咲坂伊緒が描いた大人気少女コミック「ストロボ・エッジ」と「アオハライド」に続く、“咲坂伊緒 青春三部作”の最終章、累計部数500万部を突破する「思い、思われ、ふり、ふられ」がアニメーション&実写での連動W映画化。大ヒット公開中の実写映画に続き、アニメーション映画が、ついに9月18日(金)に全国公開される。
本作は、等身大の主人公たちが繰り広げる恋模様と、毎日の中で自分自身・他者と向き合いながら成長していく姿を瑞々しく描いた、新たな青春ラブストーリー。メインキャストの1人、山本朱里の義理の弟で、ある葛藤を抱える山本理央を演じた声優の島﨑信長に話を聞くことができた。「理央役は楽しかったですよ」と笑顔を見せる彼が本作への思いを語ってくれた。
― 本作への出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください?
オーディションを受ける際に原作を拝見したのですが、とてもリアリティに溢れた人間を描いていて僕が好きな作品でした。出演させていただいて嬉しかったです。
― 映画のシナリオを読んだ感想はいかがでしたか?
原作を1本の映画にまとめなければいけないので難しいだろうなと思っていたのですが、映画の中でそれぞれのキャラクターの成長や変化、関係性の移り変わりがしっかりと描かれていたと思います。その中でも特に理央は成長や変化が分かりやすく、とても素敵に描いていただいたと思います。
― 理央役を演じられていかがでしたか?
楽しかったです。最初はいろんなことが上手くいかなくてくすぶっていて、それゆえに周りからは少しクールに見えたり、よりカッコよく見えていましたが、そんな理央が色んなことを乗り越えて由奈ちゃんと出会って、気持ちが動いていく。もともと彼が持っていた可愛らしさや純情さ、男子高校生感が徐々に表れていく。クールな時は興味がないからクールに女の子に接していたのに、好きになってしまうとめちゃくちゃドギマギしてしまう。最初は興味ないから「俺、こっち」と言って由奈ちゃんの顔を触っても顔色一つ変えなかったのに、一つ一つの事に照れるようになるし、「ピチピチのタイツ履いた王子様姿なんて由奈ちゃんに見られたくないよ、見られちゃったよ、恥ずかしいー!」ってなる。でも「いい!」って言ってもらえたら凄く嬉しいな・・・とか。そういう彼の気持ちがどんどん出てくる。彼の本来持っている真っ直ぐさ、ステキなところが出てくるので、そこをやらせていただくのはとても楽しかったし、僕も笑顔になっていきました。
― 物語が進むにつれて理央の印象が変わっていきます。
そうなんです。それを映画の中でしっかり描いているということが素晴らしいと思いました。高校生は多感な時期なので、極端にいえば昨日見たドラマの影響で次の日に「人格変わったの?」と思えるくらい変化することがある。何かに感化されて今までやらなかったことを急にやってみたりとか。それで成功したり失敗したりしてその後また雰囲気が変わったりするのが、人間らしいですよね。
― 理央を演じていて、ご自身と似ていると思ったことはありましたか?
理央は非常に親和性が高いんです。この作品のキャラクターたちはとても人間的でそれぞれ共感するところがあるのですが、中でも理央は、自分の中で感情が高ぶったときや、これと決めた時は一直線に進むところがあって、僕自身と近いなと思いました。和臣と対比してみると、もし親友と同じ女の子を好きになったとしたら、和臣は親友に譲るのですが理央は自分が好きだと気が付いたら、友達にも「俺も好きになった」と伝えるんです。普通はなかなか言えませんよね。それを言われた相手(同じ女の子を好きだという友達)はどう思うんだろう、宣戦布告になっちゃうのかな、取り合いになって仲が悪くならないかな・・・と考えて動けなくなると思うんです。理央は頭がいいし物事をちゃんと考える人だけれど、気持ちが高ぶったときは動いちゃうんです。色々考えるくせに最後は気持ちで行っちゃう。そんなところが自分と似ているなと思います。
― 多感な感情を演じることで、難しかったことはありましたか?
