シネマ歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』の完成披露上映会が、3月25日、東京・丸の内ピカデリーにて行われ、キャストの尾上松也、尾上右近、中村鷹之資、中村莟玉、上村吉太朗、河合雪之丞が舞台挨拶に登壇した。
歌舞伎の舞台を撮影し、映画館で楽しむ“シネマ歌舞伎”最新作『刀剣乱舞 月刀剣縁桐(とうけんらんぶ つきのつるぎえにしのきりのは)』。刀剣に宿る付喪神が戦士の姿となった刀剣男士を率い、時間遡行軍による改変から歴史を守る人気ゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」が、舞台にミュージカル、アニメや実写映画と、メディアミックスの幅を次々に拡大し、人気コンテンツとなっている。そんな中、ついに歌舞伎化された話題の舞台が、全国の映画館で上映される。
「刀剣乱舞」を歌舞伎化するにあたり、演出も手掛けた松也は「歌舞伎に何か付け加えられる新作を作りたいと思っている中で出会ったのが『刀剣乱舞』でありました。初めは新作歌舞伎にするということより、とても人気があるコンテンツ作品ということで興味を持ち拝見させていただきました。拝見させていただいているうちに、非常に歌舞伎と親和性が高いし、ストーリーはもちろんですが、キャラクターそれぞれの造形も歌舞伎にしたら面白そうだなとずっと思っていました。また、メディアミックスさんはオリジナルで考えていらっしゃるということで、ゼロから自分たちのオリジナルストーリーを考えられるというところも非常に魅力的でしたね」と、作品を企画するきっかけを明かす。
構想は2年の月日をかけたが、「何度も会議を重ねました。昨年7月に上演されましたが、昨年のお正月までやりかけていたストーリーがあったんです。でも、僕がどうしても違う物語をやりたいということ急きょ、春頃に義輝と三日月宗近の物語に変更になったんです」と、こだわりを貫いた作品だったことを吐露。
原作ファンも多い作品だが、演じるにあたりこだわった役作りについて、三日月宗近を演じた松也は「『刀剣乱舞』のファンの皆さんだったら誰でも知っている看板のキャラクター。その役どころを忠実に歌舞伎に落とし込んだらどうなるのか、そしてやはり歌舞伎でしかできないところを出していきたいと思いました。今回は、義輝と相対するときには普段と違う様子が出てしまう感情を、それ以外はものおじせず、その雰囲気を崩さないように心がけていました」と話す。
小狐丸と足利義輝の二役を演じた右近は「宗近と兄弟分みたいな関係性だったり、時代を旅する感覚、そしてムードメーカー的なところもあるのかなと思いながら務めさせていただきました」とし、「実は役がまだ決まっていなかったころ、別の仕事で伏見稲荷の三条宗近が小狐丸をうった時の水の井戸がある剣社をお参りしたときに、スタッフさんがパッと空気が止まったと言うんです。僕は気づかなかったんですが、『じゃあひょっとしたら小狐丸をやらせてもらうことになるかもね』なんて言っていたんです。僕はもう小狐丸に選ばれし者だと思いました!」とエピソードを披露し、会場から大きな拍手が送られた。
そして、「義輝に関しては、初めての主人だったということで、義輝が将軍になっていくサクセスストーリー、いろんな運命に翻弄されていく様を見続けてくれる宗近。そこには心が通っていて本当に心打たれる物語だなと。松也さんとは小さい頃からお世話になっている関係性でありながら、僕もわりとわがままに『こうやりたい』というところを大きく受け止めてくれて、松也さんと僕との関係性がかぶるようなところもあったように思いますので、これは僕と松也さんでしか作れなかったと思います」としみじみ。
さらに、「音楽も凄くステキで。お稽古の段階から音楽を聴いて2人とも泣いちゃうという(笑)。お稽古で最初から泣いちゃうってことは歌舞伎ではない気がする」と話すと、松也も「期待値を上回る音楽がきちゃったものだから。もう涙がポロっと出てしまうのではなくて、子供がお母さんに怒られた時みたいに(笑)」と、大泣きして稽古どころではなかった様子を伝え、会場から笑いを誘う一幕も。
同田貫正国と松永大和之助久直を演じた鷹之資は、元の『刀剣乱舞』を観て、「もうスラっとした人がやっていると聞いて、僕の身長で大丈夫なのか!? と懸念していたんですが、役が決まったらファンの人が『大丈夫です。同田貫は割と(背が)低めのキャラなんで。いけると思います』と励ましていただきました」と笑い、「同田貫も、松永久直実直も実直で真面目というキャラクターだったので、自分に合っていて馴染んでいきました」と満足気。
