どうにもならない現実やSNSに翻弄されながらも全力で向き合う高校生たちの姿をリアルかつユーモアに描く『#ハンド全力』が、いよいよ7月24日(金)より熊本先行、7月31日(金)から全国公開する。
熊本地震をきっかけにハンドボールをやめた高校生のマサオが、たまたまSNSに投稿したかつての写真が思いがけずバズったことから、「#ハンド全力」というハッシュタグで復興の盛り上げ役となり、仲間たちとハンドボールを通して「今」を生きる自分たちを全力で発信していく青春コメディ。
マサオたちが頑張る姿は、今の日本に一層元気と勇気を与えてくれる作品だ。
この度、加藤清史郎さん演じるマサオの幼馴染・岡本を絶妙なバディ感で軽やかに演じた醍醐虎汰朗さんにインタビューを遂行! 作品への思いと、彼の「今」について話を聞いた。
― 本作の役はオーディションで決まったとのことですが、その時の様子をお聞かせいただけますか?
オーディションの時には4~5の役があって全てやりましたが、結果的に岡本役になりました。
― 醍醐さんご自身は岡本役が一番しっくりきていたのでしょうか?
いえ、キャラクターが僕と違うと思ったので、岡本役はないんじゃないかなと思っていました。でも、演じる上で魅力的な役ですし、意外性もあるので決まって嬉しかったです。
― 岡本はポロシャツにメガネというおぼっちゃま風のスタイルですが、どのように衣装を決めたのですか?
衣装については監督のこだわりがあったようで、何パターンか試してみて「こっちのほうが岡本っぽいね・・・」と話し合いをしながら決めました。マサオとのコントラストが出るように意識しました。
― では、最初に脚本を読んだときの感想を教えてください。
とても松居監督らしい世界観が広がっていると思いました。青春映画ですが、煌びやかな青春というよりは、ひねくれ者の集まりが頑張って青春しているリアルな世界観が面白い。個性豊かなキャラクターが揃っていて、一人一人が突出しているのでアニメのキャラに近いなという印象でした。
― 岡本を演じるにあたり松居監督から特に要望などありましたか?
それが、あまりなかったんです。演じる前に少しディスカッションをしましたが「じゃ、それで」という感じで。松居監督が考えているイメージと僕が考えているものが最初から近かった気がします。
― スポーツはお得意とお聞きしていますが、初めてのハンドボールはいかがでしたか?
最初から上手くいきました(笑)。もともと運動神経には自信があるので、チームの中では少しだけ習得するのが早かったようです。でも、岡本は真逆なタイプで一番下手なので、練習の休み時間に転ぶ練習をしたり、他の人が失敗しているところを観察したりして演技に取り入れていました。
― スポーツが上手な人が下手な演技をするのは逆に難しかったのでは?
そうですね。最後の方で上手くボールをキャッチするところがあるんですが、そちらのほうが素に近かったかもしれません(笑)。
― これまでも、舞台では「弱虫ペダル」や「ハイキュー」に出演されて、部活に熱中する青年役を演じられていますが、ハンドボールならではの魅力はありますか? また舞台ではなく映像だからこそ表現できたことなどありますか?
ハンドボールは他のスポーツに比べてメジャーではないイメージがある競技です。僕もこの作品に参加するまでよく知りませんでした。指に粘着テープを巻いてプレイするんですが、最初は投げようとしても上手くボールが離れないんです。バスケットとドッチボールとサッカーが融合したようなスポーツで、新感覚のものに飛び込んだような感じでした。慣れるところからスタートしましたが、球も(バスケットボールやバレーボールに比べて)小さくて速い球を投げることもできるし、動きも素早いのでスピード感があって楽しかったです。
― 同じスポーツを演じても、舞台と映像では違いはありましたか?
舞台の「弱虫ペダル」では、ハンドルしか持たないですし、「ハイキュー」もあまりボールを使うことはないんです。実写映像は実際に(競技を)行うので、お芝居はやりやすかったです。僕はリアルのほうが得意かも (笑)。
― 演じていく上で7人のチームワークがとても大事だったと思いますが、今回は皆さんと初共演ですね。どのように仲良くなっていったのでしょうか?
全員が「初めまして」でしたが、歳も近かったし1日で仲良くなりました。最初はハンドボールの練習から始めたんです。体育館を借りて実際にプロのコーチから指導を受けて練習しましたが、初日からご飯も一緒に食べに行きました。熊本で2~3週間泊まり込みで撮影したので、部活の合宿のようでした。夜には誰かの部屋に行ってスマブラ(ゲーム)大会をしたり、本当にみんな仲良くて・・・撮影期間が懐かしいです。
― 今回の出演者には加藤清史郎や鈴木福さんなど、子役から活躍されている俳優さんもいらっしゃいます。共演されて何か刺激を受けることはありましたか?
