映画『誰よりもつよく抱きしめて』が、ついに2月7日より公開した。
感涙必至の究極の純愛⼩説として話題となった新堂冬樹の⼩説「誰よりもつよく抱きしめて」を、映画『ミッドナイトスワン』や『サイレントラブ』の内田英治監督がメガホンを取り実写映画化。本作は、身体と心の葛藤を抱え、愛する人と触れ合うことができない二人の切なくも美しい、最高純度の恋愛物語。
強迫性障害による潔癖症で、同棲する恋人にも手すら触れることができない絵本作家・水島良城を三山凌輝、恋人である良城の病気を理解しつつも、彼に触れてもらえず、揺れ動く心に思い悩む書店員・桐本月菜を久保史緒里(乃木坂46)が演じ、良城と同じ強迫性障害による潔癖症を患い、良城と月菜の関係を揺るがす村山千春を穂志もえかが扮する。
第82回ゴールデングローブ賞®で、作品賞他を受賞したドラマ『SHOGUN 将軍』にて宇佐見藤役を務め、いま世界中から注目を集めている穂志。今作では強迫性障害による潔癖症という難しい役どころを、悩みながらも繊細に演じた彼女が、役への向き合い方、俳優としての心構えを語ってくれた。
― まず、台本をお読みになったときと、出演が決まったときのお気持ちをお聞かせいただけますか?
私はオーディションを受けて出演が決まった後に台本をいただいたのですが、初めて読んだ時のイメージでは(千春は)かなり恋路を邪魔するような女性に見えたんです。私の偏見だったのですが、「病気を患って闘っている人が悪者に見えてほしくない、嫌われてほしくない」と考えていたんです。でも、内田監督から「いや、病気を患っている人みんながみんな善人ではないし、病気と闘っていても嫌なやつとかも全然いるし」と言われて、自分の勝手な先入観で役に入ろうとしたことに気付かされました。
― 千春はそれほど性格が悪いようには見えませんが、「あ、こういう人いる」という感じはあるかもしれませんね。
そう見ていただけると嬉しいです。
― 千春がどういう気持ちで良城と接していたかはわかりませんが、月菜の立場になると心がざわつくというのは、女性ならよくわかるかも?
そうですね。この映画は、どの人の立場になって観るかで印象が変わる作品になっているように思います。今おっしゃったように善人でもないし、逆にすごい性格が悪い感じでもないし、でも、こんな“千春みたいな人いるよね”と思っていただけたら。病気うんぬんじゃなくて、異性でも恋愛感情はないけれど、気持ちを共有できる人っていると思うし。ただ、千春の場合は恋愛感情がありますし、最初に監督から“自称サバサバ系で”とオーダーされたことも頭に残っていて、そのバランスは少し難しかったです。衣装も千春のイメージを出すためにみんなで話し合って決めました。
― 役作りのために普段からビニール手袋をして、消毒シートを持ち歩いていたそうですが、どのように役と向い合っていたのでしょうか?
私自身もそうですが、誰しも自分の中に正義を持って生きているんだと思います。千春も彼女なりの正しさの中で生きているという説得力が欲しかったので、限りなく彼女の実生活に寄り添う生活をして、いろんな苦しさや生きづらさを少しでも体感しようと思って過ごしていました。
― そんな中で、演じていて特に難しかったところとかありましたか?
カットされているシーンなのですが、千春が月菜に対して良城と別れてほしいと伝えるところが実は一番難しかったです。すごいタイミングで現れて、すごいことを言って去るという。私の撮影初日に行われたシーンだったので、久保さんの演じる月菜の温度感もわからないまま、月菜に強い嫌悪感を抱かないと成立しなかったので、少し苦戦しました。
― なるほど。映像に映っていないところでも感情をつくる演技もあったのですね。穂志さんは三山さんと久保さんとの対峙のシーンが多かったと思いますが、共演されたお2人の印象はいかがですか?
三山さんはとても明るい方で、本当に話しやすくて現場でも積極的に話しかけてきてくれました。四歳年下ということを忘れるほど軸がしっかりしていて、お話ししていて楽しかったです。お芝居のときは、セリフを本当に自分の中に落とし込んで、自分のものにしてから発しているなという風に見えました。セリフの前に、息遣いとか、「んー」と考える声が入ったり、それがとても自然で、三山さんが演じる意味が出ていて、私も勉強になりました。
久保さんは素直に悩んでいることや考えていることをきちんと言える人ですね。初対面の私にも、ご自分の今後のキャリアのことや、お芝居についてどう思っているかとかを素直に話してくださって、殻にこもらずオープンマインドな感じ。お芝居にもきっと久保さんらしさみたいなものが出ていたんじゃないかなと思いました。
ちょうど1年くらい前の撮影で寒かったので、現場ではお互いを気遣いながら過ごしていました。カメラが回っていないところでは、お互いに冬生まれっぽい見た目だけど夏生まれなんだよね・・・とか、そんな他愛もない話もしたりして(笑)。その後また違う作品で共演する機会があって、ご一緒できて嬉しいなと思えるお二人でした。人間性も素晴らしいです。
― 内田組は初参加とのことですが、内田監督と一緒にお仕事された感想は?