髭切、義輝妹紅梅姫を演じた莟玉は、キャラクターのビジュアルを見て戸惑いもあったようだが、「プロデューサーさんから、『この髭切というお役は、1000年以上の歴史がある一振りで、本当に世の中の色んなところに無頓着で、弟の名前も忘れてしまうようなお役で、本当に莟玉さんにぴったりなお役だと思います』とご連絡をいただき、あ、(自分は)そう思われていたんですね・・・と」とコメントし、会場を沸かしつつ、「キャラクターと自分を合わせていくのがいいかなと思って挑戦しました」と回顧した。
膝丸を演じた吉太朗も「会社から脅されるように『人気の高いキャラクターなんで』と何回も言われまして(笑)」と続け、「膝丸という役は歌舞伎にも繋がる部分もあるし、稽古段階から、松也さんがイメージしやすいようにアドバイスしてくださいました。そして、髭切の兄者が莟玉さんで良かったなと思っています」と笑顔で感謝の気持ちを口にすると、思わず右近が「良かったな」を言わんばかりに、莟玉の肩を叩く。
小烏丸を演じたのは河合雪之丞。「松也さんからお誘いをいただいて、ありがたいなと思ってお受けしました。小烏丸は女形がやったほうがいいだろうと思うようなお役だったので。アニメのキャラクターも爽やかな雰囲気なので、私もなるべく近づけるように努めさせていただいたつもりです」と述懐。松也は「途中からセリフを増やしたんです。『明日からこれ言ってください』と言った時の慌てふためきっぷりは・・・いまだに忘れられません(笑)」と笑うも、「でも、本番は完璧でしたから」と絶対的な信用を寄せていた。
最後に松也が「舞台の観客席からでは少し分かりにくいような細かいディティールもこだわって作ったつもりです。この大きな画面にクローズアップされて映ると凄くわかりやすいと思います。そして、舞台上で僕たちも熱量を持ってお芝居をしてきましたが、その表情や感情が近くで見ることによってまた違って見えたりするかもしれません。アングルも普段観客席から見られないようなところを通ったりしていますので、舞台で観るのとはまた違った美しさ、いろんな魅力をご覧いただけると思います」とシネマ歌舞伎の魅力を語り、「舞台を観られなかった方もこれから楽しんでいただきたいですし、観られた方もまた違った視点が発見できると思います」とメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。
尾上松也 おのえ・まつや(音羽屋)/三日月宗近
尾上右近 おのえ・うこん(音羽屋)/小狐丸、足利義輝
中村鷹之資 なかむら・たかのすけ(天王寺屋)/同田貫正国、松永大和之助
久直
中村莟玉 なかむら・かんぎょく(高砂屋)/髭切、義輝妹紅梅姫
上村吉太朗 かみむら・きちたろう(美吉屋)/膝丸
河合雪之丞 かわい・ゆきのじょう(白兎屋)/小烏丸
シネマ歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』(とうけんらんぶ つきのつるぎえにしのきりのは)
《あらすじ》
時は西暦 2205 年。室町時代後期の歴史を改変するために時間遡行軍が出撃した報告を受け、審神者は三日月宗近、小烏丸髭切、膝丸、同田貫正国、小狐丸の六振りを呼び出し、永禄年間(1558~1570)に向かわせる。しかし三日月宗近は、逡巡する様子を見せる。実は時の将軍足利義輝は、三日月宗近の最初の主であったとも、その愛刀であったとも伝わるためである。
やがて永禄の世に顕現した刀剣男士たちは、足利義輝や紅梅姫、執権の松永弾正、久直親子たちと交錯しながら、歴史を守るための戦いに身を投じていく……。
原案:「刀剣乱舞 ONLINE」より(DMM GAMES/NITRO PLUS)
脚本:松岡亮演出 尾上菊之丞 尾上松也
出演: 尾上松也、尾上右近、中村鷹之資、中村莟玉、上村吉太朗、河合雪之丞、澤村國矢、市川蔦之助、大谷龍生、
中村歌女之丞、大谷桂三、中村梅玉 ほか
撮影公演:2023(令和5年)年7月 新橋演舞場公演
舞台著作: ©︎NITRO+・EXNOA LLC/新作歌舞伎『刀剣乱舞』製作委員会
製作・配給:松竹
作品写真:松竹写真室
公式HP:shochiku.co.jp/cinemakabuki/
公式X:@cinemakabuki
4月5日(金)より 東劇・新宿ピカデリーほかにて全国公開