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尾上右近、夢の白石和彌監督作品出演に感慨! 「人間のエネルギーが放出されている作品!」 映画『十一人の賊軍』インタビュー!

『十一人の賊軍』尾上右近様/Astage-27

「日本侠客伝」シリーズ(64 年-)、「仁義なき戦い」シリーズ(73 年-)などを手掛け、東映黄金期の礎を築いた脚本家・笠原和夫が、1964年に執筆した幻のプロットが、60年の時を経て映画化!この巨匠が手掛けたプロットを、企画・プロデュースの紀伊宗之と白石和彌監督、脚本の池上純哉たち平成ヤクザ映画の金字塔『孤狼の血』チームが受け継ぎ、令和に新たな集団抗争劇として誕生させた。

本作は、明治維新の中で起きた“戊辰戦争”の最中、新発田(しばた)藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた歴史的事件・奥羽越列藩同盟軍への裏切り=旧幕府軍への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた罪⼈たちが「決死隊」として砦を守る任に就く物語。

十一人の賊軍のなかで、イカサマ賭博で、武士から金を巻き上げお縄になった赤丹(あかたん)。仲間たちを明るく鼓舞し、強い思いで生きることに向かっていく役を俳優・尾上右近が熱演した。夢の白石和彌監督作品に出演した彼に、作品への思いを、撮影を振り返りながら語ってもらった。

― まずは、ご出演が決まったときのお気持ちと、台本を読んだときの感想をお聞かせいただけますか?

オファーが来る瞬間というのは、僕にとって役者をやっている上で一番幸せな瞬間です。そこから準備に入って現実になっていくと、喜んでいるだけじゃいられなくなりますが、お話をいただいたときはすごく嬉しかったですね。

とにかく白石和彌監督の作品が大好きでほとんどの作品を拝見していて、以前から「白石和彌監督の作品に出たいです!」と言っていたんです。なので、オファーをいただいたときは本当にびっくりしました。
歌舞伎の舞台でもそうですが、本当に自分が目指していた仕事を思い描いていたら、実際に叶うことが今までも何度かあったので、今回も自分の中で強く思えば叶うということを実感した1つでした。どんな役でもお受けしようと思っていたので、自分の役が分からない状態で台本を読ませていただきましたが、もう手放しに楽しい台本で面白かったです。その中でこの役だったらいいなと思っていた“赤丹”が自分の役だったので、嬉しくてワクワクしました。

『十一人の賊軍』尾上右近様/Astage-12

― 赤丹という役をどのように捉えて演じようと考えましたか?

悪いヤツだけど、ダメだということじゃなくて、人間的な魅力と可愛らしさ、ムードメーカー的な明るさがありつつ、嫉妬と隣り合わせというところもある。1度“死”が確定したところから“生”に向かって生きるのですが、環境的には“死”と隣り合わせという死生観みたいなものがど真ん中にいる人たちが集まっています。それぞれの人間性が浮き彫りになっている中で、赤丹はとにかく明るくしてなきゃやってられない!という人間。明るい自分が好きだろうし、人を楽しませることにも喜びを感じる人だと思います。ただ、努力の方向性を間違えて、犯罪という間違った方に行ってしまったわけですが、生きるということに対する努力を象徴するような存在だったという気がします。赤丹は詐欺をしてお金を取っていた罪を犯していたので、イカサマ博徒として死刑を受けますが、自分もお芝居をするということは嘘をつくという意味では同じで、本気で嘘をついている状態なんです。それはお客様に喜んでいただくためにお金をいただいて行っているので犯罪ではなく、上手く騙せれば騙せるほど評価される仕事。なので、方向性を間違っているだけで人間としては、面白いヤツだなと思っていました。

― とても人間味が溢れた役どころですが、演じるうえで何か準備したことや意識したことはありますか?

少し早口で喋るということは意識していました。本読みのときに想像以上に緊張して早口になってしまったのですが、白石監督がそれを面白いって言ってくださって。「詐欺をする人は自分のペースに巻き込むので早口の人が多い気がするから、面白いですね」と。あとは、博打打ちの人たちの性質を調べました。「よござんすか?」とか「勝負ッ!」という映像をよく観ますが、あんなことはないそうです。非公式でやっているので、絶対に小声でやる。大事なシーンになればなるほど小声になるのが博打打ちの性質で、コソコソしているそうです(笑)。
赤丹は明るくて少しお調子者なキャラクターなので、ここは静かにというところで、オーッと大きい声を出してしまうというところもありますが、大事なところは自然と小声になっていました。ただふざけているのではなくて、逼迫(ひっぱく)したところだからこそ自分が明るくしないといけないという責任感もある人。自分でもそこは大事に演じさせてもらいました。

『十一人の賊軍』尾上右近様/Astage-5

― 白石監督作品の一番の魅力はどこ感じられていますか?

白石監督の作品は、人の善し悪しじゃなくて人情の深み、生きることに努力している人間の姿、人間味というのが共通して見えて、それを作品を通じて感じられるエネルギーがあるんです。今回もそれが集団抗争劇としてか書かれているので、いかに生きるかということに真剣に一生懸命努力している姿は自然とエネルギーを受け取ることができると思います。赤丹も方向は間違っていたけれど、人に関心が高い人だったのかもしれません。

― 白石監督の指揮はいかがでしたか?

