刺激的に」とエネルギーがはじけた「三天三夜」「前進烏托邦」で駆け抜け、会場を熱狂させた。
天性のパワーと伸びやかな歌声でスターダムに登ってから20年。その才能に歌手としてのキャリアと、人間として女性としての魅力を積み重ねてきた、張惠妹(アーメイ)。その素晴らしい歌の1曲1曲を手渡しされたように心に響いたコンサートだった。