第28回東京国際映画祭の「パノラマ部門」にて公開の映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』の記者発表会が10月24日、東京・六本木アカデミーヒルズにて行われ、監督のキャリー・ジョージ・フクナガと、Netflix.K.K.代表取締役社長のグレッグ・ピーターズ氏が登壇した。
ナイジェリア人作家ウゾディンマ・イワエラの同名小説を元に映画化された本作は、世界最大のインターネット映像配信ネットワーク Netflixが製作を手がけた初のオリジナル。エミー賞を受賞した経験を持つ38歳の若き日系監督キャリー・ジョージ・フクナガがメガホンを取り、主演はゴールデングローブ賞受賞のイドリス・エルバが務め、ヴェネチア国際映画祭でも絶賛された注目の作品。ごく普通の少年が内戦に巻き込まれ、ゲリラ兵に変貌していく樣を少年の目線で描いている。
本作の製作についてフクナガ監督は、「このテーマで映画を作りたいと15年ほど前から構想はたてていました。学生時代からいろいろとリサーチを重ねていたのですが、2005年に原作と出会い10年かけて映画を作り上げました」と語った。
そして、「日本のみなさんには馴染みのないテーマかもしれませんが色々なことを感じ考える作品になっています。主人公の少年の気持ちを感じてほしいです。新聞でこうした記事を読むようなことではなく、身近な人の話として感じてもらえたらいいと思います」と続けた。
また、ヴェネチア国際映画祭でマルチェッロ・マストロヤンニ賞を受賞したアブラハム・アッターは、素人とは思えない演技で賞賛されている。演技未経験のアブラハムの起用をフクナガ監督は、「ガーナで撮影すると決めた時から、現地の子供たちを起用したいと考えていました。スカウトチームが、たまたま放課後にサッカーをしていたアブラハムに声をかけたのです。アイブラハムは最初、サッカーチームにスカウトされたかと思ったらしくて(笑)。ところが映画の出演依頼だったのでとても驚いたようです」と経緯を説明し、「アグーはとても難しい役ですが、彼はとても利発な少年で、1人の少年が変わっていくさま、表情や感情の変化を初めての演技とは思えないほどうまく演じてくれたと思います」とアイブラハムの演技を称えた。
好きな日本映画、監督を尋ねられると、「影響を受けたのは今村昌平監督です。10年前ニューヨークで彼の特集上映があったときに多くの作品を観ました。彼のカメラワークはスコセッシがやったことを10年以上も早くからやっていた。あと、是枝裕和監督の作品は自然体でリアルな描写が素晴らしいし、小津安二郎監督も好きですね」と答えた。
Netflixのピーターズ社長は、「できるだけ多くの人に作品を見るチャンスを提供したい。劇場で見ることができない人、家で見たい人などにテクノロジーを駆使した映像を提供できれば」と劇場公開と合わせて本作をネット配信することの意義についてコメント。
本作の配信について「非常に心に染み入るヒューマンドラマを、世界中にいるNetflixのユーザーにも体験をしてもらいたいです」と伝え、「素晴らしいビジョンを持った人たちと共にNetflixのオリジナル映画としてこの作品を公開することができることを大変嬉しく、光栄に思います。これからも色々模索していきたい」と目を輝かせた。
最後にフクナガ監督が、「自分のルーツとなる日本のみなさんにも、ぜひこの作品を観て感じてほしいです」とメッセージを伝え会見を終えた。
作品あらすじ
西アフリカを舞台に少年アグーの軌跡たどる本作の始まりは、内戦下にありながら平穏な毎日を送ることのできた平和な頃だった。だが反乱軍を弾圧すべく政府軍が村に押し寄せてき時、アグーの目前で幸せな日常が音を立てて崩れ去る。命からがら逃げ切った時には、たったひとりで恐怖に身を震わせていたのだった。圧倒的な支配力を持つ指揮官の率いる武装軍に見つかり、否応なしに一味に加わる。数々の武力攻撃に参加するうち、アグーは弾薬運び係から機関銃を掲げる兵士へと変貌していく。愛する家族に囲まれ笑いの絶えなかった楽しい時は遥か彼方に浮かぶ幻だったのか――。抗う術もなくその幼い手を血で染めてゆく少年の姿を切なくもリアルに描いた衝撃作。
『ビースト・オブ・ノー・ネーション』
Netflixにて独占プレミア配信中
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