映画『破戒』の完成披露舞台挨拶が、6月13日、東京・丸の内TOEIにて行われ、主演の間宮祥太朗をはじめ、共演の石井杏奈、矢本悠馬と、前田和男監督が登壇した。
本作は、1948年に木下恵介監督、1962年に市川崑監督が映画化した、島崎藤村の不朽の名作「破戒」を60 年の時を経て再び映画化。
主人公・丑松を間宮祥太朗が演じ、自らの出自に苦悩し、最後にはある告白をする姿を気迫溢れる演技で観る者を惹きつける。丑松に恋心を寄せつつも、なかなか思いを告げられない控えめな女性・志保を石井杏奈、悩める丑松を支える親友・土屋銀之助役を矢本悠馬。さらに、眞島秀和、高橋和也、竹中直人、本田博太郎、田中要次、石橋蓮司、大東駿介、小林綾子など日本映画界を代表する名優たちが顔を揃えた。脚本は加藤正人と木田紀生が担当し、監督は『発熱天使』や『みみをすます』の前田和男が務め、かつての名作を、2022 年の現代に届ける。
この日は夏らしく浴衣姿で登場した登壇者たち。丑松に近い姿で「そのまま映画に入っていただけたら」と雰囲気を醸し出していた間宮は、本作の出演オファーを受けて「100年以上前の原作で、過去にも映画化されている作品を60年ぶりに、いま映画化する意味はどこにあるのだろうと疑問に思いまして」と最初は不思議に感じたようだが、「原作と脚本を読んで、今の世の中のことを思い巡らせてみると、今この『破戒』を上映させる意味が凄く納得できたので、ぜひ参加したいなと思いました」と経緯を説明。前2作も観たそうだが、「自分の撮影中は影響しないようにあとで観ました」と話した。
完成作品を観て「今までこの仕事をしてきて、一番シンプルに“いい映画だな”と思えて、凄く幸せでした」と感想を吐露。
石井も「私も凄く好きな作品でした」と同調し、「23歳の自分にも凄く響いた作品だったので、同じ20代の方が観てもきっと届くと思いました。通じるものがたくさん詰まっている映画でした」としみじみ。
その言葉に間宮は「丑松と志保が目が会うだけで・・・奥ゆかしくていいんですよ。観ていただければわかると思います(笑)」と言葉少なめに、二人の関係値について言及する。
この作品を“ロミオとジュリエット”と称える前田監督だが、「『ロミオとジュリエット』は悲劇ですが、この映画は些細な希望が持てるんです」と、美しくもありながら決して悲劇ではないと語る。「この恋は実にいい距離感なんです」とニッコリ。
一方、丑松の親友・銀之助を演じた矢本は、「お客様はきっと僕が演じた土屋銀之助の目線でこの映画を観ていくと思います。映画を観終わって、劇場をでてからの人生にきっと影響を与え、何かのきっかけになる作品だと思うので、噛みしめていただけたら嬉しいです」とコメント。
矢本と間宮とは何度となく友人役で共演しているが、「何度目だよ!っていう話ですよね」と笑う間宮。それでも「ただ仲がいいということはなくて、丑松にとって銀之助の(存在の)大きさが分かると思います。このキャスティングを聞いたときに“間違いない!”って思いました」と。プライベートでも友人関係なので、矢本も「ゼロから親友度を作りあげることなく、何もせず銀之助になれて、ストレスなく芝居に集中できました」と振り返り、「最高の仕上がりになっていると思います」と自信をのぞかせた。それでも「仕事場に友達がいるって恥ずかしいですよね」と照れていた。
そんな二人を見て、石井は「時代劇で京都での撮影だったので、緊張していたんですが、明るいお二人がリラックスした雰囲気を作っていてくださって。矢本さんとは5年ぶりの共演ですが、変わらない明るさで救われました」と笑顔。「間宮さんは(撮影後の)取材を一緒に受けてこの作品への思いを聞いて“さすが!主演だな”と思いました」と感心しきり。現場では役がらの関係がありあまり話をすることはなかったと言い、役に集中していた様子。
