映画『あの日のオルガン』のプレミア上映会が、2月4日、東京・丸の内ピカデリーにて行われ、ダブル主演の戸田恵梨香、大原櫻子をはじめ、共演の佐久間由衣、三浦透子、堀田真由と、平松恵美子監督が舞台挨拶に登壇した。
本作は、太平洋戦争末期、日本で初めて保育園を疎開させることに挑んだ保母たちの実話。親元から遠く離れた荒れ寺で53人の園児らと疎開生活を始め、幾多の困難を乗り越えながら託された子どもたちの命を守り抜こうとする女性たちの奮闘を描く。保母たちのリーダー・板倉楓役を戸田、天真爛漫で音楽好きの保母・野々宮光枝役を大原が演じ、長年山田洋次監督との共同脚本、助監督を務めてきた平松恵美子がメガホンを取った。
自身がリーダーに見えるか心配していたという戸田だったが、「(共演の)みんなと歳が離れていないと思っていたら、みんな20代前半で・・・衝撃でした(笑)。年齢的に全然リーダーでした」と笑いを誘う。
また、役どころについて「楓は“怒りの乙女”と言われていますが、心の中にずっと持っている怒りをこれまで表現した経験がなかったので、苦戦しました」と苦労を語るも、「でも、子供たちが元気をくれて凄く豊かな存在でした。(現場が)本物の保育園みたいでした」とニッコリ。
“みっちゃん先生”と慕われていた大原は「童顔の顔だし、年齢的にも保母さんに見える不安もありましたが、子供たちの目線に立って、日常の楽しいことを見つけていく役なので、撮影以外でも常に子供たちと遊んでいました。オルガンを弾いて、子供たちと歌ったりして」と振り返る。
オーディションで出演を果たした、光枝の親友・神田好子役の佐久間は「さくちゃん(大原)自身がしっかりしているので、逆に支えてもらっていました」と語り、「彼女とは年齢も近いし、撮影が終わった今でもランチに行ったりしています」と今でも親交が続いていることを明かした。
力持ちの先生・山岡正子役を演じた三浦は「とにかく声と力を出して、体を使って子供たちと触れ合っていました。本当の意味で映画の縁の下の力持ちになれたらいいと思って撮影に臨みました」と述べる。
堀之内初江役の堀田が「どうにか子供たちとコミュニケーションを取ろうとしていたんですが、『今泣きたいから話しかけないで!』って言われてしまって・・・」と告白。すると、平松監督がすかさず「やっちゃん?」と反応。戸田もヤスコ役の中島琴音ちゃんから「やっちゃんから『大女優になるにはどうすればいいですか?』と聞かれ、『私は大女優じゃないからわからないわ』と答えました」と笑い、大原は「寒いのにずっと衣装でいるので『暖かくしな?』って声を掛けたら『いいの。女優は寒いときでもちゃんとこの格好で歩くの』って言ってました」と明かす。続けて「『素直にやったら泣けた』って言ってましたよ、やっちゃん」と戸田。すでに大女優ぶりを発揮する“やっちゃん”に話題が集中。
撮影では、4~6歳の子役が何十人もいる現場。平松監督は「皆さんは保母役ですから子どもたちの面倒を見ましょう」と保母役の大人たちに声をかけたそうだが、戸田は「私はやってません。その言葉を聞いてなかったし(笑)」と言い、「担当の子どもがいなかったし、リーダーはみんなを俯瞰(ふかん)して見る立場だったので」と説明。
子役たちが騒いでいつまでもまとまらなかったときがあったそうで、大原が「恵梨香さんが『うるさい!』と一言言ったら、一斉に静かになって(笑)」と戸田のリーダー力を明かす。関西出身の子役が多く戸田も関西出身ということもあり、実際には「うるさいねん!」と一喝したそう。その様子を再現した戸田は、「初めて怒りましたね」と苦笑いしていた。
イベントの終盤には、子役たちがサプライズで登場しキャストたちに花束を贈る場面も。久しぶりの再会に目尻を下げ喜ぶ大人キャストたち。そんな中、ヤスコ役の中島が「とっても会いたかったから嬉しいです!」と元気に挨拶すると、戸田は「感じていただけましたでしょうか。これが大女優です」と言い会場は大爆笑。
最後に戸田が「子役で演じた中には、現在も生きていらっしゃる方もいらっしゃいます。責任を持ってしっかり向き合い作りました。その体験を聞けるのは私たちが最後の世代かもしれない。実際の戦争がどのようなものだったのかを、伝えられる作品になっていると思います」と伝え、イベントを締めくくった。
【あらすじ】
東京も安全ではなくなっていた1944年。戸越保育所の主任保母・板倉楓は、園児たちを空襲から守るため、親元から遠く離れた疎開先を模索していた。別の保育所・愛育隣保館の主任保母の助けもあり、最初は子どもを手放すことに反発していた親たちも、なんとか子どもだけでも生き延びて欲しいという一心で、我が子を保母たちに託すことを決意。しかし、戸越保育所の所長がようやく見つけてきた先は古びた荒れ寺だった。
幼い子どもたちとの生活は問題が山積み。それでも保母たちは、地元の世話役の協力をえて、子どもたちと向き合い、みっちゃん先生はオルガンを奏で、みんなを勇気づけていた。戦争が終わる日を夢見て…。そんな願いをよそに、1945年3月10日、米軍の爆撃機が東京を来襲。やがて、疎開先にも徐々に戦争の影が迫っていた―
■出演:戸田恵梨香、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子、白石糸、奥村佳恵、林家正蔵、夏川結衣、田中直樹、橋爪功
■監督・脚本:平松恵美子
■原作:久保つぎこ『あの日のオルガン 疎開保育園物語』(朝日新聞出版)
■音楽:村松崇継
■主題歌:アン・サリー「満月の夕(2018ver.)」(ソングエクス・ジャズ)
■配給:マンシーズエンターテインメント
■コピーライト:(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会
■文部科学省特別選定作品(一般劇映画)
■オフィシャルサイト:http://anohi-organ.com
■オフィシャルツイッター/フェイスブック:@anohinoorugan #あの日のオルガン
2月22日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開