池松壮亮×チェ・ヒソ×オダギリジョー
オール韓国ロケ!韓国チームとタッグを組んだ、石井裕也監督最新作。
『アジアの天使』
池松壮亮×オダギリジョー×チェ・ヒソ
韓国初上映に感謝!韓国での撮影秘話、
家族の在り方について語る
全州(チョンジュ)映画祭Q&Aイベントレポート
『舟を編む』で日本アカデミー賞監督賞を最年少で受賞、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』でアジア・フィルム・アワード、アジア最優秀監督賞を受賞し、その他にも『生きちゃった』『茜色に焼かれる』など数々の名作を発表し続けている石井裕也監督の最新作『アジアの天使』が7月2日(金)よりテアトル新宿他全国ロードショーとなる。石井監督が、あらためて初心に返り、これまでの経験値に頼らずにオール韓国ロケで挑んだ意欲作。優しさと力強さが調和した人間ドラマであり、誰も見たことのない「アジアの家族映画」が完成した。
主人公のシングルファーザー、青木剛を演じたのは『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『町田くんの世界』『ぼくたちの家族』など、石井監督作品には欠かせない顔である池松壮亮。最愛の妻を失い絶望的な別れと向き合ったからこそ、言葉や文化を超えて人と人が分かり合おうとすることをあきらめないその姿は、この世界の豊かさを信じる力そのもののよう。剛が身を寄せる韓国在住の兄には、ギャラクシー賞月間賞も受賞した石井監督演出のTVドラマ「おかしの家」で主演をつとめたオダギリジョー。『悲夢』(09)、『マイウェイ 12,000キロの真実』(12)などへの出演歴があり韓国映画界との縁も深いオダギリが、剛とは対照的にいい加減に見えてどこか憎めない風来坊を体現している。元アイドルで売れない歌手のチェ・ソルは、『金子文子と朴烈』(17)で長編映画初主演を飾り、『Our Body』(18)で第23回釜山国際映画祭「今年の俳優賞」を受賞した実力派のチェ・ヒソが繊細に演じている。
全州国際映画祭Q&Aイベント開催!
韓国からはチェ・ヒソが、日本から池松壮亮、オダギリジョー、石井裕也監督がリモート登壇!
5月8日閉幕の全州映画祭(4月29日~5月8日)のCinemaFest部門に出品された『アジアの天使』が、5月1日に韓国で初上映され上映後の舞台挨拶に主演の池松壮亮、オダギリジョー、石井裕也監督がリモートにて登壇。また韓国の舞台上ではヒロインのチェ・ヒソが登壇すると池松、オダギリらは手をふり、久しぶりの再会を互いに喜んだ。韓国初上映ということもあり、観客からの質問が多く寄せられキャストたちは時間の許す限り応え続け、大いに盛り上がりイベントは終了した。
上映を終えた観客へひとこと言葉を求められた池松は「アニョハセヨ」と一言挨拶すると、続けて「韓国のお客さんに初めて観てもらえて嬉しいです、本来であれば韓国に行きたかったのですが、この状況下なのでなかなか韓国に行けず残念です。」とコメント、続いてオダギリは「映画祭自体を開催するのが大変な状況だと思いますが、お客さんもこういう状況の中、映画を観にきてくれて嬉しいです、映画祭を心から応援したいと思っています。」
映画祭の舞台上にいるチェ・ヒソからも「この映画が完成した当時(新型コロナウイルス蔓延初期)は映画祭などで直接お客さんに観せられると思っていなかったので、ぜひこの時間を楽しみたいです。」と舞台に立てた事を喜んでいた。
韓国、日本のキャストを起用して韓国で映画を撮ろうと思ったきっかけを聞かれた石井監督は「プロデューサーのパク・ジョンボムさんと2015年に釜山映画祭で出会って韓国は特別な国になりました、“彼と出会えた奇跡”を韓国で撮りたいと思っていました、それが数年越しに叶いました。」と企画の成り立ちのエピソードを披露。
オダギリは撮影中のエピソードや大変だったことを聞かれると「海外での撮影はもちろん大変なことだらけですが、日本のシステムを捨て、その国に合わせて0から戦っていかないといけないのが実は新鮮で心地いいんです。実際、韓国の俳優の皆さんとの撮影は楽しかったですし、夜お酒を飲みかわしながら友情を育んでいけたと思います。」と韓国での撮影時の思いを振り返った。
