映画『はじまりの日』の完成披露舞台挨拶が、9月9日に東京・渋谷のユーロライブにて行われ、W主演の中村耕一(ex JAYWALK)と遥海、監督の日比遊一が登壇した。
かつて一世を風靡したロックスターと、未来の歌姫という世代を超えたコントラストの中で、再び光を放つことへの優しい視線と自信を小さな一歩へ変える勇気を描く本作は、モントリオール映画祭で最優秀ドキュメンタリーを受賞した『健さん』、故・樹木希林さんが企画・出演した『エリカ 38』などで注目を集める日比遊一監督の最新作。従来のミュージカル映画とは一線を画し、フィルム撮影にこだわった抒情的な映像と魂の歌声で紡ぐ大人のための音楽ファンタジー。アーティストにして73歳で初演技に挑む、中村耕一(ex JAYWALK)と 同じく新進のアーティスト遥海がW主演を務める。
40年くらい海外に住んでいた日比監督は、JAYWALKの存在も遥海の存在も全く知らなかったという。しかし、「あるきっかけで中村さんの歌を聴く機会があって、その時もの凄く感動して。いつか歌の力を問うような映画を作りたいと思っていたので、1度会っていただけませんか?とお願いしました。(映画出演の)オファーをしたんですが、3回断られまして・・・。しつこくお話をさせていただいて最後に納得していただいたんです」とキャスティングの裏話を吐露。
ex JAYWALKのボーカリストとしてミリオンヒットを飛ばし、「何も言えなくて・・・夏」にて日本レコード大賞を受賞したロックスター・中村耕一。オファーを受け「僕は単純に“演技はできない”とお断りしたんです。絶対に無理だと思って」と最初は断ったそうだが、「3回目のときに台本を持ってきてくださって、それが凄く内容な良かったんです。でも、無理だと(笑)」と、なかなかOKは出さなかった。そして、「4回目のときに、『セリフをなくしました』と。『中村さんは演技しないでください。そのままの素でいてください』と。演技しなくていいんだ」と心を揺るがされ、承諾。そして、「僕にはやっぱり歌が全てなんです。奇跡に近いこの体験をできたことを、歌に変えればいいなと、期待が生まれたんです」と、納得した様子。
遥海については「7~8年くらい前にYou Tubeを見ていて、歌の上手い子がいるなと思っていたんです。映画では、まだ無名で心に刺さるような声の持ち主の女の子がいいと思って。そのときに遥海ちゃんを紹介されたら、以前見ていた子と同じだったんです」と明かし、中村と遥海の運命的な出会いに感謝した。
遥海は「ちょうどコロナ禍だったので、当たり前のように色んなことが中止になっていたし、期待した分、ダメになったらがっかりしてしまうと思って、オファーを信じていませんでした」と出演には消極的だったそう。それでも「台本をいただいて、もの凄く女役の人生に共感して。そして中村さんと一緒に歌うなんて・・・。クランクインまで信じていない自分がいました(笑)」と出演を快諾。
撮影にもかなりのこだわりを見せた日比監督。遥海が見せるミュージカル的なシーンでは、愛知県名古屋の中部電力 MIRAI TOWERでロケを遂行。1年かけて撮影許可を取ったという監督。遥海は「ファンタジーな体験をさせていただいて、本当に楽しかったです」と充実感に満面の笑み。
中村はギターの弾き語りを披露しているが「監督にフィルムだから一発で決めないとダメだと言われて。僕的には力が入りすぎて失敗しちゃったと思っているんですけど」と苦笑い。それでも監督は「一発撮り、一発のライブを大切にしました」と、胸を張る。
また、映画のタイトル『はじまりの日』にちなみ、自身のターニングポイントになったことを問われた、遥海は「13歳のときに初めて日本にきたとき」と即答。「人生が180度変わった。シンガーになる夢があったけれど、日本語ができなくてそれどころじゃなかった。でも、あの時があったから今回の映画でもその経験したものが形になったと思います」と説明する。
