ディズニー不朽の名作を完全実写化し、現在日本中に旋風を巻き起こしている映画『美女と野獣』。巨匠アラン・メンケンの珠玉なミュージカル・ナンバーと心を溶かす映像美、さらにアニメーションでは語りきれなかったストーリー・・・。魔女の呪いによって野獣の姿に変えられてしまった王子と、周りから“変わり者”と呼ばれ心に孤独を抱える美しい女性・ベルの真実の愛の物語が、観る者に最高の感動を与える。
ヒロインのベル役にエマ・ワトソン、野獣役にはダン・スティーヴンスのほか、絢爛豪華なスターが勢揃いした本作の「プレミアム吹替版」に、演技、歌唱力ともに日本を代表する実力派豪華キャストが集結。その中で、燭台に変えられてしまった城の給仕長・ルミエール役を、ドラマや舞台で活躍する成河が熱演。声優に初挑戦した彼が、本作の魅力と役への思いを語ってくれた。
― 今回、ディズニー作品に声優として決まった時の率直なお気持ちはいかがでしたか?
「本当に?」と思いましたね(笑)。あまり現実感がないというか。「やっていいならやるけど、いいの?」という感じでした(笑)。でもルミエール役でお話をいただけたのはとても嬉しかったです。どの役もやりたいと思いますが、その中でも特に。「あーなるほど」とも思いましたね。
― オーディションの後、役が決まった時もどちらかというと平常心だったという事ですか?
平常心というか、僕はあまり自分に自信があるほうではないので、何をやるときも「やらせていただけるなら…」というスタンスです。「僕で大丈夫なのかな」という気持ちもありましたが、好奇心がとても強いのでやったことないことができるという喜びのほうが勝っていました。
― ルミエールは、不安いっぱいのベルを優しく迎え、また観る者を物語の中へいざなってくれるような重要な役。この役を受けてどう感じましたか?
ルミエールのような案内係は、ディズニー映画には欠かせないキャラクターだと思っていて、舞台だと“道化”みたいな役割だと思うのですが、本当にこの役をいただけたことは嬉しかったですし、楽しかったです。こういう役は、みなさんに愛されてなんぼなキャラクターなので、是非見ていただいて愛していただけたら嬉しいです(笑)
― 舞台やドラマなど、様々な役を演じている成河さんですが、役を演じる上で難しかった点は?
吹替えが初めてだったので、映像と声のタイミングをコンマで合せていくのがすごく大変でした。どのキャラクターよりも動きが多かったので、腕を振ったり、飛んでからの着地のときの言葉のアクセントとか調整しながらやりました。日本語(のセリフ)も、映像の動きに一番合うものをと、その都度現場で変わりました。
― 実写(字幕版)では、同役をユアン・マクレガーさんが演じています。ユアン・マクレガーさんのルミエールの印象はいかがでしたか?また、演じる上でマクレガーさんを意識されましたか?
原作のアニメーション版のルミエールは、愛嬌があって軽妙でありながらも落ち着いた執事としての渋みもあって声のトーンも低めだったので、年齢の割に声が高めの僕にできるかなーと心配だったんですが、ユアン・マクレガーさんがとてもは燥ぐように演じられていて、そういうルミエールもありだなと思えました。アニメーションと違って、実写だと縮尺がリアルですよね。だからルミエールたちも小さくて、そういう小さいものたちがキャッキャしている感じの雰囲気とかも高めの声で表現されているのかなと思ったり、もともとのイメージに縛られず、自分の中にある軽妙なスタンスで、鼻につくけど嫌いになれないフランス野郎な感じが表現できればといいと思って臨みました。
― ルミエールと成河さんご自身との共通点はありますか?また、違うと思う点は?
明るいところですかね。僕にも暗い部分はありますけど、ルミエール的な明るさは持っていようと思いますし、自分の中にもそういう要素はあるなと思います。アフレコにもそれは活かされたと思います。
― 成河さんの歌声もとても優しくて、場面に合っていてステキです。この歌を歌うときに気をつけたことは?
僕は“ミュージカル俳優”って言われることもありますが、ミュージカルはまだ2、3本しか出ていなくて…ミュージカルの人じゃないんですよ(笑)。それでもミュージカルという表現方法にはとても興味があるんです。日本でやる場合は日本語の“話す言葉”と“歌う言葉”に大きな違いがあるという問題があるかもしれません。本来の英語ではそれがもっと地続きで、話していたのが気が付いたら歌になっているというのが根本的な魅力であるはずなのに、それが日本語の特性でずれていってしまうというか、急に「歌の時間ですよ」「お芝居の時間ですよ」という風にならざるを得ない。その壁をどうやって超えていくかを、考え続けなければいけないと思うんです。それができたら表現としてすごく豊かになるはずなので、そのことはずーっと考えながらやっていました。現場の監督さんもそういう問題意識をお持ちの方だったので、日本語のセリフを工夫して、極力しゃべり言葉と歌が別にならないように、“いつのまにか”ということを意識していました。特にルミエールはそれが必要な役でしたし、「Be Our Guest」もそれが必要な楽曲だったと思います。
― アラン・メンケンさんの曲をどのように思いますか?
