――初めてこの映画のオファーが来た時の率直な感想を教えてください。
実は、最初に出演の提案を頂いた時はお断りしたんですよ。というのは、分量は少ないのに、そのキャラクターの役割がとても大きかったからなんです。僕がこの役を完璧に演じ、観客の皆さんを説得できる演技ができるかという心配が大きかったため自信がありませんでした。プレッシャーが大きくてお断りをしたわけですが、制作会社の代表が何度も僕を訪ねてきてくださって…。
――今まで演じられてきた役と今回の役とでは、また一味違いますね。悪役に挑戦されてみていかがですか?
罪の意識のない悪役を演じるのは精神的にも体力的にも辛いです。社会的に公憤を買うような事をやらかしても、本人だけは平然としている。そんな人物は非現実的だと思うでしょうけど、必ず本当にそういう人間は存在するんです、きっと。 この点をユ・ジュンサンという俳優が演じることで観客たちがより面白がるかもしれないというドキドキはありました。
――『レオン』のゲイリー・オールドマンを彷彿とさせるキレた悪徳刑事でしたが、何か参考にされた作品、役者などあったのでしょうか?
僕が優しくて愉快なイメージを持ったキャラクターが多かったので、作品と俳優を参考にすると「ユ・ジュンサンが●●を真似ているんだね」と言われる気がしたんです。そうなると、どうしても映画を観る観客の皆さんの楽しみが半減されると思いました。なので、特定の作品と俳優を参考にするよりも、社会全般にわたった流れでアイデアを得ました。
――オリジナルの『この愛のために撃て』はご覧になったのでしょうか?もしオリジナルからヒントを得たことなどあれば教えてください。
観ようと思ったのですが、わざと観るのをやめました。観たらきっと少しでもキャラクターを構築する時に真似てしまうかという憂慮があったので。いっそ、オリジナルとは全然違った感じに作ってみたいと思いました。
――カンヌ映画祭でオリジナル『この愛に撃て』のフレッド・カヴァイエ監督も絶賛していたとお聞きしましたが、監督とお会いしていかがでしたでしょうか?
カンヌ映画祭には初めて行ったわけではないのですが(※ホン・サンス監督作品で過去にも招待を受けている)いつもレッドカーペットに立つ時は心臓がバクバクします。リメイク作品が映画祭で上映されるということもあまりないことなので、とても意味のある経験だったと思います。その上、オリジナルの監督が応援してくださるなんて、とても心強かったですね。
――全般的にアクションが強い作品でしたが、トレーニングなどいままでの映画とは違う役作り方法などありましたか?
映画、ドラマ、ミュージカルをずっとやってきたので、体力管理は僕には常に必須のことなんです。本当に頑張って管理しています(笑)。このキャラクターはアクションもアクションですが、ソン・ギチョルの持っている”密度”。僕が表現しなければならない密度が、皆さんが思っている私の代表的なキャラクター、イメージと距離が遠かったので、その間隙を減らそうと思いました。
僕は現場では人と会話をするのがとても好きで、いつも愉快なほうなんですが、今回はキャラクターに没頭するためにとっても静かに…隅っこで…集中して役に没頭しようと努力しました。
――警視庁の中でリュ・スンリョンさんと派手に対決するシーンがありますが、撮影はいかがでしたか?
リュ・スンリョンさんとは本当に息がぴったりでした。僕が(日本の歳で)45歳、リュ・スンリョンさんが44歳なんです。1歳違いの40代の同年代俳優です。若くもないのに本当にこの歳になっても体を惜しまぬ体当たりな演技を見せてくれました。見せるためのアクションではなくて、実際以上に身体を飛ばして演技していました。僕も歳を重ねてきているので辛いのを見てるだけでもわかるんですが、簡単にはいかないシーンを自らやり遂げている姿を見て本当に驚きました。物凄いエネルギーが消耗される最後のシーンを終えて、お互いに抱き合いました。演技を20年ほどやってきた者同士、お互いに「お疲れ」と言いながら抱き合ったんですが、何だかジーンとしてしまいました。
――イ・ジヌクさんとの撮影エピソードがあれば教えてください。
現場で見ていると、礼儀正しくて感じの良い青年でした。映画を撮りながらあちこち怪我もしただろうに、本当にご苦労だったと思ます。
――ユ・ジュンサンさんがもしこの映画のように突然、標的にされたら、どうしますか?または、標的にしたい人物はいますか?
