大切な友人なっちゃんの死をきっかけに集まった 3 人のドラァグクイーンが、なっちゃんが<オネエ>であることを知らない母のため、普通のおじさんに扮して葬儀に参列するまでの珍道中を描く映画『ひみつのなっちゃん。』。
バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)が、温かい笑いと涙で観ている者の心を優しくほぐしていく本作。
今回、Astageでは、初めてドラァグクイーンに挑戦し、また新たな一面を見せてくれた渡部秀さんにインタビューを遂行。共演者たちとの楽しいエピソードから、今作への思いまでじっくりと語ってくれた。
― まずは、最初に台本を読んだときの感想と、出演が決まったときの気持ちをお聞かせいただきますか?
作品の題材と役どころを聞いて、すぐに「ぜひ、出演させていただきたいです」とお返事しました。僕にとって分岐点になる作品だと感じたので。台本を拝見させていただいて、これはちょっと面白すぎるんじゃないかと(笑)。題材も面白いし3人のロードムービーとしてのコミカルでハートウォーミングな温かみのある作品だという印象を受けました。これを3人で旅しながら演じたら本当に楽しいだろうなと思って。とにかくクランクインするのを楽しみでしかたなかったです。
― 滝藤さんとの共演をとても楽しみされていたとのことですが、実際に共演されてみていかがでしたか。
もう毎日が幸せでした。ファンとしての感情を抑えながらずっとやっていました。現場に入ったら共演者として臨まないといけないので、喜びを抑えることはある意味試練ではありましたけど(笑)。
― 滝藤さんの印象は? 俳優として何か刺激を受けたことはありましたか?
滝藤さんはもっと侍チックな方かなと思ってたんです。でも、そんなことはなくて、結構コミカルで人当たりも良くて、凄くいい兄貴という感じでした。面倒見もいいし周りに対する気配り配慮もされていて。役者はとしてはもちろんですが、一人の人間としてお会いする前から素敵だと思っていましたが、実際にお会いしたらより素敵な方でした。
― 演技のお話などはされたのでしょうか?
演技プランや、どうやってアプローチしていくかは、本読みの段階で監督を含めて決まったので、現場に入ってから演技の話をすることはほとんどなかったです。撮影の合間には役から離れてプライベートの話ばかりしていました(笑)。前野さんも気さくな方なので、カメラがないところでは3人でずっと何気ない話をしていました。撮影は夏の暑い時期だったんですが、それも忘れるくらいプライベートの話で盛り上がりました。
― とても充実した時間を過ごされたのですね。
前野さんとももういろんな話をしましたし、勉強になりました。演技については現場や作品を見ていればたくさん吸収することはできるんできますが、その方の考え方や生き方というか、今こういうことにハマっているとかプライベートな話を聞けるのは貴重ですよね。
― その中で特に興味深かったお話があったら少しお聞きしてもいいですか?
僕はもともと滝藤さんのライフスタイルが凄く好きだったので、言える範囲ですと・・・、ファッションの話や植物の話をお聞きしました。滝藤さんは多肉植物をたくさん育ていて、僕も育てているので、今お勧めの植物や管理方法などを滝藤さんから教えていただきました。「これは外に出して、これは日陰でね・・・」とか、そんなレベルの話をずっとしていました(笑)。
― 滝藤さんはとても多趣味な方とお聞きしますからお話も楽しそうですね。
そうなんです。趣味が自分も近くて。通っているセレクトショップも一緒で、「次の新作はどれ買う?」、「これですかね」、「俺もそれ買おうと思ったんだけどこっちなんだよね」みたいな(笑)。高校の休み時間にするような感じでした。
― また、今回ドラァグクイーンに挑戦されてみていかがでしたか? 役作りはどのようにされたのでしょうか?
とにかく自分の中で世界は明らかに広がりました。もともとドラァグクイーンの知り合いの方もたくさんいたので、役作りのために特別に研究することはなく、今まで会ってきた人や見てきたものからブラッシュアップして表現するようにしていました。
あと、ドリアン・ロロブリジーダさん、肉乃小路ニクヨさん、ひとみセレナーデさんの3人のYouTubeチャンネルを監督から紹介されたので、その中の1人の方を参考に物語に沿うキャラクター設定をして、自分の表現を3人のバランス関係に上手く組み合わせていこうと努力しました。
― 演じる上で心がけていたことは?