本当に素晴らしい楽曲でしたね。どのシーンも納得で想像の上をいくクオリティでした。僕もそうでしたが、アニメーションを知っている方は「あのシーンどうするの?」と不安に思う部分もあると思うんですが、完全に上をいかれて参りました!ミュージカルシーンは本当に華やかで勢いがあってテンポもよくて。個人的には、幕開けの「朝の風景」から完全に心をつかまれました。
― 成河さんの考える、映画『美女と野獣』の魅力は?
役者さんがびっくりするぐらい素晴らしい!ちょっとした表情とか、ほんとに密度の濃い演技をされているので、ディズニー映画が好きな人でも、ディズニー映画を普段見ない方でも見て楽しんでいただける映画になっていると思います。
この物語は一言でいうと、“はみ出し者同士が出会うストーリー”だと思うんですが、そこに男女とか関係なく、誰でも共感できるものがあるので、たくさんの人が勇気をもらえる、一種の救いにもなるストーリーになっている。そこが一番の魅力だと感じています。
― もし、ルミエール役でなかったら、他に演じてみたいキャストは?その理由も合わせて教えてください。
ベルでしょ(笑)。決まってるじゃないですか、主役だし(笑)。
― 本作で登場するなかで成河さんの好きなキャラクターは?
やっぱりルミエールですよ。吹替えのお話がある前に聞かれてもルミエールでしたね。あのポジションの役割っていうのが、僕は見るのもやるのも好きです。見るほうはもちろん皆に愛される役割だと思うし、僕はシェイクスピアの道化役をよくやらせていただきますが、観客との橋渡しのようなことができるんです。この作品の中でもベルと野獣の橋渡しにもなっているし。あと、ベルも好きなんですけどね!(笑)
― ルミエールのセリフの中で特に好きなセリフがあったら教えてください。
やっぱりフランス語ですね!いろんなところでフランス語使っているんです。吹替えだからこそそれが表現できるところがあるなと思うんです。セリフの出し方にもよりますが、字幕で意味だけを通してしまうとそのニュアンスが飛んでしまう可能性もあって。「フランス語使いやがって!」みたいな鼻につくけど憎めない要素とかね。
― ディズニー作品で他に好きな作品はありますか?
素敵な作品がたくさんあって、これだ!と決めきれないのですが、どの作品にも出てくるルミエールみたいなキャラクターたちは本当に好きですね。
― 映画『美女と野獣』をご覧になるみなさんにメッセージをお願いします。
吹替えの仕事を今回初めてやらせていただいて吹替えの役割ってなんだろうって考えたんですが、要するに映画そのものを見てほしいんです。声優さんは顔を出されない方が多いのですが、その哲学ってやっぱりあると思うんです。「私じゃなくて作品を見てほしい」っていう。もちろん「あの人の声っていいよね」っていう楽しみ方もありますが、基本的には作品の画面に誘導するためにいるわけで。今回は、僕も含め舞台俳優を集めていただいてこんな風に宣伝もしていただいて、それで喜んでいただけるのはすごく光栄でとてもありがたいこと。「舞台で活躍する僕たちの声を聴きにきてください」っていう思いももちろんありますが、それ以上にこの実写版『美女と野獣』という映画が素晴らしいものなんです。その世界に字幕を追うこともなく、ものすごく自然に違和感なく誘導するということができたなら、皆さんに没頭していただけたなら成功だなと思っています。
【成河(そんは)プロフィール】
東京都出身。2004 年、「エンジェルス・イン・アメリカ」のエンジェル役に抜擢され、注目を集めて以来、舞台を中心に活躍している。主演を務めた主な舞台に、「グランドホテル」「100万回生きたねこ」「アドルフに告ぐ」「ショーシャンクの空に」などがある他、NHK連続テレビ小説「マッサン」(14-15)で連続ドラマ初レギュラー出演を果たした。
現在、先月開幕したアジア初の円形劇場「IHIステージアラウンド東京」のこけら落とし公演、劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season花に天魔王役で出演中。7月1日から世田谷パブリックシアター『子午線の祀り』(野村萬斎演出)に源義経役で出演。9~10月は『人間風車』に主演。また、2018年1~2月に上演される、デヴィッド・ルヴォー演出「黒蜥蜴」にも出演予定。
映画『美女と野獣』
<STORY>
魔女の呪いによって野獣の姿に変えられてしまった美しい王子。呪いを解く鍵は、魔法のバラの花びらが全て散る前に誰かを心から愛し、そして愛されること――。だが、野獣の姿になった彼を愛する者などいるはずがなく、独り心を閉ざして暮らしていた。そんな絶望の日々に変化をもたらしたのは、聡明で美しい女性、ベル。自分らしく生きながらも、周囲から「変わり者」と呼ばれ心に孤独を抱えていた彼女は、外見に囚われ本当の自分を見失っていた王子を少しずつ変えていくが・・・。はたして、その出会いは王子の運命を変えることができるのか?
監督:ビル・コンドン
出演:エマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス、ルーク・エヴァンス ほか
プレミアム吹替版:ベル/昆夏美 野獣/山崎育三郎 ポット夫人/岩崎宏美
モーリス/村井國夫 ガストン/吉原光夫 ル・フウ/藤井隆 ルミエール/成河
コグスワース/小倉久寛 マダム・ド・ガルドローブ/濱田めぐみ
プリュメット/島田歌穂 チップ/池田優斗 ほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
クレジット:© 2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:http://www.disney.co.jp/movie/beautyandbeast.html
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