マーティン・スコセッシ監督来日会見　映画『沈黙－サイレンス－』の完成に「夢が叶った！」

巨匠マーティン・スコセッシ監督が、映画『沈黙－サイレンス－』の公開（1月21日）に先がけ、1月16日、都内ホテルにて来日記者会見を行った。

本作は、遠藤周作の小説『沈黙』を原作に、江戸初期の長崎で起きたキリシタンへの弾圧下、日本にたどり着いたポルトガル宣教師の苦悩を描いた歴史大作。宣教師の目に映った隠れキリシタンへの惨状を通して、人間にとって本当に大切なものは何かを問いかける。

スコセッシ監督が原作と28年前に出会い、日本で初めて読んだ時から映画化を希望し、長い年月を経て映画完成に至った。監督は「積年の思いでやっと完成させることができました。日本のみなさんに受け入れてもらえることができ、夢が叶った思いです。本当にありがとうございます」と万感の思いを吐露。「私にとって壮大な学びの旅でした。映画は完成しましたが、これで終わりだと思っていない。私は今もこの映画とともに生きています」と目を輝かせた。

「『最後の誘惑』(88)ではキリスト教の理念をシリアスに探求したが、大きな議論も起こった。自分の信仰心を見失いかけていたとき、エピスコパル教会でポールモア大司教からこの本を勧められたんです。もっと深く探求していかなくてはいけない。答えを見つけださなければいけないんだと思ったんです」と原作との出会いを熱く語り、「自身の作品の中で特に大事な作品。創作意欲を掻き立てられた」と続けた。

しかし、「当時は自身の宗教観や疑念、日本文化に対する理解不足もあり、この作品をどう解釈し作るべきか分からなかったんです」と明かし、2003年の『ギャング・オブ・ニューヨーク』を制作していた頃から、脚本の執筆に取り組み始めたという。「とにかく映画化権利を失いたくなかったので、それまでは”今書いています！”と言ってごまかしていたんです。権利問題で訴訟されたりしたこともありました」と、あっけらかんと笑った。

さらに、私生活の変化も作品作りに影響があったようで、「若い頃に撮っていたら、まったく違う作品になっていたかもしれない」と話し、「2003年ころに再婚をして小さな女の子が生まれるという、私生活においても変化があった。私生活の変化もいろいろな可能性を押し広げるきっかけになったんだと思う」と振り返る。

本作のテーマについて、「弱さと懐疑心を描いている作品」とし、「否定するのではなく、受け入れる『包括性』が伝わればいい。劇中に、窪塚洋介演じる“キチジロー”が『この世の中において、弱きは生きる場があるのか』ということばがありますが、まさに本作は弱きをはじかずに受け入れ包容してあげるということを言っている」と熱く述べた。

また、本作がこの時期に公開されることにおいても、「今、一番危険にさらされているのは、若い世代のみなさんだと思います。勝者が歴史を勝ち取っていく、勝者が世界を制覇していくということしか見ていない。それしか知らないのはとても危ないこと。それが世界のからくりだと思ってしまうから」と、本作に込められたメッセージを伝える。

この日は、今も長崎で隠れキリシタンの伝統を受け継ぎ信仰を続けている村上茂則さんも登壇し、スコセッシ監督と固い握手を交わした。先に作品を観た感想を聞かれ「先祖たちを思うと涙が出ました。感情があらわになる作品。ぜひ日本、世界のみなさんに観てほしい」とコメント。それを受けて監督は「日本の文化、そして日本にいたキリシタンのみなさんの勇気を損なうことのないように描きました。モキチが磔になるシーンではアメリカ、日本のキャスト・スタッフ、誰もが涙した。本当に真剣に取り組んだし、やらなければいけない巡礼なんだと思いました」と語り、会見を締めくくった。

映画『沈黙－サイレンス－』
原作：遠藤周作「沈黙」（新潮文庫刊）
原題：Silence
監督：マーティン・スコセッシ
脚本：ジェイ・コックス、マーティン・スコセッシ
出演：アンドリュー・ガーフィールド　リーアム・ニーソン　アダム・ドライバー　窪塚洋介　浅野忠信　イッセー尾形　塚本晋也　小松菜奈　加瀬亮　笈田ヨシ
配給：KADOKAWA
映画素材クレジット： (c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト：http://chinmoku.jp
Twitter：https://twitter.com/chinmoku2017
Facebook：https://www.facebook.com/chinmoku.jp/

【STORY】
17世紀、江戸初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎。日本で捕えられ棄教したとされる高名な宣教師フェレイラを追い、弟子のロドリゴとガルペは日本人キチジローの手引きでマカオから長崎へと潜入する。
日本にたどりついた彼らは想像を絶する光景に驚愕しつつも、その中で弾圧を逃れた“隠れキリシタン”と呼ばれる日本人らと出会う。それも束の間、幕府の取締りは厳しさを増し、キチジローの裏切りにより遂にロドリゴらも囚われの身に。頑ななロドリゴに対し、長崎奉行の井上筑後守は「お前のせいでキリシタンどもが苦しむのだ」と棄教を迫る。次々と犠牲になる人々。守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か。心に迷いが生じた事でわかった、強いと疑わなかった自分自身の弱さ。追い詰められた彼の決断とは。

1月21日(土)　全国ロードショー！