お笑い芸人シソンヌ・じろうによる、40代独身女性・川嶋佳子が日記に綴った517日の日常を描いた同名小説を実写映画化。『勝手にふるえてろ』『美人が婚活してみたら』などで知られる大九明子が監督を務め、主人公の川嶋佳子役を松雪泰子、佳子の可愛い後輩・若林ちゃん役を黒木華、佳子が恋に落ちる年下の青年・岡本くん役を清水尋也が扮する。
ちょっぴり後ろ向きだけどポジティブな佳子の言葉は、女性が共感するものばかり。そんな佳子の生活に大きな変化をもたらす岡本くんを演じた清水さんに話を聞かせてもらった。
― これまで清水さんが演じられてきた役とは少し違うイメージかもしれませんが、オファーを受けられていかがでしたか?
僕は基本的にやったことないことは全部やってみたいと思うので、どんな役でも声をかけていただけるだけで嬉しいです。確かに僕のイメージとして定着している感じの役とは少し違いますが、面白そうだなと思いました。色んな役を演じて、観る人を振り回して「あの作品とあの作品は同じ人だったんだ・・・」と言われるほど役者として嬉しいことはないですね。そういった意味でも、また違うタイプの役をやらせていただけることは純粋に嬉しいです。
― 最初に本作の台本を読まれた感想は?
じろうさんの目の付けどころが凄いです。芸人さんはコントなどで僕たち俳優と同じように自分じゃない人間を演じることがあると思います。誰をモデルにしているかわかりませんが、人間を見る観察眼がとても繊細で独特だなと思ったのが第一印象でした。
それを映画化することで多少のアレンジが入ってきて、台本を読んで僕もほっこりしました。例えば分かりやすく何か事件が起きて対抗する存在がいて、それに対してどうする・・・という話ではなく、ただひたすら佳子さんの毎日が進んでいくわけです。そこにちょっとした憂いだったり、生きているだけでふとした寂しさがあったりする。それが誰かのちょっとした一言で全部救われることもあると思うんです。そんな人間の日常に潜んでいる色んな感情が感じられましたね。僕は刺激のある映画も好きですが、ただひたすらボーッと観ているだけで「ああ良かったなー」と思える映画も好きです。完成した映像を早く観たいと思う作品でした。
― 女性のお話なのに、男性のじろうさんが作られたというのも興味深いですね。
本当にすごいなと思いました。
― 清水さんはこれまで学生役を多く演じられてきましたが、今回はスーツを着た社会人役です。ご自身の年齢より上の役を演じることに抵抗はありませんでしたか?
僕は中学生時代から高校生役を演じることもありましたが、それは同じ学生役なのでそれほど抵抗はなかったです。でも今回は会社員で、撮影時は19歳でした。高校を卒業して1年も経っていないのに、いきなり大学を卒業した社会人の役だったので、新鮮な感覚でした。
― 社会人の役も全然違和感ないですし、逆にとてもフレッシュな感じがしました。
役作りだったりアプローチの仕方はいつもと一緒なので、役のキャラクターや年齢は関係なく、どんな役でも難しいものは難しいし、演じていくことは変わりません。でも、ビジネススーツをビシッと着た会社員役は初めて。松雪さんとも初めてご一緒させていただいて毎日刺激をもらっていました。
― そんな名女優と言われる松雪泰子さん、黒木華さんとの共演はいかがでしたか?
最初にマネージャーさんから「松雪泰子さん演じる佳子さんとの恋があったり…」と聞いて、「え?ちょっと待って、聞き間違いですか?」と返したくらいビックリしました(笑)。
その時は原作もストーリーも知らなかったので、単純に驚いたのですが、内容が分かって納得できました。松雪さんは僕がこのお仕事を始める前からテレビなどで観ていた方ですから、まさか共演できるなんて…、と。そんな方とお芝居させてもらえて本当に光栄でした。
そして、やっぱりやるからには作品を観てくださる皆さんはもちろん、主演の松雪さんをはじめ、キャスト・スタッフの皆さんにも、満足していただけるようなお芝居をしないといけないというプレッシャーもありました。あとはこの撮影を通して、何か一つでも成長できるように、大先輩の胸を借りる思いで一生懸命やっていこうという思いで臨みました。
― 共演は刺激になりました?
