美しく優秀な妹から「ヘタレ」と呼ばれる冴えない兄。ふたりの恋とキャリアを軽やかに描くタイ映画『ブラザー・オブ・ザ・イヤー』が、第31回東京国際映画祭 CROSSCUT ASIAにて上演された。2PMのニックンが、妹の恋人役でタイに駐在する日系会社員役で出演するとあって注目を集め、客席は満席。10月28日の上演後にはウィッタヤー・トーンユーヨン監督と、冴えない兄役を演じたサニー・スワンメーターノンがQ&Aに登壇し、観客と楽しいトークタイムを持った。
脚本も手掛けたトーンユーヨン監督は客席で映画を鑑賞し、客席から登壇。
サニーは挨拶冒頭でマイクを逆に持って話し始め、会場は笑いに包まれた。
―本作の発想のきっかけはなんですか?
監督:兄弟が出て来る映画はあっても、兄弟が主役の映画がなかったので、おもしろいと思いました。夫婦や友達は選べるけれど、兄弟は選べない。そこに着目しました。
―オファーをもらった時の気持ちは?主人公チャットは「へたれ」と呼ばれていますが。
サニー:役柄よりもストーリーに興味を感じました。僕にも兄と姉がいますので、兄弟への気持ちもわかります。言葉にできない兄弟へ気持ちを演じてみたいと思って引き受けました。
―先ほど舞台裏でサニーさんに「監督はどんな人か?」と聞いたら、この映画の主人公チャットみたいな人だとの答えでした。(笑) 監督ご自身がチャットのキャラクターに投影されていますか?
(サニーと監督でマイクを取り合い、会場は爆笑)
監督:OKOK!! 家族によって兄弟の関係は様々だと思います。本来なら兄が妹を守るべきところ、逆の関係をやったらどうかと思ってこの脚本を書きました。付け加えると、私には妹がいますが、妹より成績がよかったし、いろいろ優れています。(笑)
サニー:最初はチャットをどう演じたらいいのか困ったのですが、監督に会って、こういうふうに演じればいいのだと分かりました。(笑)
ーこの作品には日本の要素がたくさん出てきますが、おふたりの日本の印象は?なぜ日本の要素が多い映画になったのですか?」」
サニー:映画については監督にお答えいただくとして、私は個人的には日本が大好きで、日本に観光に来る事も大好きです。日本の漫画にも小さい頃から接する機会も多かったので漫画も大好きですし、買い物に来るのも好きです。
監督:この映画に日本の要素が多いのは、結婚式で妹が兄に大きな影響を受けたと語る場面がありますよね。兄から影響を受けたというのは、兄が好きだった日本の漫画や野球の影響を彼女も受けたということです。その結果、彼女は日本に留学し日系企業で働きます。兄が彼女が日本を好きになる原因となった、兄が影響を与えたということで日本を選びました。実際にタイの子供たちは日本の漫画を見ながら育っていますよ。
ーなぜ妹は北九州に住むことになったのか、選んだ理由は?
監督:イメージとして東京のような大都市で便利で、タイにも心理的に近い場所ではなく、大都市に比べればちょっと不便で、ドラえもんののび太の家がたくさんありそうな場所ということで北九州を選びました。
ーニックンをキャスティングした理由は?
監督:タイで働くタイとのハーフの日本人という役でしたが、日本人ではタイ語でたくさんの台詞を話せる俳優が見つかりませんでした。ニックンはタイ人ですが、海外生活が長く完璧なタイ語ではなかったので、この役にぴったりでした。(笑)
この映画の原題は「妹・兄・スイートハート」です。スイートハートはニックンの役のことで、とっても大切な役です。
ーサニーさんをキャスティングした理由は?チャットは「自分はイケてる」と思っていますね。
監督:憎めない冴えない男を思い浮かべた時にサニーを思い出しました。
サニー:喜んでいいのか、悲しむべきなのか、わからないですね…(笑)。
監督: 2人は映画で本当の兄弟のように自然だったでしょ。撮影前にワークショップをやって、回を重ねると二人が「イケてるよ」「全然ダメよ」と口けんかを始めるようになって、本当の兄妹のようになりました。
―最後に監督からひとことお願いします。
監督:本作を見た帰り道で自分の兄弟を思い出し「会いたい」と思ってもらえたらと願っています。兄弟がいることは幸せなことだと思ってもらえたら嬉しいです。
国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA #05 ラララ 東南アジア
ブラザー・オブ・ザ・イヤー Brother of the Year[น้อง.พี่.ที่รัก]
監督:ウィッタヤー・トーンユーヨン[วิทยา ทองอยู่ยง]
キャスト:サニー・スワンメーターノン
ウッラサヤー・セパーバン
ニチクン・バック・ホルベチクル
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CCA02