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【東京フィルメックス】中国映画『川辺の過ち』Q&A「原作小説にインスパイアされて作る」

第24回 東京フィルメックス / TOKYO FILMeX 2023が、2023年11月19日(日) ~ 11月26日(日)に8日間にわたって開催され、東京フィルメックス・コンペティション8作品、特別招待作品8作品など、全35作品が上演された。
11月25日にコンペティション部門の中国映画『川辺の過ち』(原題:河辺的錯誤 2023)が上演され、魏書鈞( ウェイ・シュージュン)監督が登壇しQ&Aが行われた。

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魏監督は、1991年北京生まれ。2016年にデビュー作の『浮世千』がプサン映画祭で上演され、2018年には短編の『延辺少年』が、2021年『永安鎮故事集』がカンヌ映画祭で上演されるなど、注目を集めている若手監督。3作目となる本作も今年のカンヌ映画祭ある視点部門で上演された。

『川辺の過ち』は1988年に発表された余華の中編小説が原作。
舞台は1990年代の中国の田舎町。川辺で老婦人の遺体が発見され、捜査チームの長を任された馬哲(朱一龍)は、すぐに容疑者を逮捕。警察上層部は喜んでこの容疑者を殺人者と認定し、事件を解決済みとする。しかし新たな遺体が発見され、犯行現場で目撃された女性も見つかっていないことから、疑問を抱いた馬哲は捜査を続けていく…。

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2022年に中国のアカデミー賞と言われる金鶏賞主演男優賞を『人生大事』で受賞したトップスター、朱一龍を主演に据えた推理サスペンス映画かと思いきや、中国での上映では、鑑賞直後に多くの人から「誰が真犯人なのか、わからない!」という声があがり、論議を呼んだことでも注目された作品だ。
原作者の余華の小説は難解だと知られているそうなので、そのあたりについても監督の答えに注目したいとQ&Aを取材した。

登壇すると客席を見渡し「なぜ、まだマスクをしている人がいるの?」と不思議そうな表情を見せた魏監督。質問のためマイクを握った観客から中国語で「個人的な選択で、習慣になっている人もいるのだ」との答えをもらってからQ&Aに入った。

魏監督は、本作の撮影が順撮りで行われたことや16ミリフイルムでの撮影について質問が出ると、順撮りは監督自身も俳優・スタッフもじっくりと作品世界に入っていくことができ、1990年の時代感を感じてもらうために16ミリフィルムで撮影したと明かした。
朱一龍を主演に起用した理由については「中国映画では刑事ものが多くなり、差別化を図りたかった」「内面から演じて欲しかったから」という2点を挙げ、撮影の2か月前にチームに合流し、衣裳を着て町を歩き、警察を訪ねるなど研究を重ねた朱一龍の演技を絶賛した。

難解な原作の映画化が実現したことについては「映画化では原作小説を翻訳するものではなく、小説にインスパイアされて作り上げることが重要」と述べ、「実は自分も原作小説を読んで、初めは難解でよくわからなかった。そこに想像力を加え膨らませて映画にすることに力点を置いた。今も完全に理解したというわけではない」という答えをくれた。

Q&Aでは触れられることはなかったが、中国公開時の本作のポスターには“没有答案,不如发疯”。(「没有答案、不如発瘋」答えがないなら、狂ったほうがいい)というキャッチコピーがあったそうだ。
そのあたりも、真犯人について、本作の考察の一助になるのかもしれない。

第24回 東京フィルメックス
TOKYO FILMex 2023
2023年11月19日(日)~11月26日(日)
公式HP : https://filmex.jp/