はい、とても刺激になりました。基本的に普段からあまり緊張しないタイプなのですが、松雪さんが現場の雰囲気を明るくしてくださったこともあり、最初から割と楽しくフラットにお芝居ができました。松雪さんとのシーンが多く日々勉強させてもらっていました。
― 黒木さんとのやりとりもコミカルで面白いです。お蕎麦屋さんでのやり取りはとても自然ですが、監督から指示が出ていたのですか?
監督もとてもユーモアのある方で、(演出に)テンポ感があるんです。黒木さんが最初からけっこう突っ込んできてくださったので、それから自然な流れでやりとりしていました。台本には最初のセリフが少しだけ書いてあって、そのあとは全部アドリブでした。
― 大九組の現場はいかがでしたか?
楽しかったです。大九監督は「こうすると面白いかもしれませんね」と提案してくださるし、撮影の外でも気さくに色々話をしてくださるので気持ちよく撮影ができました。もちろん監督は皆さんがそうだと思いますが、大九監督はちゃんと僕のお芝居を見ていてくださっているのが伝わってきて嬉しかったですし安心感もありました。だからより一層、より良い作品を作り上げようという意識が強くなりました。
― 現場の雰囲気がそのまま映像に映し出されているんですね。
みんな、毎日ほっこりと穏やかに楽しく撮影していましたね。裏で何か事件が起きていたかは知りませんが、僕は楽しくやっていましたよ・・・(笑)
(と、ジョークを飛ばす清水さん。撮影では何も事件は起きてないそうです(笑))
― 3人のドライブのシーンもとても楽しそうです。運転は実際に清水さんがされているんですか?
僕が運転しています。僕は何かあったらヤバイぞ!としか考えていませんでしたね。だって、“松雪さんと黒木さんの命を背負ってる”ってことが頭から離れなかったから。必死にそれを押し殺して演技していました(笑)。
― 岡本くんは佳子さんとお付き合いすることになりますが、清水さんご自身はふた回り上の女性との恋はどう感じますか?
恋愛対象について年齢や国籍など、生まれた時点で確定しているものにこだわりはないです。だから、演じる上でも自然と恋愛感情を抱くこともできたと思います。
― 演じる上でこだわったことは?
演じるときはいつも楽しくやることを考えていますし、あとは現場で共演者の方との空気感が自然に出来てくるので、あまり前もって決め込んで臨むことはないです。ただ、今作は佳子さんの人生を追っていくストーリーなので、少しでも佳子さんの人生に彩りを与えられればいいなという思いで岡本くんを演じました。
― タイトルにも“お酒”という言葉が入っていて、劇中でも佳子さんがとても美味しそうに召し上がっています。清水さんはお酒を飲まれますか?
お酒が飲める年齢ですが、あまり飲まないんですよ。「凄い飲みそうだね、お酒好きそうだね」ってよく言われて、「酒癖悪そう」なんて言われることもあるんですが(笑)、実はめちゃくちゃ弱いんです。母親が弱いので遺伝だと思いますが、一杯飲んだら顔が真っ赤になっちゃう。御飯を食べているときにちょっと一杯とか、家で一人で飲むようなことはないです。最近、兄と外で会う機会があって食事をしたときに少し飲みましたが、それも初めてのことです。兄はお酒が強いんですけどね。でも、僕はお酒を飲まなくても凄く楽しめるタイプです (笑)。
― どんな役を演じても唯一無二の存在感を放つ清水さんですが、将来どういう役者になりたいですか?
