映画『ばるぼら』の製作発表会見が、11月20日、東京・帝国ホテルにて行われ、主演の稲垣吾郎、二階堂ふみ、手塚眞監督が登壇した。
生誕90年を迎えた漫画家・手塚治虫の禁断のアダルト漫画と言われる「ばるぼら」を、手塚治虫の実子であり、国際的に活躍する手塚眞監督の手で実写映画化。異常性欲に悩まされる売れっ子耽美派小説家・美倉洋介が、新宿駅の片隅で見つけた自堕落なフーテン女・ばるぼらと出会い、奇妙な世界を体験していく様を描く。撮影監督をウォン・カーウァイ作品等の映像美で知られる鬼才・クリストファー・ドイルが務め、日本・ドイツ・イギリスの共同で製作された。
数ある手塚作品の中で、この「ばるぼら」を映画化することについて、手塚監督は「私はいけない子供でして、幼い頃から『ばるぼら』を読んでいました。非常に思い入れがあり、今まで自分が監督として表現してきたことと、父親の作品との接点が感じられたので、自分がやれる作品だと思いました」と語る。
また、『七色いんこ』原作の舞台経験がある稲垣は、「手塚治虫マンガには子供の頃から親しんできて、僕は手塚作品で育ってきたようなものなので光栄でした。自分にとって新しい挑戦だったし、今のこのタイミングじゃなきゃ演じられないかもしれないと考えました」と言い、「愛がむき出しになった僕を楽しんでいただけるんじゃないかと思います」と自信をのぞかせた。
一方の二階堂は、「父が手塚作品のファンで、『鉄腕アトム』や『火の鳥』が家にありました。『アトム』はポップでワクワクして読んだ作品だったけれど、『火の鳥』や『ばるぼら』を読むと、難しいというか怖くなる感覚があって、どちらが本当の手塚先生なのか・・・その謎を知りたいと思いました」と出演の動機を吐露。続けて「現場ではスタッフの方と、『ばるぼら』は『黒い部分の手塚先生だよね』みたいに話しながら、みんなで考え、答えを探しているような感覚でした」と振り返る。
撮影現場は日本語、英語、中国語が飛び交い「日本なのに、まるで海外にいるようだった」と語る手塚監督。稲垣は「ドリルさんのファンだったので光栄でした。監督とクリスさんが作る少し退廃的な世界観が美しく、本当に現実だったのかなと思うくらい、ふわふわとした時間で夢のようでした」と微笑んだ。二階堂も「すごく刺激的な現場でした。言葉ではなく、アートというのは言葉でつながっているのではなく、感覚で共有しているものなんだということを改めて感じました」と回想する。
今作で初共演を果たした稲垣と二階堂。お互いの印象を、稲垣は「現場では本当に“ばるぼら”でしたから、今日なんかびっくりするほど二階堂さんで(笑)」と、役がらとは違う素の二階堂に驚いた様子。「存在しているようで存在していないような、本当に夢だったのかなと思わせてくれるような、撮影が終わるともう“ばるぼら”に会えなくなっちゃうのかなと寂しくなってしまいました」と明かし、二階堂は「物心ついていたときからずっと、テレビで拝見させていただいた方。でも、現場でお会いするとまた感じが全然違って私も不思議でした」とコメント。さらに「文学を感じる方で、初めて難しい本を手に取ったときのような感覚の方でした。自分の未熟さを思い知らされて、とても勉強になりましたし、お芝居をしていくうちに自分の中に眠っている“ばるぼら”を呼び起こされるようでした」と述べていた。
最後に手塚監督は「決して口当たりのいい作品ではないかもしれないですし、最初は『この味はなんだろう』と思うかもしれませんが、よく味わえば皆さんを夢の世界に連れていくことができると思います」とメッセージを伝え、会見を締めくくった。
『ばるぼら』予告編
映画『ばるぼら』
監督:手塚眞
撮影監督:クリストファー・ドイル
日本・ドイツ・イギリス共同製作
出演:稲垣吾郎、二階堂ふみ
渋川清彦、石橋静河、大谷亮介、渡辺えり、美波、片山萌美、ISSAY
©2019 Barbara Film Committee
2019年 全国公開