とても自然体で、淡々とされているんです。その中で、確実に明確にこう撮りたい、こういうものにしたいというメッセージを強く感じていたので、それに面白く応えたいという気持ちでした。お芝居としてチャレンジしてみたことは確実にキャッチしてくださるし、笑ってくれてとても嬉しかったです。

『十一人の賊軍』尾上右近様/Astage-13

― 撮影で印象に残っているシーンはありますか?

官軍が最初に攻めてきて追い返すことに成功して、「同盟軍の決死隊だ!よく覚えとけ!」という場面があるのですが、監督に「ちょっと血をつけてカッコいい感じになっちゃうのをやりたいです」と自分から言ったのですが、そこを使ってもらっていたのが嬉しかったです。そのシーンは10時間くらい待って出番を待って、いざ「覚えとけ!」と叫ばなくちゃいけなくて(笑)。声が大きいという設定でしたし、歌舞伎の人は声が大きいという印象もあるようなので、しっかり声を張らなくてはと思って臨みました。そのあと、官軍が残していったお宝を開けるのにワクワクしてアドリブで歌っちゃったんです。みんなが笑ってくれたんですが、そこはバッサリとカットされましたね。そりゃそうだよなって思いました(笑)。でも、カットされても悔しいと思うことはなかったです。テンポが非常に大事ですし、この作品の中の1つの大事なコマとして扱ってもらって、その仕事をちゃんと尊重してもらっているのが凄く伝わってきたので。撮影が深夜までおよび、スタッフさんはじめみんなが疲れているところに、僕の歌で笑ってくれてちょっと安らいでもらえたなら、いい仕事ができたと満足です。全体的なバランスが取れたテンポ感の良いエネルギッシュな作品に携われて私は幸せだと心から思っています。

― 完成作品をご覧になって、かなりの満足感があった?

舞台で撮った映像などは、自分の演技やパフォーマンスを確認するために観るのですが、映画でも今回は自分の演技に対してのチェックと言う感覚がなかったので初めてかもしれません。もちろん求められた仕事ができているかという目で観ているところもありましたが、それ以上に全体像がこんなに面白いことになっているんだ!と感激しました。日々の撮影が報われるというか、全部が繋がって昇華されていっているという感覚が凄く強かったです。

『十一人の賊軍』尾上右近様/Astage-26

― 撮影はかなり大変だったのでは?

これまで映像作品にそれほど多く出ていないので、これだけ毎日のように撮影があるという経験もありませんでした。みんなと一緒に過ごすことが多く、それ(大変な撮影)も含めてみんなで楽しんでいた気がします。1つ笑っちゃったことがあるんですが、10時間くらい車の中で待っているときに、インカムからスタッフさんの会話を拾っちゃったんですが、「次、赤丹も入ってますね。赤丹、もう帰ったの?」「赤丹、まだいるっぽいっす」って(笑)。スタッフさんも混乱するくらい、それだけ大変だということですが、それも全部報われる感じでした(笑)。

暑い季節でもあったので、過酷な撮影ではありましたが、それをみんなで分かちあって一体となっていた感覚が凄く強かったですし、映画の話の中でもそうですが、スタッフさんも含めて過酷な状況の中だからこそ絆は自然と生まれて、現場でもその空気を感じていました。

― 映像からも賊軍の皆さんの結束力を感じますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

監督もお茶目ですし、大人の男子校の感じでした。その中で1日1日を刻んでいったという感覚が強かったです。やはり現場の空気が映るんですね。映画では使わない言葉ですが、「ON AIR」という言葉があるように、その空気が乗っている状態だと思います。僕は演劇、歌舞伎を主にやっていますが、芝居やパフォーマンスを通して現場の空気を作るのが好きなんです。映画では、もっとリアルにその空気が映像を通して伝わるものなんだなと、今回凄く思いました。なので、いい作品を作るために共演者の皆さん、監督とはもちろんですが、スタッフの皆さんも含め全体が関わる感覚で臨むことが大事なんだと再認識しました。

― 雨のシーンの迫力は圧巻です。

いや、もう冗談じゃないくらいの雨ふらしでした。本当にもう死ぬかと思いましたよ(笑)。極限にリアルでしたね。吊り橋も凄く揺れて、爺っつぁん(演:本山力)なんて、死にそうな顔していましたから。「時が・・・」と言っているくせに、自分が一番時間がかかっていてみんなで爆笑していました。本山さんは実直でひたむきな方なんですが、揺られすぎて面白い動きをしていて(笑)。リアルな環境を作っていただけていたので、それが映像に出ています。“過酷”っていいですね。よっぽど自分に執着している場合は必死になるかもしれませんが、過酷じゃないとなかなか必死になれない。人間、お尻に火がつけば必然的に必死になりますから。その瞬間に人間のアドレナリンが出てエネルギーが放出されるんだと思います。

『十一人の賊軍』尾上右近様/Astage-20

― 主演の山田孝之さんと仲野太賀さんとの共演はいかがでしたか?

