トライベッカ映画祭国際コンペティション部門審査員特別賞
グアナファト国際映画祭長編部門最優秀作品賞
映画『アイヌモシㇼ』の初日舞台挨拶が、10月17日に行われ、この日のために北海道キャストの下倉幹人、秋辺デボ、下倉絵美が上京し、福永壮志監督とともに登壇した。
<舞台挨拶レポート>
映画の上映終わり行われた本舞台挨拶。初日の初回お客さんと共に、映画を観た秋辺デボさんは「去年試写会で観たときは、あの時はああだった、こうだったと苦労話ばかり出たりして、なかなか映画として観ることができなかったんですけど。いい映画でしたね、監督!」と公開に対しての喜びの一言があった。また、出演者の方々と共にこの初日を迎えたことに対して福永監督から「本当に感無量。ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。
また映画を作るきっかけで福永監督は「僕は北海道出身でアイヌに興味はあったんですが、あまり分からないまま思春期を過ごしていて。アメリカに渡ってからネイティブアメリカンの捉えられ方、意識の差とかを目の当たりにしてその時に自分の育った北海道にもアイヌがいたのに全然知らないでいたっていうことにハッとして、恥ずかしさがあり。そこから映画を撮りたいなというと思いました」と話した。またMCから映画をつくると決まっていち早くデボさんにコンタクトをとった時の印象を聞かれるとデボさんは「初めて会ったときは暗くて不景気な顔をした男だな、て思ったけど熱心でついつい乗せられて、最後出るって話になって、、」と監督の誠実さについても語った。
幹人さんの魅力について聞かれると監督からは「幹人くんのすごいところはたくさんありますけど、演技初挑戦なんだけどもともと性格がとても素直で魅力的。普通カメラ向けられたら緊張したり自然じゃなくなったりあると思うんですけど、それを自然にできる。それが本当にすごいと思いました」。監督にそう言われると、幹人さんは恥ずかしそうに「緊張はしますよ」と照れた表情で答えた。 また、実際に息子が映画に出て演技をしているということに絵美さんは「スタッフの方々がフレンドリーに接してくれたからリラックスしてできたのかな、と思いました」と現場の和やかな雰囲気について話し、また、劇中でも演奏している“ムックリ”(アイヌの楽器、笛に近い)の演奏も披露した。
また最後の挨拶で下倉幹人さんは「アイヌは自分のルーツとしてあるけど普段から考えているわけじゃないんですよね。だからそれをいざ撮影するよってなった時にその中で自分も改めて考えるようになった。どんな人でももともと自分はなんなのかってあると思うんですけどそれをずっと考えているわけじゃない。だからこそ映像にしてくれたことで観てもらえるし、観て欲しいなって思います」。
デボさんは「もちろん脚本があってセリフがあって撮影進めたんですが、描かれているものはリアルな、ごく等身大のいまの阿寒のアイヌ の様子。自分でみていてもそのままだなって思いました。アイヌのこと語る時、すぐ差別だの文化だのと言うけど、そういうものは生活の中に織り交ぜられながら普段生活している。そういうのが映像にも映っているのは監督の力量。ひきだされてよかったな、と。この映画に関われて本当に幸せだと思いました。皆さんぜひこの映画を愛してください」。
また絵美さんからは「阿寒湖で普段暮らしている母親なので、女性の目線から見ても子どもを育てるというのは葛藤したり、悩んだりするんですけどどんな人だって悩んだりね。幹人だけじゃなくて、阿寒湖の子たちも(映画撮影時の)2年前はもっと本当ちっちゃくてその成長だとかを見るだけで涙が出ちゃう。いろんな方々が出てくるのでいろんな人と重ねて見ていただけたらと思います 」。
最後福永監督からは「皆さんの言葉を聞いているだけで感極まってしまうんですけど、作りたいって言い出してから途中難しいんじゃないかとかいろいろありながらも完成したんですけど、本当に皆さんの思いとか考えとかえ間としての魅力が入ってこの作品になったので、アイヌを題材としてはいますけど本当に人間、一人一人を描こうとして作った作品なので皆さん自分と重ねて見てくれたら嬉しいです」とそれぞれが初日を迎えたことに対しての思いを語った。
そして舞台挨拶最後、一昨日の10月15日に16歳の誕生日を迎えた幹人さんに福永監督、そしてキャストスタッフからバルーンブーケのプレゼントが。受け取った幹人さんは照れつつも「イヤイライケレ〜」とアイヌの言葉で感謝を述べつつ「すでに最高です!これは忘れられない」と喜びの言葉、そして監督と幹人で感謝のハグで舞台挨拶は終わった。
[ストーリー]
14歳のカントは、アイヌ民芸品店を営む母親のエミと北海道阿寒湖畔のアイヌコタンで暮らしていた。アイヌ文化に触れながら育ってきたカントだったが、一年前の父親の死をきっかけにアイヌの活動に参加しなくなる。 アイヌ文化と距離を置く一方で、カントは友人達と始めたバンドの練習に没頭し、翌年の中学校卒業後は高校進学のため故郷を離れることを予定していた。
亡き父親の友人で、アイヌコタンの中心的存在であるデボは、カントを自給自足のキャンプに連れて行き、自然の中で育まれたアイヌの精神や文化について教えこもうとする。
少しずつ理解を示すカントを見て喜ぶデボは、密かに育てていた子熊の世話をカントに任せる。世話をするうちに子熊への愛着を深めていくカント。しかし、デボは長年行われていない熊送りの儀式、イオマンテの復活のために子熊を飼育していた。
下倉幹人 秋辺デボ 下倉絵美 / 三浦透子 リリー・フランキー
監督・脚本:福永壮志
プロデューサー:エリック・ニアリ 三宅はるえ
撮影監督:ショーン・プライス・ウィリアムズ
音楽:クラリス・ジェンセン / OKI
編集:出口景子 福永壮志 録音:西山徹 整音:トム・ポール
製作:シネリック・クリエイティブ、ブースタープロジェクト
配給・宣伝:太秦
2020年/日本・アメリカ・中国/84分/カラー/ビスタ/5.1ch
公式サイト:http://ainumosir-movie.jp/
(C)AINU MOSIR LLC/Booster Project
ユーロスペースほか全国順次公開中