逃げるよりは全面的に真っ向から勝負するタイプです。ヨフンとは違った方法で対抗すると思います。標的になっても最後まで生き残って不條理を世の中に必ず知らせなくちゃいけないと言う目標があるので、どうにかして切り抜けようとすると思います。
――もしくは、ユ・ジュンサンさんが標的にしたい人物はいますか?(笑)
僕はいつも自分自身との闘いが人生の課題です。自分に厳しく、常に努力して来た時間が積もりその成果が出る時に自負心が生じます。だからきっと他人よりも自分自身を標的にすることが一番良いんじゃないかと思います。そうすれば、どんな方式でも自分に”発展”がついて来るような期待がありますよね。
――ミュージカルでの経験が映画に活かされている事、その逆はありますでしょうか?
映画やドラマは分析という過程もあるし、また一人でやる作業ではなく、みんな一緒に時間を区切って動くものですよね。そこで克服できることは多いです。反面、舞台は一人でやらなきゃいけないものです。そういう苦痛に勝ち抜けば勝ち抜くほど、ドラマや映画でより堂々とできる気がします。たぶん70歳になってもインタビューで「昨日セリフ一つ間違えちゃったんですよ」とか言うと思います(笑)。変わらず今も克服中です。
馴染みのチームと公演をしてみると、僕も知らず知らずのうちに、公演の流れに合ったアドリブをしていたりします。映画の撮影でも同じです。心の通じる監督、俳優たちと一緒にやると、自然なアドリブが出てきたりするものです。今回の『ポイントブランク』の現場が、そうでした。
――ユ・ジュンサンさんといえば、ホン・サンス組の常連かと思いますが、今後どんな監督とお仕事をされてみたいですか?また一緒に仕事をしてみたい日本人監督もしくは俳優はいますか?
ホン・サンス監督とは面白い仕事をたくさんやりました。産業映画でもインディーズ映画でも、大きくても、小さくても、何でも”ユ・ジュンサンが出ているから意味のある映画だったね”と言われればそれでいいんです。勿論、会社では嫌がられますけど(笑)。良い感性とストーリーを持った監督とはいつでも一緒に仕事したいと思っています。ご連絡お待ちしています(笑)!
――これから映画を観る日本の皆さんへ本作の見どころを教えてください!
やはり、全身が壊れるくらいに飛びかかった最後のシーンが一番の見どころかと思います。持っている全エネルギーを投影しているので、日本の観客の皆さんも一緒に感じていただけると嬉しいです。
『ポイントブランク~標的にされた男~』
【STORY】
濡れ衣を着せられ、追い回されるヨフン(リュ・スンリョン)は銃で撃たれ病院に緊急搬送される。ヨフンの担当医師テジュン(イ・ジヌク)は、その日以後、突然襲撃され、誘拐された妻を助けるため、病院からヨフンを脱走させ、危険な逃亡劇が始まる。一方、事件の陰謀を直感した女刑事のヨンジュ(キム・ソンリョン)と犯人検挙率100%の広域捜査隊ギチョル(ユ・ジュンサン)が新しく事件に介入するが…。
殺人容疑者ヨフン
共犯者にされたテジュン
それぞれ別の目的で彼らを追う二人の追跡者
“あの日の夜…全てが始まった !”
真実を語るのは、一体誰なのか―――
一夜のうちに起こった謎の殺人事件。
【出演】
リュ・スンリョン『王になった男』
イ・ジヌク『怪しい彼女』
ユ・ジュンサン『フィスト・オブ・レジェンド』
キム・ソンリョン『逆鱗』
【監督】
チャン『コ死:血の中間考査』
2014年 | 韓国 | 102分 | シネスコ | 5.1chサラウンド | 日本語字幕:福留友子 | 原題:표적
提供:CJ Entertainment/配給:CJ Entertainment Japan
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11月15日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開!