お世辞抜きで、共演させていただきたいと夢見ていたお二人だったので、白石監督作品出演と、お二人との共演で、願いが3つ叶った作品になりました。嬉しすぎてはしゃぎそうになったんですが、自分も歌舞伎の人と見られているだろうし、落ち着いていないといけないと思いましたが、内心「やったー!」とはしゃいでいました(笑)。現場では同じ役者なので、一緒にやる仲間という感覚で接していましたが、人としての気遣いや細かい気配りがお二人とも素晴らしい。その上に役者としての表現が成り立つものですし、それが重要になっている時代なんだなとお二人を通じて感じました。やはり人との繋がり、人と人が仕事をしているんだという感覚を強く持つことがとても大事なんだと思いました。

― ドラマや映画などでも活躍されていらっしゃる右近さんですが、これをきっかけに歌舞伎を観てくださる方が増えることに繋がることを期待していますか?

自分の存在がこの作品のプラスアルファになりたいという思いで参加しました。その思いで自分のお芝居や役作りにもこだわった上で、自分の評価を受けたいという気持ち以上に、この作品が面白いと思ってもらえたらいいなと考えていました。そういう意味では自分を通して歌舞伎を知ってもらいたいというようなモチベーションはあまりなかったです。結果的に尾上右近という役者を発見してもらって、興味を持ってもらって、その先に歌舞伎があり、歌舞伎を観るきっかけに繋がっていけば、それも大きな幸せですが、まずは日本人の火事場の底力、切羽詰まったときの必死なエネルギーを感じてもらえる作品に関われたことが幸せです。そこからエネルギーを感じて頑張ろう、いいもの観たなと思ってもらえれば嬉しいです。

【尾上右近(Ukon Onoe)】
1992年5月28日、東京都出身。2018年に清元唄方の名跡、清元栄寿太夫を襲名し歌舞伎界の二刀流として活動する花形歌舞伎役者。7 歳で初舞台。『燃えよ剣』(21)で映画初出演を果たし、同作で第45 回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。歌舞伎のみならず、映画やドラマのバラエティでも活躍。主な主演作には、大河ドラマ『青天を衝け』(21)、『わたしの幸せな結婚』(23)、『身代わり忠臣蔵』、『八犬伝』(24)。公開待機作に映画『ライオン・キング:ムファサ』(超実写吹替版ムファサ役)。

『十一人の賊軍』概要
舞台は 1868 年、「鳥羽・伏⾒の戦い」を皮切りに、15 代将軍・徳川慶喜を擁する「旧幕府軍」と、薩摩藩・長州藩を中心とする「新政府軍=官軍」で争われた“戊辰戦争”。
明治維新の中で起きた内戦であり、江戸幕府から明治政府へと政権が移り変わる激動の時代である。その戦いの最中、新発田(しばた)藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた歴史的事件・奥羽越列藩同盟軍への裏切り=旧幕府軍への裏切りのエピソードをもとに、原案・笠原和夫は罪⼈たちが「決死隊」として新発田藩の砦を守る任に就くストーリーを創作した。
笠原は「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉の通り、勝った方が全て正しく、勝敗によって善悪が決まるのが当たり前の時代に“果たして勝つことだけが正義なのか?”と一石を投じるべく、憎き藩のために命をかけて砦を守らなければならない罪⼈たちの葛藤を構想した。しかし当時の東映京都撮影所所長・岡田茂は物語の結末が気に入らずボツに。怒りに狂った笠原は350 枚ものシナリオを破り捨ててしまい、日の目を見ることのないままとなってしまったが、笠原和夫が描こうとしたドラマは今まさに日本が抱えている社会問題とシンクロすると確信した現代の東映が企画・映画化。

集団抗争劇とは
1 ⼈のスターに頼らない「集団劇」。ひとりのヒーローが活躍するのではなく、チームワークで敵に打ち勝とうとする構造。1963 年頃〜1967 年頃に東映が作り出してきたジャンルであり、多くの人々に衝撃を与えた。

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映画『⼗⼀⼈の賊軍』
出演:山田孝之 仲野太賀
尾上右近 鞘師里保 佐久本宝 千原せいじ 岡山天音 松浦祐也 一ノ瀬颯 小柳亮太 本山力
野村周平 田中俊介 松尾諭 音尾琢真 / 柴崎楓雅 佐藤五郎 吉沢悠 / 駿河太郎 松角洋平
浅香航大 佐野和真 安藤ヒロキオ 佐野岳 ナダル / 木竜麻生 長井恵里 西田尚美
玉木宏 / 阿部サダヲ
監督:白石和彌
原案:笠原和夫
脚本:池上純哉
音楽:松隈ケンタ
配給:東映

公式 HP: https://11zokugun.com/
公式SNS: X:@11zokugun_movie / Instagram:@11zokugun_movie
コピーライト: ©2024「⼗⼀⼈の賊軍」製作委員会

全国絶賛公開中!

ヘアメイク:Storm
スタイリスト:三島和也(Tatanca)

撮影:ナカムラヨシノーブ

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『十一人の賊軍』尾上右近様/Astage-43