映画『愛のまなざしを』の公開記念舞台挨拶が、11月13日、東京・渋谷のユーロスペースにて行われ、主演の仲村トオルをはじめ、共演の杉野希妃、斎藤工、中村ゆり、藤原大祐と、万田邦敏監督が登壇した。
妻を亡くし、二度と誰も愛せないと思いつめて苦しむ精神科医と、突然彼の前に現れた、誰からも愛されない孤独な女が、日常を捨て激しく求めあう様を描く、「愛」の本質を見つめ、人間の性とエゴをあぶりだした愛憎サスペンス。
鬼才・万田邦敏監督が、カンヌ国際映画祭にてW受賞した『UNloved』、比類なき傑作『接吻』に続き、共同脚本・万田珠実と三度目のタッグを組んだ。精神科医・貴志役を仲村トオル、貴志が溺れていく女・綾子役を杉野希妃が務め、貴志の亡き妻を中村ゆり、貴志の義弟・茂を斎藤工、貴志の息子・祐樹を藤原大祐が演じる。その他、片桐はいり、ベンガル、森口瑤子など、ベテランが脇を固めている。
コロナ禍の影響で撮影から2年の月日を経て公開となった本作。万田監督は、「ここに今映ったもの全てを撮りたいな、伝えたいなと思って作りました。これらを持ち帰り色々思い出したときに(この映画が)面白かったんじゃないか?と思っていただければ嬉しいです」と思いの丈を吐露。
仲村のキャスティングについて、「仲村さんとは、『UNloved』の時にお会いして、カッコいい人だなと思って、その後『接吻』とゲスト出演の『ありがとう』という映画に出演していただきましたが、信頼関係というか、お互いのことをなんとなく『こんな人かな、本当は?』『案外こんなところがある。』と、思い合えたのかな。映画を作る機会があれば、絶対仲村さんに出ていただきたいと思っていました」と語る監督。
監督からのオファーを快諾したという仲村は「初めて『UNloved』という映画に出演した時、僕にとっては革命的な出来事でした。”表に現れるものこそが表現である”という、自分の意思とか正義とかを極力排除した結果、今まで見たこともない世界にいる、初めて見た自分というのがとても嬉しい経験だったので、今回も何の迷いもありませんでした」と監督の魅力話し、相思相愛の関係に。
万田監督の演出について、仲村は自身のことを”操り人形”話す。「僕が20代の頃は、今の藤原くんよりずっと生意気で(笑)、演出家やディレクターの方に対して、『俺は操り人形じゃねぇよ』というような意識を持っていたと思うんですけれど、自分の心と脳みそだけで体を動かして演技していると、できる範囲が限られてきて行き詰まりみたいなものを感じ始めてきて。そのタイミングで万田監督と出会うことができました。人に操られる、人に言われた通りに肉体を操ってみるということがとても新鮮でしたし、それまでの限界・壁の外側に出られたという感じがしました」と万田監督との出会いに感謝。
一方、杉野はクランクアップ後も綾子が抜けなかったという。杉野は、「綾子の言動はここまでストレートな人いるのかなと思うほどで、自分も共感しにくく、綾子を愛せなくて演じた後も嫌だという感じが抜けなかった。しかし、コロナ禍を経て、綾子の切実さというか、何がなんでも愛をもらいたい、認められたい、好きになって欲しいという感情って、彼女にとっては生きる術だった、それがないと生きていけなかったのかなと思って、(撮影してから)この2年で少しずつ消化していった気がします」と強烈なキャラクターと向き合った様子。
そんな杉野を、中村は「あんなに熱烈に人に『愛して欲しい』と表現できる綾子が少し羨ましくも思えました」と述べ、自身の役どころを「旦那さんが見ている幻覚のようでもあり、何をヒントにやればいいのかと考えましたが、監督にはプランがあるので、監督の言うことを聞いて動きました。旦那さんが思っている彼女と本当の生前の彼女はすごく違うんではないかと想像しました」と貴志の前に現れる幻想の薫役への思いを語った。
夫婦役を演じた仲村については「綾子にも、繊細に触れる方だと思いました。また『僕は共演する方のことを事前にWikipediaで調べる』と教えてくださって。何て細やかな気遣いをされる方なんだろうと思いました。私もそれから真似して必ずWikipediaを見てから新しい方とお仕事をするようにしています」とエピソードを話し、会場を沸かせる。
また、本作がデビュー作で、この日が初の舞台挨拶となった藤原は、「僕のことをWikipediaで調べても出てこなかったと思いますが・・・」と話し、会場の笑いを誘いつつ「初めてのオーディションで掴み取った役で初めて芝居でした。2年前からだいぶ大きくなったんではないでしょうか?(笑)」とニッコリ。当時、仲村は藤原のサインをもらったそうで、「将来価値が出ると思って」と、その理由を語り、藤原の活動に期待する。
今作に特別な思いを持つ斎藤は、「小学2年の時、生まれて初めてカメラの前に立ったのが、実は万田さんの作品でした。色々な思いが詰まって、今ここに立たせていただいています。その経験が自分の細胞の中で血となり肉となり、現在に至るのかなと思っています。普段の自分のリズムとは全く違う不思議な体験でした」と万田組の参加を喜び、「最近の作品には分かりやすく消化にいいものを作りすぎていて、何も引っかからない離乳食のようなものが増えているような気がしています。僕は劇場で何かひっかかる、消化できない、違和感みたいなものを持ち帰る帰り道が、一番豊かな映画体験だと思います。この作品を観た時に歩いて帰りたくなり、豊かな経験できました」と自身の経験から持論を展開した。
仲村と斎藤とは以前から特別な縁があったそうで「デビュー当時に仲村さんの幼少期を演じさせていただき、その時万田監督のお名前を出してご挨拶しました。『UNloved』が公開して数年後で、そのタイミングで万田さんにお会いする機会がありました。その後、監督との出会いを経てやっと4部作目で今に至ります」と回顧した。
最後に仲村が「こんなに一人一人の方に『どうでしたか?』と聞きたくなる映画は滅多にない。すぐには理解に至らないかもしれませんが、SNSをやっている方は、僕らへの手紙を書くように書いていただけたら、検索して読ませていただきます」とメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。
仲村トオル 杉野希妃 斎藤工 中村ゆり 藤原大祐
万田祐介 松林うらら
ベンガル 森口瑤子 片桐はいり
監督:万田邦敏 プロデューサー:杉野希妃 飯田雅裕
エグゼクティブプロデューサー:市橋浩治 五老剛 小野光輔 佐藤央 有馬一昭 長嶋貴之
コエグゼクティブプロデューサー:阿部毅 小金澤剛康 コプロデューサー:阿部正彦 アソシエイトプロデューサー :小川貴弘 江守徹 高藤丈也 富澤豊
脚本:万田珠実 万田邦敏
企画・制作協力:和エンタテインメント
制作:キリシマ1945
配給:イオンエンターテイメント 朝日新聞社 和エンタテインメント
製作:「愛のまなざしを」製作委員会(ENBUゼミナール 朝日新聞社 和エンタテインメント ワンダーストラック イオンエンターテイメント はやぶさキャピタル)
公式HP:http://aimana-movie.com/
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渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、キネカ大森、イオンシネマ他にて公開中!