映画『光』の初日舞台挨拶が、5月27日、東京・バルト9にて行われ、水崎綾女、神野三鈴、藤竜也、樹木希林のキャスト陣が登壇。カンヌに滞在中の永瀬正敏と河瀬直美監督はスカイプで参加した。
第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出され絶賛された本作は、視力を失ってゆく天才カメラマン・雅哉と視覚障害者向け「映画の音声ガイド」を制作する美佐子が次第に惹かれ合っていく様を描く珠玉のラブストーリー。脚本・監督の河瀬氏と映画『あん』以来再びタッグを組んだ永瀬が雅哉役を務め、美沙子役を水崎が演じた。
登場するやいなや樹木は「最後までカンヌにおりたいから行かれへんねん」「代わりに行ってくれへん?」と関西弁で河瀬の真似をして会場を沸かす。劇中では音声ガイドのナレーター役を演じているが、「タダでやりましたよ。撮り直しもタダですから」とノーギャラ出演だったことを告白。「今回も予算がなかったというけど、わたしはタダだからね。もう、『困った時の樹木希林はナシよ』と、お断りしましたが、強引な宣伝部に言われて来ました」と苦笑い。
翌日に受賞発表の結果をカンヌで待つ河瀬監督と永瀬正敏の2人とスカイプで顔をあわせた登壇者たち。藤が「もう一回上映後に見せた大きな笑顔と涙を見られることを期待しています」と伝えると、樹木は「何か賞をいただけるとしたらこんなに幸せなことはないけれど、脚光を浴びた瞬間にいろんな人たちの心が渦巻くんですよ。そこで潰れるか花開くかがその人の器量なんです」と持論を展開。「永瀬さんは賞で一喜一憂する人じゃない。河瀬さんはもともと勘違いしているところがあるから。どの女優よりステキな洋服を着てねぇ。賞をもらってももらわなくても変わらない。そのへこたれなさでこれからもいい映画を作っていただきたい」とジョークを交えてエールを送った。
水崎には撮影現場について「大変だったでしょ? 自殺しようかと思わなかった?消えてなくなりたいとは思わなかった?」と質問攻め。水崎が「必死にくらいついていこうと思ったので、大丈夫です」と答えると、樹木も「それだけの値打ちはあったわね」と納得の様子。
カンヌ国際映画祭に出席した感想について、「エンドロールの段階から拍手が沸き起こったんです」と藤。「観た人間の数だけ映画がある。2千数百人の胸の中で映画を作れたことを目の当たりにしました」としみじみ。河瀬監督は「こちらでは受賞のことを言われますが、私はこの映画を作って、暗闇の中で観終わった人たちと一体になれた瞬間がすごく嬉しかったです」と目を輝かせる。「あなたはどうしてカンヌに可愛がられるの?」と樹木が質問すると「カンヌには本当に映画が好きな人がいます。私がまっすぐ作っていることを大事にし、自分たちが観たことのない日本の風景、そこにいる人の心模様を抱きしめようとしてくれるんです。デコボコしている作品でも、次の先を見つめたいと思ってくれている気がします」と真摯に答えていた。
また、神野はカンヌ現地で「(河瀬)直美は唯一無二の世界を出し続けている。それがどれだけ怖いことか、理解されない恐怖と戦うのはどれだけ大変なものか分からない。それに立ち向かう直美は私たちの同志です」という関係者の言葉を受けたことを披露。
後半には、タイトルにちなみ、それぞれ自身にとっての「光」を直筆フリップを手に発表した。
最後に「カンヌは映画を深く理解しようとしてくれて、人種は違えどこの映画を『すべての人に対してのラブレター』だと言ったスペインの記者がいました。雅哉は希林さん(演じる)の声に救われたんだと思います」と永瀬。「視覚障害者やディスクライバーの方々に支えられ、色々な気持ちを託していただき、その魂を河瀬さんにお預けして映画の中で生きられたと思います」と述べ、「みなさんに光が届きますように」と観客にメッセージを送り舞台挨拶を終えた。
『光』
<STORY>
視力を失いゆくカメラマンと出逢い、美佐子の中の何かが変わりはじめる―
単調な日々を送っていた美佐子(水崎綾女)は、情景を言葉で説明する、視覚障碍者向けの映画の音声ガイドの仕事をきっかけに、弱視の天才カメラマン・雅哉(永瀬正敏)と出逢う。美佐子は雅哉の無愛想な態度に苛立ちながらも、彼が撮影した夕日の写真に心を突き動かされ、いつかこの場所に連れて行って欲しいと願うようになる。命よりも大事なカメラを前にしながら、次第に視力を奪われてゆく雅哉。彼と過ごすうちに、美佐子の中の何かが変わり始めるー。
監督・脚本:河瀨直美
出演:永瀬正敏 水崎綾女 神野三鈴 小市慢太郎 早織 大塚千弘/大西信満 堀内正美白川和子/藤竜也
配給:キノフィルムズ/木下グループ
宣伝協力:フリーストーン
©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE
公式サイト:http://hikari-movie.com/
5月27日(土)より、新宿バルト9、丸の内TOEIほか 全国公開中