監督は間宮について「キーワードは”美しい”」とキッパリ。「次元が違う。たぶん、過去の市川雷蔵さんや池部良さんとは全く違う次元に行っている。どっちがいいということじゃないんです。丑松が追い詰められれば追い詰められるほど、不安が増せば増すほど美しさが増してくる!」と絶賛。
「まあ、最近はアドレナリンが出まくりみたいですけどね(笑)」とドラマに出演中の間宮に触れると、間宮も「特に今はね(笑)」と返し、会場の笑いを誘う場面も。
石井については「根性ある女性を見事に演じてくれました」と称え、矢本には「一番泣けるシーンが矢本さんのシーン。何度泣いたことか・・・」と褒めちぎると、「今日、メシが美味いっすよ!ありがとうございます!」とご満悦だった。
最後に、石井は「若い世代の方にもぜひ観て欲しいです。私はこの映画を観て、ありのままで生きていたいと思えたので。今観ていただきたい」と述べ、矢本は「夏目漱石さんが『風化せず後世に残る作品だ』と仰っていた。60年ぶりに映画化される意味がある。この映画を観て何か1つ持ち帰ってほしいと思います」と。
前田監督は「明治時代、時代劇ではありますが、リアリティがある作品です。希望があればうつ向かないで歩いていける。その先にあるのは100年後の我々。我々がその意思を受け継いでいくことが映画『破戒』という約束の映画だと思っています」と思いの丈を伝え、間宮は「僕らもお客様も、一人ひとりの中に世界が存在していて、世界で起こっていることはそれを見る視点は自分の中にしかないと思うんです。丑松の中にしかない、銀之助にしかない世界がある。この作品はその世界の事実を変える、自分の世界に影響を及ぼす映画だと。この映画が大事な人に勧めらえる映画であってほしいなと思います」とメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。
『破戒』
<ストーリー>
この戒めを破り、明日を生きる ――
瀬川丑松(間宮祥太朗)は、自分が被差別部落出身ということを隠して、地元を離れ、ある小学校の教員として奉職する。彼は、その出自を隠し通すよう、亡くなった父からの強い戒めを受けていた。
彼は生徒に慕われる良い教師だったが、出自を隠していることに悩み、また、差別の現状を体験することで心を乱し、下宿先の士族出身の女性・志保(石井杏奈)との恋に心を焦がしていた。
友人の同僚教師・銀之助(矢本悠馬)の支えはあったが、学校では丑松の出自についての疑念も抱かれ始め、丑松の立場は危ういものになっていく。苦しみのなか丑松は、被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎(眞島秀和)に傾倒していく。
猪子宛に手紙を書いたところ、思いがけず猪子と対面する機会を得るが、丑松は猪子にすら、自分の出自をカミングアウトすることができなかった。そんな中、猪子の演説会が開かれる。
丑松は、「人間はみな等しく尊厳をもつものだ」という猪子の言葉に強い感動を覚えるが、猪子は演説後、政敵の放った凶刃により命を落とす。
この事件がキッカケとなり、丑松はある決意を胸に、教え子たちが待つ最後の教壇へ立とうとする。
キャスト:間宮祥太朗 石井杏奈 矢本悠馬 高橋和也 小林綾子 七瀬 公 ウーイェイよしたか(スマイル) 大東駿介
竹中直人 / 本田博太郎 / 田中要次 石橋蓮司 眞島秀和
企画・製作:全国水平社創立100周年記念映画製作委員会
制作:東映株式会社
制作協力・配給/宣伝:東映ビデオ株式会社
制作プロダクション:東映株式会社京都撮影所 上映時間:119分
原作:島崎藤村『破戒』
脚本:加藤正人/木田紀生
監督:前田和男
音楽:かみむら周平
©全国水平社創立100周年記念映画製作委員会
公式ウェブサイト http://hakai-movie.com/
公式Twitter:@hakai_movie
公式Facebook:@hakaimovie
7月8日(金)丸の内TOEIほか全国公開