それが、凄くやりやすかったんです。特に現実に寄せたリアリティのある作品は極力作り込んだりしないで演じます。もちろん台本を読み込んだり、イメージを膨らませたりして何にでも対応できる情報は頭に入れておきますが、実際にどうやるかは現場で感じて決めて、相手の言葉やその場の空気を感じ取って発することが多いです。今回は原作の内容も随所にリアリティを感じて感情移入しやすかったです。黒柳監督もそこに生きている人間を描きたいと仰っていて、僕も常々アニメーションでもそのことを目指していました。アニメのキャラクターですが、ちゃんとそこに生きている一人の人間だということを描きたかった。そして、新人声優の鈴木さん(由奈役)が、非常にストレートに自分が感じたままにピュアな感情を発して、こちらが返したものをそのまま受け取って真っ直ぐ返してくれるという、まさに由奈ちゃんそのものでお芝居をしてくれて、僕も非常にいい影響を受けました。台本を読んだときに自分が思い描いた感情とはまた違う「もっと照れるな」「わ、凄い笑顔になっちゃった」という感情が生まれ、自分の動きも楽しめたので、とても気持ちが乗って演じることができました。
― では、アフレコの現場の雰囲気もよかったのですね。
そうですね。皆さん優しい方ばかりですし、鈴木さんも最初は緊張されていましたが、そんな緊張をほぐすようなメンバーでした。潘さんは最初の朱里と由奈のように、まるでお姉ちゃんのようでしたね(笑)。物語の中で由奈が成長していくように、収録の中で鈴木さんも成長しているようでした。演じる人たちの人間関係やそれぞれの性質がキャラクターに近い部分があったのかもしれません。ほどよい緊張感のなかでリラックスして、とてもいいパフォーマンスができたと思います。
― 完成した映画をご覧になった感想を教えてください。
「ありがとう!」と思いました。やっぱり僕は自分が演じた理央に注目してしまうのですが、「もう理央がずっとキレイ!カッコいい!可愛い!」でしたね(笑)。もともと非常に見目の良い子ではありますが、映像になると僕が想像していた理央のさらに上をいっていました。声の中での細かい動きやお芝居のニュアンスを画と合わせてくださって、もの凄く感動しました。アフレコの時点では完成品に声をあてるのではなく、暫定の画にあてるのですが、ト書きやそこからくみ取れる動きの情報で演じています。説明になくても自然に出た表情や動きが画にマッチしていたんです。きっと、僕が演じた声を聞いて、またそれに合わせて修正してくださったのかも。本当にスタッフさんの尽力を感じました。他にも素晴らしいところがたくさんありますが、これがアニメのいいところ。一人の人物を作り上げていくだけでも、僕は声の部分しか担当していませんが、そこに画を付けてくださる方がいて・・・、色々な方々の力が合わさって作る共同作業なんです。相乗効果で良くしていただいて光栄でした。嬉しかったです。
― 特に映画の中で好きなシーンはありますか?
たくさんありますが、劇中の音楽が映像ととても合っていて好きでした。終盤で理央と由奈がそれぞれの気持ちを伝えようとするシーンは、まさに青春だなと。理央と我妻もとてもフェアな関係で男の友情を感じたし、随所に散りばめられている幻想的な映像がステキなんです。その世界観が馴染む演出が積み重ねられていたなと思います。
― この作品は先に実写版も公開されています。同じ時期に公開されるということで特に意識されましたか?
同じ原作を取り扱っても、どのリアリティを求めるのか、どこを突きつめるかはそれぞれですし、実写とアニメという媒体も違うので特に意識することはありませんでした。それぞれ別作品としながらも相乗効果で盛り上がったらいいなと思っています。今回、同じ理央役の北村匠海さんと対談をさせていただく機会があったのですが、これが非常に楽しかったんです。同じ理央という人間をそれぞれ役者として突き詰めているから、話が合ってもの凄く盛り上がって。「理央ってこういう子だよね」「一見、こう見えるけど奥底ではこうだよね」「彼はここで変わったよね」など、共通するところがたくさんあって本当に話が弾みました。まるで共通の親友がいる友人みたいな感じになって、めちゃくちゃ嬉しかったです。自分も間違ってなかったと確認することもできましたしね。僕も実写版を拝見しましたが、非常に面白かったです。特に「俺、こっち」のシーンがとてもリアルで好きでした。原作をちゃんと生きている人間の現実として落とし込んで自然に演じられていてステキでした。トキメキました。
― では、アニメーションとしての本作の魅力は何だと思われますか?
表現できる幅が広くて、何気ないシーンでも音楽を豪華にすることができることかな。同じ音楽を実写で音楽をかけたら完全にバランスが崩れてしまうんです。あとはファンタジーな画がバックに流れても、アニメだからこそその豪華さが成立する。アニメーションはリアリティの追求だと思っています。必ずしも現実に寄せる必要性はなくて、それぞれの作品ごとにその作品の世界がより現実的になるのです。この作品はかなり現実寄りのリアリティを突き詰めてはいますが、アニメだからこそできるファンタジーや、非リアルを表現できるところがとても面白いですね。現実では感情によって空の色は変わらないし、都合よく雨は降ってくれない。世界の表情までも描くことができることがアニメーションの素晴らしいところだと思っています。キャラクターはもちろんですが、背景や音楽など作品の世界を構築する全ての要素をご覧いただく皆さんにぜひ感じてもらいたいです。僕はこの共同作業が好きですし、だからこそ“声優”が好きなんです。今回の作品は特に共同作業の一体感を感じました。
― 心情がファンタジーな映像で出てくることがリアリティという意味なんですね。
そうなんです。実写で画面いっぱいに花が咲く演出をやると、ちょっとギャグ色が濃くなっちゃうかもしれないけれど、アニメだと普通に見ることができますしね。
― 高校を舞台にした本作ですが、島﨑さんはどんな高校生でしたか?
