珠玉の人間ドラマを生み出してきた帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)の山本周五郎賞受賞作『閉鎖病棟』(新潮文庫刊)が、『愛を乞うひと』『エヴェレスト 神々の山嶺』の平山秀幸監督・脚本により映画化。『閉鎖病棟―それぞれの朝―』のタイトルで、2019年11月1日(金)に全国ロードショーとなる。
原作の『閉鎖病棟』は95年に発売され、丸善お茶の水店に掲げられた「感動のあまりむせび泣きました…」というPOPが起爆剤となり、累計90万部を超す大ベストセラーとなっている。
主演は国民的落語家・笑福亭鶴瓶。死刑囚でありながら、刑の執行が失敗し今は精神科病棟にいる秀丸役を演じ、『ディア・ドクター』以来10年ぶりの主演を務めている。また、秀丸と心を通わせる患者・チュウさん役で『そこのみにて光輝く』『新宿スワン』の綾野剛、父親からDVを受け精神科病院に入院する女子高生・由紀役で『渇き。』『恋は雨上がりのように』の小松菜奈が迫真の演技を見せている。精神科病棟を舞台に、“死にぞこない”が出逢った、心通いあう仲間。その矢先に起きた事件に隠された事実とは―――。生きづらさを抱える人々に贈る「優しさ」が、現代に一石を投じるヒューマンドラマにご期待ください。
公開を2週間前に控え、10月16日、東京・T・ジョイPRINCE品川にて、舞台挨拶が行われ、主演の笑福亭鶴瓶をはじめ、小松菜奈・片岡礼子・小林聡美の女優陣が集合。映画のキーワードとなる“やさしさ”について語り、女優陣からは鶴瓶・監督にやさしさの恩返しとしてサプライズプレゼントが。また、フォトセッションでは英題“Family of Strangers”に因んで家族写真の撮影となり、優しさ溢れるイベントとなった。
<イベントレポート>
本作で10年ぶりの主演をつとめた笑福亭鶴瓶は、監督から出演を希望する手紙を受けとった頃から回顧し、「やりきったな」と本作への自信を伺わせた。続けて、「綾野剛が脇役ですからね(笑)」と冗談で会場の笑いを誘い、早速観客の心を掴んでいた。DVを受ける女子高生・由紀という、難しい役に挑戦した小松菜奈は、「みなさんに(この映画が)どんな影響を与えられるのか、感想を聞くのがたのしみです」と語った。その由紀の母親役を務めた片岡礼子は、「家族って、会社や学校など色々な団体の中の最初の単位なんだなと思いました」と複雑な親子関係を本作で演じきったうえで感じたことを明らかにした。精神科病棟の看護師長・井波役を演じた小林聡美は、撮影場所の長野県・上田を振り返りながら「大変な現場でしたけど和気あいあいとした雰囲気で、そんなみんなの力を映した作品」とアピールした。
また、このイベントの為に遅れて急遽、監督の平山秀幸も登場。構想から11年を経て、ついに公開まで1か月を切ったことに対して、「楽しみ半分、不安半分です」と現在の心境を吐露した。
すでに試写会などで本作を鑑賞した方々からの反響について鶴瓶は、片岡鶴太郎や本作で主題歌をつとめたKの義父でもある関根勤など、芸能界の著名人からの感想が届いたというエピソードを披露。また、完成披露試写会で鑑賞したお客さんについて「ほんまにむせび泣いとった」と実際の目で見た本作への反応について語った。
本作で俳優として鶴瓶と初共演を果たした小松は、プロモーションを一緒にしていく中での鶴瓶の印象を問われると、「多忙のなかでもいつでもパワフルで、鶴瓶さんがいるだけで場が明るくなって」「尊敬します」と鶴瓶への思いを明かした。
本作の家族の描き方についてどう思われたか問われた片岡は、「出来事だけを捉えて演じてしまったら、監督が温めてきたものが崩れてしまうと思った」と語り、「必ず由紀が生まれきて、大人になるまでに、こういった親子関係ではあるとはいえ、いいことも思い出にあったはず、と考えながら演じました」と小松と複雑な親子関係を演じるうえで、台本にはないストーリーを想像しながら演じることに留意したと明かした。そんな片岡が自身の出番が終わっても現場に残って撮影を見届けていたというエピソードが鶴瓶から明かされ、本作への作品愛をのぞかせた。
小林は、看護師長という直接いろんな患者と触れる役だったことに触れながら、「患者さん役の方が、役作りをされていて臨場感がある現場だった」と個性溢れる患者役のキャストとの共演を振り返った。その現場のリアルな空気に関して平山監督は、「(患者を演じるうえで)みんな真似ではなく表現をしようとする役者だった」と、監督という目線から語った。小林には、「親切すぎず優しすぎず」という演技のオーダーを小林にしたという監督。程よい距離感を保ちつつも、しっかりと一人一人の患者を見守っている井波という役ができあがった裏側がうかがえた。
この映画の根底のテーマとしてある“やさしさ”というものについて、「本当のやさしさは相手を思いやる気持ち。人と人とが人を育てると思うし、少しでも声をかけてあげる、聞いてもらうだけでも、聞いてあげるだけども、こんなに心が潤う」と小松は本作と関わって感じたことを熱く語った。小林は本作のもつ“やさしさ”について「テーマ自体は重いにも関わらず、こんなにも温かい気持ちになるのは、監督の人を想うまなざしや優しさが一人一人を吸い上げてくれているから。その想いが作品から伝わってくる」と監督への畏敬の念をあらわにした。続く鶴瓶は寒空の中の撮影を振り返り、カットがかかるたびにスタッフが帽子をかぶせてくれたという、本作にまつわる中で「やさしい」と感じた出来事を披露した。そのスタッフに「ほとんど裸なんだもん」と言われたと、しっかりオチもつけて会場の笑いを誘った。
ここで、女性陣から鶴瓶・平山監督にやさしさのプレゼントとして、小松からニット帽、片岡から孫の手、小林からは腹巻のプレゼントというサプライズが…!鶴瓶と監督は照れ笑いしながら、感激の表情を浮かべた。
最後に監督が「登場人物のそれぞれが、何かに向かって少し顔を上げたというところが、映画を見た後に見えてくれればいいなと思います」と本作へ込めた想いを語り、大盛況のままイベントは幕を閉じた。
『閉鎖病棟―それぞれの朝―』
【STORY】
長野県のとある精神科病院。それぞれの過去を背負った患者たちがいる。母親や嫁を殺めた罪で死刑となりながら、死刑執行が失敗し生き永らえた梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)。サラリーマンだったが幻聴が聴こえ暴れ出すようになり、妹夫婦から疎んじられているチュウさん(綾野剛)。不登校が原因で通院してくる女子高生、由紀(小松菜奈)。彼らは家族や世間から遠ざけられても、明るく生きようとしていた。そんな日常を一変させる殺人事件が院内で起こった。加害者は秀丸。彼を犯行に駆り立てた理由とは—– ?
■キャスト:笑福亭鶴瓶 綾野剛 小松菜奈
坂東龍汰 平岩紙 綾田俊樹 森下能幸 水澤紳吾 駒木根隆介 大窪人衛 北村早樹子大方斐紗子 村木仁 / 片岡礼子 山中崇 根岸季衣 ベンガル
高橋和也 木野花 渋川清彦 小林聡美
■原作:帚木蓬生『閉鎖病棟』(新潮文庫刊)
■監督・脚本:平山秀幸
■配給:東映
©2019「閉鎖病棟」製作委員会
2019年11月1日(金)全国ロードショー