中村は、東日本大震災のときの出来事について言及し、「1人でいた女性から『あなたには歌があるでしょ? 歌を頑張りなさい』と言われたんです。彼女の言葉が背中を押してくれて、もう一度“歌”について向き合うきっかけになりました。僕のターニングポイントになりましたね」と回顧した。
監督は「僕はずっと松田優作さんの背中を追っていたんですが39歳の時に大病をしまして。ちょうど優作さんが亡くなれた39歳で。そのときに“後悔”という字が降りてきたんです。奇跡的に助かりましたが、3~4年入院していたときに書きとめていた脚本が僕の処女作になります。それが僕の『はじまりの日』です」と話した。
舞台挨拶の終盤には、映画の完成を祝って会場に駆けつけた小倉智昭が舞台上に。小倉とは14年ぶりとなる再会に中村は感激しきり。小倉は「JAYWALKは今でも好き。遥海ちゃんも凄い女の子がいると聞いていました。この2人が共演するなんて考えてもいなかった。映画を楽しみにしています」と、奇跡の出会いにエールを送る。
最後に日々監督は「以前、樹木希林さんから『あなたの仕事は作品を撮るだけじゃないんだよ。1人でも多くの人に観てもらうことまでが映画監督としての仕事』と言われました。今日もそういう気持ちで参りました。ぜひ、映画を観て何かを感じたら周りの方にも伝えていただきたいです。いろんな年齢層に刺さるメッセージがあると信じております」と話し、遥海は「夢を持つ人にこの映画を届けたいです。何歳になっても夢は見ていい。そして出会いで人生が変わる。それがこの映画には反映されていると思います」と力をこめる。
そして、中村が「僕は、撮影中にかつてないぐらい、気持ちが穏やかでした。撮影は朝早くから夜遅くまでできつかったんですけど(笑)。“諦めない”って大事。叶わないこともたくさんあるけれど、あきらめなければ再生はできる。それを感じてもらえたら」とメッセージを送った。
映画『はじまりの日』
【STORY】
かつてロックスターとして一世を風靡した「男」(中村耕一)。ある事件がきっかけで、音楽を封印し、ビルの清掃会社で働きながら質素に暮らしている。仕事場とアパートを往復し、生きる意味を問う事すらしない男の日々。かつて男のファンだった同僚の寺田(山口智充)が唯一心ゆるせる相手だ。男の隣人は会社の同僚の「女」(遥海)だった。夜な夜な女と母親(高岡早紀)の激しいやり取りが男の部屋に響き渡ってくる。ある日、公園で一人口ずさむ女の歌声に大きく心を揺さぶられる男。それをきっかけに男の日々は、ゆっくりと動き出す。男は、女の才能を確信し、昔の同僚である音楽プロデューサーの矢吹(竹中直人)にその歌を聴くよう頭を下げる。矢吹に断られながらも通い詰める男。女の可能性を信じたアシスタント望月(岡崎紗絵)のサポートもあり、女は次第にチャンスを掴んでいく。そして男もまた自分の歌が、他人の心に灯をともすことに気づかされる出来事が…
【キャスト】
中村耕一 遥海
高岡早紀 山口智充 岡崎紗絵 羽場裕一/尚玄 鈴木美羽 穴倉秀磨
秋野暢子 麿赤兒/竹中直人
【スタッフ】
監督・脚本・プロデュース:日比遊一 プロデューサー:増田悟司 右近和紗 岡村徹也
アソシエイトプロデューサー:フランク・デ・ルーカ 加藤 剛嗣
ラインプロデューサー:大藏 穣
劇中歌プロデュース:Mayu Wakisaka (ソニー・ミュージックパブリッシング)
特別協賛:株式会社三清社/偕行会グループ/タケウチビユーテー株式会社/株式会社インフォファーム
協力:愛知県/名古屋市
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作プロダクション:ジジックス・スタジオ 2024/日本/カラー/107分/PG12
公式サイト:hajimarinohi.jp
©︎ジジックス・スタジオ
10月11日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー!
(10月5日(土)ミッドランドスクエア シネマ名古屋 先行)
◆予告編