映画『花腐し』の完成披露上映イベントが、10月1日、東京・テアトル新宿にて行われ、主演の綾野剛をはじめ、共演の柄本佑、さとうほなみと、荒井晴彦監督が舞台挨拶に登壇した。
『火口のふたり』(19)に続く、荒井晴彦の4作目の監督作品となる本作は、芥川賞受賞の松浦寿輝による同名小説に“ピンク映画へのレクイエム”というモチーフを大胆に取り込んだ、原作“超訳”に挑んだ意欲作。斜陽の一途にあるピンク映画業界を舞台に、映画を夢見たふたりの男とひとりの女が織りなす、切なくも純粋な愛の物語。映画監督・栩谷(くたに)を綾野剛、かつてシナリオを書いていた脚本家志望の伊関を柄本佑、ふたりを愛した女優・祥子をさとうほなみが演じる。
観客の温かい拍手と歓声に迎えられて登場した登壇者たち。綾野は「皆さんに届けたい映画が出来上がりました」と自信をのぞかせ、東京での初披露に「この作品をどのように受け取っていただけるかということもありますが、ご覧いただけることは素直に嬉しいです」と笑顔を見せた。
柄本は「「今日、ここに向かってくる途中でちょっと雨が降り始めました。皆さんがこの映画を見終わって外に出た時に、雨なのか・・・と思ったら非常に羨ましいです」と、雨が印象に残る本作にちなんで挨拶した。
さとうは「絶対に楽しい映画。期待してもいいと思います」と期待を煽り、荒井監督は「横にいる3人と、スタッフのおかげで自分の好きな映画をつくることができました」と満足げ。
舞台挨拶の冒頭では、8月に開催された湯布院映画祭にて本作が上映されたことを振り返り、「1時間以上、90分くらいかな。映画上映後に映画人と観客が直接意見を交換するシンポジウムがあるんです。色々な意見が出て。辛辣な意見も(笑)」と監督。
映画祭に参加したさとうは「本当に独特な映画祭で、面白い映画祭でした。今日も皆さんと一緒にシンポジウムをやりましょうか?」と声をかける。柄本は「今回はけっこう好意的な感想が多かったですが、辛らつな意見も飛び出すこともあるので、けっこう緊張するんです(笑)」と明かす。
今回参加できなかった綾野は「しびれますね。対話が生まれるのはいいですね。参加したかったなぁ」と羨ましがっていた。
本作の脚本を初めて読んだときを振り返り、綾野は「まず脚本の段階で出来上がっていました。『これを実写化するのか』という畏怖心みたいなものがあったんですけど、これぞ脚本というものに久々に出会ってしまった。それ以上に荒井組として映画の中に飛び込みたいという思いでした。そして佑くんとほなみさんと一緒にその時間を過ごしたいという思いの方が勝って思い切って飛び込んでしまいました。楽しかったですね」と充実感をのぞかせる。
柄本も「僕も面白いなと思いました」と続け、「ネタバレになっちゃうんで、あまり言えないんですけど、荒井さん、『いよいよそこにいくのか』と、ワクワクしました。そんな作品に参加できて非常に光栄です」とニッコリ。
オーディションで役を得たさとうは「オーディションの時には、脚本は二つのシーンだけでしたが、それだけで『花腐し』がたくさん詰まっていて、その時点で心を掴まれていました」と回顧。激しい絡みのシーンもあるが、「転んだりする場面もあるんですが、綾野さんが細かくアクション監督のごとく教えてくださって助かりました」と感謝すると、柄本も「アクションコーディネーターとクレジットを入れてもらわないとね」と、綾野の気遣いを称えていた。
柄本との共演について、綾野は「単純に僕が佑くんのファンということもありますが、(柄本の)セリフの初速の速さというか、迷わずポンっと出てくる感じに圧倒されて、“まずいな”と。現場ではほなみさんもそうですが、そのエンジンの大きさに一緒に載せてもらっているうちに自然な関係になれた気がします」としみじみ。さらに「(柄本は)声が芳醇で、とてもうっとりました」と惚れ惚れしていた。
一方の柄本も、「僕も本読みの時に、荒井さんのセリフと、綾野さんの親和性の高さにビックリして、『ヤバい!』と思ったんですよ。荒井さんのセリフにフィットしている綾野さんの声に焦った記憶があります」と打ち明けつつ、「でもお芝居が始まると、初めてとは思えないくらい、すんなりと始まった感じでした」と述懐した。
すると、思い出したかのように綾野が、「実は今日発覚したんですけど、二人とも2003年デビューで同僚だったんです。すごいですよね」と言い加え、顔を合わせて笑った。
また、本作の見どころでもある雨のシーンについても言及し、綾野は「ずぶ濡れでしたね」と苦笑い。柄本も「雨のシーンって、カメラの手前の人物だけに雨を降らせていたりするので、よく見ると奥の方は晴れていたり、地面が濡れてないと感じることもあるのですが、本作ではそういうあら捜しをしても見つからないです」とニヤリ。50メートル先まで大雨を降らして撮影したそうで、柄本は「しかもモノクロなので、普段の1.5倍くらい降らさないと画面に映らない。だから画面に見えているよりももっと降っています。雨を降らせる側もたのしいでしょう(笑)」と、その迫力を強調。綾野も「まさに職人技ですね」と同調していた。
映画『花腐し』
出演:綾野 剛 柄本 佑 さとうほなみ
吉岡睦雄、川瀬陽太、MINAMO、Nia、マキタスポーツ、山崎ハコ、赤座美代子/奥田瑛二
監督:荒井晴彦 原作:松浦寿輝『花腐し』(講談社文庫)
脚本:荒井晴彦 中野太
製作:東映ビデオ、バップ、アークエンタテインメント
制作プロダクション:アークエンタテインメント
配給:東映ビデオ
2023年/日本/137分/5.1ch/ビスタ/モノクロ・カラー/デジタル
R18+
©2023「花腐し」製作委員会
公式HP:hanakutashi.com
X(旧Twitter):@Hanakutashi1110
11月10日(金)テアトル新宿ほか全国公開