清史郎は考えていることが凄く大人だなと思いました。いろんな事について深く考えるタイプですね。清史郎は “こども店長” (トヨタ自動車のCMに出演)、福くんはドラマ「マルモのおきて」のイメージが強くて、二人とも現場でよくそのことが話題になっていました。福くんのモノマネが流行っていて、(モノマネをしながら)「やめてくださいよぉ~」って言って盛り上がっていました(笑)。二人とも僕より年下ですがキャリアを積んできているだけあって、とてもしっかりしていて輝いているので刺激になりました。
― 物語の舞台は熊本です。撮影も熊本でオールロケだったそうですが、実際に復興の中にある熊本に行かれていかがでしたか?
仮設住宅のシーンでは、実際にお住まいになっているところをお借りして撮影させていただいたのですが、今でも仮設住宅には多くの方々が住まれていて、凄く生活感がありました。不自由な生活をされていると思いますが、それでも皆さんとても明るくお元気で。でも、こういう現実に目を背けてはいけないなと、自分の目と肌で感じて思いました。
― 熊本地震から3年くらい経ち、どうしても世間の関心が少し薄れてしまっている時期かもしれませんね・・・。
そうですね。僕自身もそうでした。実際に現地に行って現状を目のあたりにすると、忘れてはいけないなと身が引き締まる思いでした。ちゃんと(そういう現実を)理解しながら普段の生活をしていくことはとても大切だと考えました。
― 実際に仮設住宅にお住まいの方々とお話などされたのですか?
仮設住宅の近くに皆さんが集まるコミュニティー所ではお話をさせていただきました。もう本当にみなさんが温かく出迎えてくださって。スープなど作ってくださって「あったかいなぁ」って思いながら頂きました。本当に美味しかったです。貴重な体験でした。
― 本作は、SNSへの投稿が軸となって物語が進んでいきますが、醍醐さんご自身はSNSの付き合い方や使い方で気を付けていることはありますか?
以前はあまりSNSに興味がなくて、僕とは遠い世界だと思っていたんです。でも、最近は自分もSNSを始めました。ただ、SNSは不特定多数の人が見るので、言葉遣いや発言には気をつけるようにしています。
― 劇中にもSNSに懐疑的な女子ハンドボール部員の子もいましたね。醍醐さんご自身はどちらかというと、その感覚ですか?
はい、近いです。蒔田彩珠ちゃん演じる黒澤ですね。僕は圧倒的にそちらのタイプです。本当に真面目にスポーツをする! もしも劇中の男子たちのような人たちが同じ部活にいたらブチ切れますよ(笑)。
― では、役として理解をして演じていた?
そもそもの目的がスポーツをすることではなく、SNSをバズらせるための手段でしたから。それならそうなるよな・・・と理解はできました。でも、岡本は本当に僕とは真逆な男でしたね(笑)。
― 撮影中に一番印象に残ったシーンはありますか?
ハンドボール部全員で体育館倉庫でケンカするシーンです。同世代の役者が集まってそういうシーンを撮るのが初めてだったのですが、思っていた以上の緊張感が現場に漂っていたんです。いい空気感が出ていたので演じていて楽しかったです。あと、銭湯のシーン。みんな裸なので前貼りをつけるんですが、ある1人の前貼りをみんなで剥がすという遊びをしていました(笑)。でも、最終的には誰も付けてなかったんじゃないかな? スタッフさん困ったんじゃないかなぁ(笑)。楽しかったです!
― 撮影中の合間も皆さんでわちゃわちゃしてたんですか?
めちゃくちゃ、わちゃわちゃしていた記憶があります。でも、何してたんだろう・・・。思い出せないくらいくだらないことをずっとやっていましたね。清史郎とは今でも仲良くて、よく家に遊びに来るんですが、現場では清史郎にひたすらモノマネをさせたりして(笑)。ご飯を食べ終わったあとに「“ごちそうさまでした”をサンシャイン池崎さんの“イエーイ!”のボリュームでやって!」とか、毎日やってました。映画の世界観のまま遊んでいました。
― 大人のキャストの皆さんも豪華です。ご一緒されていかがでしたか?
(仲野)太賀さんにはご飯に連れて行ってもらいました。ここではちょっと言えないけど(笑)、学生時代の話をしてくれたり、面白いお兄ちゃんでした。大人のキャストの皆さんは実力派の方ばかりで、本当に素晴らしい方々に囲まれて幸せでした。
― 映画のタイトルにも “全力”という言葉がありますが、醍醐さんにとっての全力とは何でしょうか?
経験上、自分が“全力でやっている”“自分は頑張っている”と思っているうちは、まだ全力を出していない気がします。何も考えずに必死になって突き進んでいる時が僕にとっての“全力”だと思います。
― 中学のサッカー部を引退したあとに、芸能界に進むことを決められたそうですが、その時に迷いとかはなかったですか?