池松へは小説家である剛(つよし)に対して、もし劇中で小説を書き上げていたとしたら最後の言葉は何で締めくくったのか?という質問が及ぶと、オダギリ、石井監督からも「難しい―!」とガヤが飛ぶなか、池松は頭を抱えながらも「”天使に会った”」というのはどうでしょうか。」と返答、会場からは拍手が起こった。
チェ・ヒソ演じるソルが劇中よくサングラスをかけている意図に関して問われると「ソルはアイドルを目指しながらも失敗して、その悲しみやトラウマで傷ついた心を隠したくてサングラスをかけていたと思います。ソルは剛たち家族に出会って変わりはじめます、そのきっかけのシーンとして愛人関係にあった社長と喧嘩するシーンがあるんですけど、そこで吹っ切れて無名でもいい、このままの自分でいいと決心するのです。それ以降彼女は変わっていき、愛の表現を家族にもできるようになったと思います。あるシーンでも警察官に剛の息子・学に対して『家族ですか?』と尋ねられた時にもはっきり『家族です』と言うのです。家族ではないけど家族のような繋がりを確かに感じて出た言葉だと思います」とソルの劇中での感情の変化を丁寧に語った。
本作で出会う韓国と日本の2つの家族、家族とはどういうものかの質問に石井監督は「家族の価値観や固定概念を無くそうと思って作りました、どんな関係であってもいい、好きなものを食べて、お酒を飲むこと、それだけでいいと思っています。」と明かし、続けて池松も「家族、天使、言葉、価値観、あらゆるものが概念であり、いかに自分たちがそういうものに縛られているかと感じます。韓国ロケの最中、僕たちは、家族でもない、チング(友人)でもない、ゆるやかな生命共同体みないなものになれました。家族とは”自由な共同体である”と思います。この映画の家族はともに同じ物語を信じられた人たちだと思う。それが、この映画においての家族だったと思います。」と。
続いてオダギリは多くの家族が住むシェアハウスを引き合いに出し「例えばシェアハウスのような環境で育った子供にとって、血のつながりはなくても、彼らのことを大切な家族だと思うでしょう。いくら血が繋がっていても不幸な形はあるだろうし、血が繋がっていなくても幸せという事があるように、人と人との繋がりのほうが重要だと思います。血のつながりは関係ないんじゃないかなと思います。」と家族の在り方について持論を明かした。
最後に客席にいたチェ・ヒソ演じるソルの妹・ポム役のキム・イェウンも最後舞台に登壇するなどのサプライズも起こり、会場は温かい拍手で包まれました。
左:チェ・ヒソ 右:キム・イェウン
<ストーリー>
8歳のひとり息子の学(佐藤凌)を持つ小説家の青木剛(池松壮亮)は、病気で妻を亡くし、疎遠になっていた兄(オダギリジョー)が住むソウルへ渡った。ほとんど韓国語も話せない中、自由奔放な兄の言うがまま怪しい化粧品の輸入販売を手伝う羽目に。
元・人気アイドルのソル(チェ・ヒソ)は、自分の歌いたい歌を歌えずに悩んでいたが、若くして亡くなった父母の代わりに、末端労働者の兄・ジョンウ(キム・ミンジェ)と喘息持ちの妹・ポム(キム・イェウン)を養うため、所属事務所の社長と愛人関係を持ちながら細々と芸能活動を続けていた。
日本人3人と韓国人3人。ソウルから江原道(カンウォンド)へと走る列車で巡り会った二つの家族は、
一台のおんぼろトラックに乗って、それぞれの行き先を目指す……。
しかし、その時彼らはまだ知らない。
国籍の違う二つの家族が寄り添う時、ある“奇跡”を目の当たりにすることを・・・。
出演:池松壮亮、チェ・ヒソ、オダギリジョー、キム・ミンジェ キム・イェウン 佐藤凌
脚本・監督:石井裕也
エグゼクティブプロデューサー:飯田雅裕 プ
ロデューサー:永井拓郎、パク・ジョンボム、オ・ジユン
撮影監督:キム・ジョンソン
音楽:パク・イニョン
制作プロダクション:RIKIプロジェクト、SECONDWIND FILM
製作:『アジアの天使』フィルムパートナーズ
配給・宣伝:クロックワークス
公式サイト:http://asia-tenshi.jp/
7月2日(金)テアトル新宿ほか全国公開