まず、久しぶりの映画だったので出演できて嬉しかったです。先ほども少しお話しましたが、病気が云々というより、一生懸命生きた結果ちょっと性格が悪くなったように見えるときもある・・・と、人間を多面的に捉えてどんな姿でも肯定する、それが本当のフラットということだと思うので、内田監督はとてもフラットな視点、感覚をお持ちの方だなと思いました。現場でもけっこう粘って納得がいくまで何回も撮られていました。これからも機会があれば、ぜひご一緒したい監督の1人です。
― 本作は様々な角度から観ることができる作品だと思いますが、穂志さんが特に印象に残っているシーンがあったら教えてください。
色々ありますが・・・、(しばらく考えて)やはり、“触りたくても触れない”という場面でしょうか。その人と関係性を深めたいと感じたり、深い仲になっていくときは、抱きしめるとか手を繋ぐとか身体的な接触も大きなエネルギーを持つと思うのですが、それが叶わないという瞬間が千春にもありました。良城くんに触れたくても触れられず、彼も感情が高まっていましたし、本当に辛いシーンだったのでとても印象に残っています。
― 様々な役を演じられて活躍されている穂志さんですが、俳優として日々心がけていることがあれば教えていただけますか?
1つは芝居をしてないときの時間をどう過ごすかということです。プライベートの時間で何かを感じたり、何を思うかがお芝居に深みを出すと思うので、勉強したり色んな経験をしてみるようにしています。そして、人と深く繋がることをけっこう意識しています。
例えば、自分の弱さを見せたり、辛いということを伝えてみたり、人に話すには少し勇気がいることでもあえて伝えて、本気で話してお互いに深いコミュニケーションを取ることを心がけています。軽快な会話でコミュニケーションを取ることも楽しいけど、本当に深く相手と繋がって本音で話し合うことによって心が動かされる瞬間があるので、そういう時間はとても大事にしています。
― お話をお聞かせいただいてありがとうございました。それでは、本作の大ヒットと穂志さんの益々のご活躍を楽しみにしています。
ありがとうございます。これからも頑張ります!
【穂志もえか(Moeka Hoshi)】
千葉県出身。2017年「100万円の女たち」で連続ドラマ初出演し、2018年公開の映画『少女邂逅』で初主演を果たす。
24年にエミー賞史上最多18部門を受賞したハリウッド制作「SHOGUN」では宇佐見藤を演じ世界的な評価を受ける。
近年の主な出演作に、ドラマ「こっち向いてよ向井くん」(23/NTV)、「恋愛バトルロワイヤル」(24/Netflix)、映画『街の上で』(21)、『窓辺にて』(22)、『生きててごめんなさい』(23)などがある。
現在テレビ東京で放送中のドラマ「晩餐ブルース」(テレビ東京)、「TRUE COLORS」(NHK BS)にも出演中。
撮影:ナカムラヨシノーブ
映画『誰よりもつよく抱きしめて』
【STORY】
鎌倉の海沿いの街で同棲する、絵本作家の水島良城(三山凌輝)と書店員の桐本月菜(久保史緒里)。学生時代から付き合ってきた二人は、お互いのことを大事に思い合っているが、良城は強迫性障害による潔癖症を患い、恋人の月菜にも触れることができず、手をつなぐことすらできない日常が続いている。ようやく治療を決意した良城は、合同カウンセリングで初めて同じ症状を抱える女性・村山千春(穂志もえか)に出会う。思いを共有できる相手に出会えたことを喜び、千春との距離を縮めていく。仲睦まじく思いを共有する二人の交流を目の当たりにし、月菜はショックを受けてしまう。二人の溝がどんどん深くなっていくなか、月菜の前に、恋人と触れ合っても心が動かない男・イ・ジェホン(ファン・チャンソン)が現れる。愛する人と触れ合うことがままならない者たちがすれ違い、ぶつかり合い、関係が交錯していく―。
【作品情報】
原作:新堂冬樹「誰よりもつよく抱きしめて」(光文社文庫)
監督:内田英治
脚本:イ・ナウォン
出演:三山凌輝、久保史緒里(乃木坂46)、ファン・チャンソン(2PM)、穂志もえか、永⽥凜、北村有起哉、北島岬、⽵下優名、酒向芳
配給:アークエンタテインメント
©2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント
dareyorimo-movie.com
2月7日 TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー