映画『徒花-ADABANA-』の完成披露上映会が、10月3日、東京・テアトル新宿にてお行われ、キャストの井浦新、水原希子、三浦透子、斉藤由貴、永瀬正敏と、甲斐さやか監督が舞台挨拶に登壇した。
日仏合作で制作された本作は、映画『赤い雪 Red Snow』(19)長編映画デビューを果たし、同作で第14回 JAJFF(LOS Angeles Japan Film Festival)で最優秀作品賞を受賞した甲斐さやか監督の最新作。ウイルスの蔓延で人口が激減し、病にむしばまれた上層階級の人間だけにもう一つの身体「それ」の保有が許されるという世の中で、自分の「それ」と対面した男の葛藤を描き出す。死が身近に迫る主人公・新次を井浦新が演じ、臨床心理士・まほろを水原希子のほか、三浦透子、斉藤由貴、永瀬正敏ら実力派俳優が集結した。
タイトルの『徒花(あだばな)』とは、「無駄な花」を意味するが、そこに込められた美学と生命の価値、今ここにある「怖さ」を突きつける。フランスの国立映画映像センターが行う助成制度「CNC」の対象作品となっており、第37回東京国際映画祭の新設部門のウィメンズエンパワーメント部門への出品も決定した、甲斐監督が20年以上かけ構想し、書き上げたオリジナル作品である。
井浦は「通いなれたテアトル新宿で、この作品で監督、共演者の皆さんと、(舞台側から)いつもと全然違う景色を見せていただいてありがたく思います」と、感無量の面持ちで満席の会場を見渡し、水原も「私自身が観たいと思う作品に出られてとても嬉しいです」と出演を喜んだ。
新次の過去の記憶に登場する、海辺で知り合った謎の“海の女”を演じた三浦は、海での撮影が多く、季節も秋。「ちょうど今ごろの季節でしたが、寒かったです。でも皆さんに『大丈夫?』とケアをしてもらって。楽しい撮影でした」と周囲の気遣いに感謝する。
新次の幼い頃の母親を演じた斉藤は「最初にディレクターズステートメントというものを拝読しまして。扱っているテーマは難しい部分もあるけれど、甲斐監督が作りあげる映画の行間の空気感みたいなものを、皆さんに感じていただきたいと思いました」と印象を語り、「私はとても毒々しい役を演じておりますが、とてもやりがいのある挑戦でした」と満足気。
新次の主治医を演じた永瀬は「この映画の完成作品を観たときに、もうすぐに次回作が観たいと思いましたね。甲斐監督の心の中の思いを皆さんに届けたいと思いました」と、甲斐監督の世界観に魅了されていた。
今回、一人二役に初挑戦した井浦は「もう具合が悪くなりました」と振り返りつつも、「これまでの一人二役の経験がなかったので、これは絶対にやりがいしかない!と思いました」と意気込んで臨んだという。甲斐監督の『赤い雪 Red Snow』(2019年)にも出演しており、「甲斐監督の作品に没入するのは、俳優として凄く幸せを感じるんです。どれだけ苦しくて、痛くても、それが全て喜びへと変わっていく。それを一度経験しているので、またこの作品でも無茶苦茶やらせてもらえるんだ・・・と嬉しさと不安が同時にありました」と意気揚々に語った。
監督は「井浦さんからも色々なヒントをいただきましたので、それを絶対に形にしようと思いました。それぞれの見どころがたくさんあります。俳優の力って本当に凄い」と現場での俳優たちの力と熱量に圧倒されていた様子。「とても素敵なキャストの方々が魂を削って、そこに存在してくださったことに本当に感謝しますし、お芝居が本当に素晴らしいです」と感動しきり。
水原も役作りのため、実際に臨床心理士にインタビューをして臨んだそうで、「臨床心理士の方の、(患者さんとの)距離感が絶妙で。どこまで受け止めて、寄り添って、その上で仕事としてまっとうするという・・・とんでもなく大変なお仕事」と、役への思いを深めた。
井浦とは初共演となる水原だが、井浦の印象を「天使です!」と笑顔をこぼす。「自分が不安そうにしていると、『大丈夫、大丈夫だよ』と声をかけてくださって」と井浦の優しさに絆され、「皆さんに支えられて演じることができました」と述懐していた。
井浦は水原を「希子さんは本当にまじめです。自分の出番がないときでも常に現場から離れず、寄り添って、最大限に楽しみながら、苦悩している姿がとても素晴らしかったですね。本当にまじめに役にしっかり向き合う方です」と絶賛。
一方で、本作のオフィシャルカメラマンも務めた永瀬。「撮影の合間にも色々なところをカメラに収められて幸せでした」と嬉しそう。監督が「朝からオ黒子に徹していらして。オーラを消して現場にいるので、永瀬さんが(カメラマンを)やっていることを知らないスタッフが普通に永瀬さんに指示出してましたよね(笑)。三浦さんの海のシーンでも凄くいいショットを撮っていただきました」とねぎらう。
井浦も「永瀬さんが甲斐組の守り神のようでした」と言い、「ポスタービジュアルやチラシだけじゃなくて、SNSで発信している写真全てが永瀬さんの写真なんですよ!本当に素晴らしい。素敵な写真が見られますよ」とお勧め。永瀬は恐縮しながらも、監督に「次もカメラマンとして呼んでください(笑)」とアピールしていた。
本作のタイトルについて、監督は「“徒花”は“無駄な花”と言う意味もありますが、私は人間の存在を描いているような作品にしたかったんです」と述べ、「忙しい日々の中で自分を見失ってしまうような現代に生きているかもしれませんが、ちょっと立ち止まってそこに空虚だけでなく希望のようなものを作品に託しました。何かを感じ取っていただいて、その思いを抱きとめていただけたら嬉しいです」と作品への思いを吐露。
最後に、井浦が「甲斐監督の私たちへの問いかけは、本当に鋭い目には見えないくらいの刃で突き刺してくるような衝撃がありますが、その痛みを越えた先には作品を観た人の数だけ素敵なものが待っていると思います。観れば観るほど楽しくなっていく作品です」とメッセージを送る。監督は「構想から長い年月が経って、ようやくこの作品をできあがりましたが、この(キャストの)方々でなければ全く違う映画になったと思いますし、いま撮れて本当に良かったなと思っています。この方々の感性というものを掛け合わせての『徒花』だったと思います」と、自身の思いと役者たちの化学反応に自信をのぞかせていた。
映画『徒花-ADABANA-』
井浦 新 水原希子
三浦透子 甲田益也子 板谷由夏 原日出子/斉藤由貴 永瀬正敏
脚本・監督:甲斐さやか
制作プロダクション:ROBOT DISSIDENZ
配給・宣伝:NAKACHIKA PICTURES Ⓒ2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 / DISSIDENZ
映画公式HP: https://adabana-movie.jp
映画公式X・Instagram @adabana_movie
10月18日(金)テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテ 他 全国順次公開!