僕は思い立ったらすぐに行動してしまうタイプなので、現在の事務所に決まったときに「高校は芸能コースに行こう」と思いました。それまでサッカーを9年間続けてきたのですが、何の迷いもなく決めました。
― 芸能界に進もうと思った一番の理由は?
当時はやりたいことが決まっていなかったし、ちょっとモテたいな・・・みたいな子供っぽい気持ちもあったかもしれません(笑)。あと、テレビに出ている俳優さんがキラキラしていてステキだなという憧れもあったと思います。
― デビューされて4年間、順調に進まれていると思いますが、挫折を感じることなどあったのでしょうか?
オーディションはめちゃくちゃ落ちてますよ。でも、「辞める」という感情よりも「よし、やってやろう」と前向きになるほうですね。あと一歩のところで届かなかったときに一度だけ「向いてないのかなぁ」と思ったことはありました。ちょうど俳優の萩原利久くんと遊ぶ約束をしていたんですが、「落ちちゃって遊びに行く気分じゃないので今日は家に帰ります」と連絡したら「どこにいるの?」と僕のところに来てくれて、芝居のことについて色々話してくれたんです。そこでもう一度「やってみよう」と奮起することができました。今でも利久くんには色々支えてもらっています。
― これからも俳優として活躍されていかれると思いますが、どんな俳優になりたいですか?
正直、今はまだ何が理想なのかよくわかっていません。一線で活躍されている方は、やっぱり特別な魅力があるんだと思います。いつか自分もそこに行けるように、今はただ目の前のことを一つ一つ大切にやっていこうと考えています。その結果、僕の理想とする役者さんになれていたらいいなと思います。
― では、最後にあらためて本作の魅力や見どころをお願いします。
とても楽しい作品です。その中にSNSの怖さだったり、熊本地震の復興のことなど、普段僕らが忘れがちなところを現実としてポップな形で突きつけてくれる映画です。エンターテイメントのパワーを全力で送っています。ぜひご覧いただければ嬉しいです。
インタビュー撮影:ナカムラヨシノーブ
【醍醐虎汰朗(だいご こたろう)プロフィール】
2000年9月1日生まれ。東京都出身。
2017年、舞台「弱虫ペダル 新インターハイ篇〜スタートライン〜」で、舞台初出演にして初主演を果たす。2019年公開の新海誠監督 長編アニメーション『天気の子』で、約2000人のオーディションの中から主人公・森嶋帆高役に抜擢され、同作にて第14回声優アワードで新人男優賞を受賞する。その他の出演作は、映画『セブンティーン・モータース』(19)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)、『太陽は動かない』(20)、TVドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS/20)『スイッチ』(EX/20)など。
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」で主演の日向翔陽役を演じている。
映画『#ハンド全力』 (ハッシュタグ ハンドゼンリョク)
【物語】
熊本在住の高校生・清田マサオは夢中になれるものもなく、幼馴染の岡本とスマホをいじるだけの無気力な日々を送っていた。ある日、震災で離ればなれになってしまった親友タイチと3年前に仮設住宅前で一緒にハンドボールをしていた写真をアップすると、その投稿に思わぬ熱いコメントが続々と集まりだす。それに気をよくし「#ハンド全力」とハッシュタグを付けたところ、全国からさらに“善意”が寄せられ、大きな反響を呼ぶ。マサオと岡本の二人はSNSを盛り上げるためだけに、廃部寸前の男子ハンドボール部部長・島田と再建に向け奔走するのだがーーー。
出演:加藤清史郎 醍醐虎汰朗 蒔田彩珠 芋生 悠 佐藤緋美 坂東龍汰 鈴木 福
篠原 篤 植野行雄(デニス) おたこぷー おさむ(プー&ムー) 椎木樹人 岩本晟夢 磯邊蓮登 渕上ひかる/
甲斐翔真 田中美久(HKT48) 宮﨑大輔 / 仲野太賀 志田未来 安達祐実 ふせえり 田口トモロヲ
監督:松居大悟
脚本:松居大悟 佐藤 大
主題歌:小山田壮平「OH MY GOD」(Sparkling Records)
制作協力:セカンドサイト グラスホッパー
制作プロダクション:ザフール
配給:イオンエンターテイメント ラビットハウス エレファントハウス
宣伝:マジックアワー
特別協賛:渡作株式会社(インパル)
協賛:モルテン 東洋ライス
協力:熊本県ハンドボール協会 山鹿市ハンドボール協会 熊本国際スポーツ大会推進事務局
特別協力:公益財団法人日本ハンドボール協会
2020/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/108分
©2020「#ハンド全力」製作委員会
公式サイト:http://handzenryoku.com/
7/24(金)熊本先行 7/31(金)シネ・リーブル池袋、イオンシネマほか全国ロードショー
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