理想像というものはないんです。そのときそのときの自分の選択に全部委ねるべきだと思っています。ゴールを決めてしまうと自動的にそのプロセスが決まってしまい、それは面白くないので毎度毎度目の前にある選択からやりたいことを決める。さらにこの先魅力的な選択肢が増えるかもしれない。結果が出るかはそのとき次第でそれを受け入れるしかない。役者としてもそうですが、人として充実していたいですね。
そのためにはまずは、家族や友達といい環境を築いて、いかに自分の時間を楽しんで充実させるか。あとはどうにでもなると思っています。
― それでは、そのために絶対に譲れないこと、守っていることはありますか?
常に愛情を持っていようと思っています。例えば、物を書く、芝居をする、映画を撮るなど何をやるにしても、愛情を持って接しないと楽しめないし、家族・友達、お世話になっている方々、いつも一緒にお仕事しているスタッフさんたちにも愛情を持っていい関係性を築いていないといけない。ときには自分が感じたこと、納得がいかないことがあったらキチンと伝えて話し合わないといけないですし、そういう関係性がないとその先も充実していかないと思っています。
― ところで、もしご自身がデートするならどこに行きたいですか?
キャンプしたいです。2人きりもいいですが、もし共通で仲のいい友達がいたら、みんなでキャンプしたいですね。久しくキャンプしていないんですが、友達と「今年はキャンプしようよ」と話しているんです。男だけなんですけどね(笑)。
― いいですね。そこに彼女がいたらもっと楽しいでしょうね。
そうですね。そうなったらぜひ、書いてください(笑)。
― はい、報告をお待ちしていますね(笑)。
では最後に、これから本作をご覧になる皆さんへメッセージをお願いします。
主人公は40代独身で派遣社員の女性という設定で、目線で、物語が進んでいきますが、一人の人間という観点で観ると共感できる部分があると思います。この作品には普通にのんびり生きているだけで、自然に芽生えてくる感情みたいなものがたくさん散りばめられています。僕と同世代の人、もっと若い方も、誰が観ても心に残る部分はあると思うので、そういうところに注目して観ていただけるとより一層楽しんでいただけると思います。ぜひご覧ください。
【清水尋也(しみず・ひろや)プロフィール】
’99年生まれ、東京都出身。映画『渇き。』(’14)、『ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判』(’15)、などに出演し、注目を集める。現在『ホットギミック ガールミーツボーイ』がNetflixにて配信中。6/9にはファースト写真集『FLOATING』(ワニブックス)が発売された。
インタビュー撮影:ナカムラヨシノーブ
映画『甘いお酒でうがい』
<STORY>
これは私の日記。誰が読むわけでも、自分で読み返すわけでもない、ただの日記・・・
ベテラン派遣社員として働く40代独身OLの川嶋佳子は、毎日日記をつけていた。撤去された自転車との再会を喜んだり、変化を追い求めて逆方向の電車に乗ったり、踏切の向こう側に思いを馳せたり、亡き母の面影を追い求めたり・・・。そんな佳子の一番の幸せは会社の同僚である若林ちゃんと過ごす時間。そんな佳子に、ある変化が訪れる。それは、ふた回り年下の岡本くんとの恋の始まりだった・・・
出演:松雪泰子(川嶋佳子役)、黒木華(若林ちゃん役)、清水尋也(岡本くん役)ほか
監督:大九明子
脚本:じろう(シソンヌ)
原作:川嶋佳子(シソンヌじろう)『甘いお酒でうがい』(KADOKAWA 刊)
音楽:髙野正樹
製作:藤原寛 エグゼクティブプロデューサー:坂本直彦
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
制作:吉本興業、テレビ朝日
製作・配給:吉本興業
2019/カラー/日本/107 分/アメリカンビスタ/5.1ch
<公式ウェブサイト>https://amasake-ugai.official-movie.com
<公式Twitter>https://twitter.com/AmaiOsakeDeUgai
映倫区分:G
コピーライト:©2019 吉本興業
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