僕は男子校だったんです。だから、高校生の男女の関係は声優になってからたくさん経験しています(笑)。毎回新鮮な気持ちで臨みますし、毎回トキメキます。自分が高校時代にこういう経験をしていないからこそ、余計に思い入れがあるかもしれません。男子校だったからバカやってましたよ(笑)。異性の目がないですから。やっぱり異性の目があるかないかで過ごし方が変わると思います。(異性の目がないのは)楽でよかったですけどね。(笑)
― タイプの違う朱里ちゃんと由奈ちゃんですが、島﨑さんが好きになるのはどちらのタイプですか?
由奈ちゃんです。憧れますね。由奈ちゃんは大人になればなるほど、失いがちな真っ直ぐさやピュアさを持ち続けるとても芯の強い子で、自分もそうありたいなと思うし尊敬します。恋愛的に惹かれるかということを別にしても人間的に絶対に惹かれると思います。由奈ちゃんみたいな子は貴重かも。そういうピュアなところを持ち合わせて表面に出ている人は大好きですね。朱里ちゃんにもいいところがたくさんあってたくさん共感できるところがありますが、朱里ちゃんにはちょっと自分が先輩みたいな感じになっちゃうかも(笑)。
― 島﨑さんは由奈ちゃんのように、ふられるとわかっていても自分から告白できますか?
う~ん(しばらく考えて)、どちらかというと告白できるタイプです。もう少し若かったら何も気にしないで告白していると思うけど、今だと告白することによって相手がどう思うんだろうとか、今後の関係性を考えてしまう。本当は理央のように周りを見て色々考えても、いざ気持ちが高ぶると一直線になってしまうところがあるんです。いっぱい考えても結論は感情でやっちゃった・・・みたいな(笑)。ただ、今はそこで告白しなくても(自分の中で)消化する術が昔よりあるので、”しょうか“は消化もあるけれど、昇華のほうの”しょうか“だったら告白しなくてもいいかなと。あと、告白しないでずっと片想いの気持ちを持つのも演技の役に立つかなと思うと、急いで告白しなくても・・・とか、いろいろあるので自分がどういう行動をとるか本当にわからないですね(笑)。
― 今を生きる高校生の皆さんに何か伝えたいことはありますか?
この作品を観ると、絶対に動きたくなると思います。伝えること、発信することの大切さ、コミュニケーション取りたいと思うこと、そんなことが恋につながるかもしれないし、何かに夢中になるかもしれない。前向きになれる作品で、得られるものがたくさんあると思います。今は物理的な距離をとらなくてはいけないけれど、心のコミュニケーションをどう取るかがとても大事。心が密になる作品なので、よりよい青春に生かしてもらえたら嬉しいです。
― 最後に本作をご覧になる皆さんへメッセージをお願いします。
原作は少女漫画で、テーマも高校生の思春期の4人の物語ですが、この『思い、思われ、ふり、ふられ』は老若男女問わずどなたでも楽しめる作品だと、自分が観て実感しました。一人一人がとても人間的なんです。もちろんアニメーション的な演出はありますが、誰しもが共感できることがたくさんあります。朱里ちゃんは少し社会人的なところがあって、少女と大人の間の揺らぎを感じるし、由奈ちゃんは逆に大人になるにつれて失われていくピュアさを持ち続けている。この二人の心情もとても人間らしくていいなと思います。両親もちゃんと一人の生きた人間として描かれています。観ていただければきっと皆さんの心に何か残ると思いますし、皆さんがこれからより良く生きるための材料になると思います。
【島﨑信長(しまざき・のぶなが)プロフィール】
12月6日生まれ、宮城県出身。主な出演作品は、「Free!」(七瀬遙)、「ダイヤのA」(降谷暁)、「ソードアート・オンライン アリシゼーション」(ユージオ)など。
2013年、『第7 回声優アワード』で、新人男優賞を受賞。
撮影:ナカムラヨシノーブ
アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』
<STORY>
偶然出会ったタイプの全く違う【朱里】と【由奈】、朱里の義理の弟の【理央】と由奈の幼馴染の【和臣】は同じマンションに住み同じ学校に通う高校1年生。理央に憧れる由奈、朱里に言えない想いを抱える理央、秘密を抱える朱里、ある秘密を目撃してしまった和臣。
それぞれの思いは複雑に絡み合い、相手を思えば思うほどすれ違っていき――
切なすぎる恋が動き出す。
原作:咲坂伊緒「思い、思われ、ふり、ふられ」(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:黒柳トシマサ(「舟を編む」)
脚本:吉田恵里香
キャスト:島﨑信長 斉藤壮馬 潘めぐみ 鈴木毬花
井上喜久子 田中秀幸 久川綾 井上和彦 堀江瞬 佐倉綾音
主題歌:BUMP OF CHIKEN「Gravity」(TOY’S FACTORY)
アニメーション制作:A-1 Pictures
映画公式サイト:https://furifura-movie-animation.jp/
コピーライト:© 2020 アニメ映画「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会 © 咲坂伊緒/集英社
9月18日(金)全国公開