表現を一歩間違えないということでしょうか。配慮とはまた違うのですが、表現を少しでも間違うと差別になりかねない題材ではあるのでそこに最大のリスペクトと自分たちと何も根本は何も違いはないということの理解を意識することは全員の共通認識として徹底しました。
― 劇中で前野さんと披露されるダンスも見どころの一つだと思いますが、たくさん練習されたのでしょうか?
はい、見どころだと思います(笑)。練習もしましたね。郡上八幡に着いてからもしましたし、その前に都内でスタジオを借りて本格的に練習もしました。楽しかったですね。ロケ地も開放的なところでしたし。ドラァグクイーンが縁側で踊ることなんて後にも先にもないでしょうね(笑)。
― そして、モリリンが自分のことを打ち明けるシーンは本当に泣けます。実際に渡部さんも泣かれていますね。
あのシーンは(台本で)結構なページ数があるのですが、監督が途中でカットを入れず長回しで撮ってくださったので、感情が途切れず演じることができました。テストもほとんどなく、アングルだけ決めてほぼ一発本番で撮りました。そこにも監督の愛が伝わってきましたし、ありがたかったです。このロケにおいて、僕にとって最大の難関だなと思っていたんですが、あまり考えすぎても良くないですし。素直に本能のまま臨みましたが、予想していた5倍ぐらい涙が流れました。
― それでは、渡部さんから見た、この作品の見どころは?
やはり、滝藤さん演じるバージンの心の変化というものを一番見てほしいです。バージンがどのように悩んで僕たち2人や周りを囲むいろんなキャラクターに感化されて、どんな感情でなっちゃんの故郷にたどり着き、そこで何に出会い、どういうふうに変わっていくのかというのがこの映画の一番太い部分です。あとは、ダンスもありますし何気ない会話とか人の心の変化っていうものをできれば何回も見て確認してもらえたら嬉しいです。
― 特に印象に残っているシーンがあったら教えてください。
郡上八幡でも思い出も含めてたくさんありますが・・・。あえて東京のシーンでお話しすると、僕とバージンでなっちゃんの家を探すためにバーに行くシーンがあるんです。そこにはアンジェリカさんなども来るんですが、ドラァグクイーンの方々の主戦場に潜入捜査のように入っていくのでワクワクしました。これからどのように物語が展開していくのか大事なシーンなので、いち視聴者としてもあの一連のシーンは好きです。本物のドラァグクイーンの方たちもたくさん応援に来てくださったので、僕も序盤でイメージを付けやすかったです。3人が個室で話してる場面は僕の一番のツボです(笑)。
― ちなみに、渡部さんが秘密にしていたことがバレてしまって・・・というエピソードは何かありますか?
何かあるかなぁ・・・(しばらく考えて)。今回、色んな媒体さんの質問に答えさせていただいたんですが、自分は意外と中身ないなと感じて・・・(笑)。けっこうしっかりしているように見られがちなんですが、中身スカスカだってこと、30代になってポンコツ化していることがうすうすファンの皆さんにバレ始めているんじゃないかなと思っています(笑)。あとは、よく聞かれるんですが、「実はインドアで、内向的です」とか「実は人見知りです」ということですね。テスト診断で、内向的が90%と判断されたことがあるんです。プライベートではほとんど喋らないですから(笑)。
― そんな一面を変えようと努力したことはありますか?
10代、20代にはそのことを隠すかのようにわざと元気に振る舞っていたこともありますが、今はそういうことをしなくなりました。だんだん自然体になっていきました。
― 最後に、これから映画をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
この映画は、僕にとってもの凄く大きなターニングポイントとなった作品です。物語の面白さはもちろんですが、この屈折した世の中やコロナ禍など、色々なことで落ち込んでいたり日常に疲れてる人にぜひ観ていただいて、少しでも笑って泣いて欲しいです。決して悲しい物語ではないし前を向く物語なので、日々のちょっとした1ピースに入れてもらって、ちょっと自分の人生を豊かにできるような“おやつ”のような作品になってもらえたら嬉しいです。何度か観ていただくと、あとから気づくところもたくさんあるので、ぜひ劇場でご覧ください!
【渡部秀 Shu Watanabe】
1991年10月26日生まれ。秋田県出身。
2008年「第21回ジュノン·スーパーボーイ·コンテスト」で準グランプリを受賞。テレビ朝日特撮ドラマ「仮面ライダーオーズ/000」(10)で主人公・火野映司/仮面ライダーオーズ役を演じ、同作で映画初出演、初主演。NHK連続テレビ小説「純と愛」(12)に出演の他、舞台「ボクの穴、彼の穴。」(16)、舞台「遊侠 沓掛時次郎」(16)、舞台「罠」(17)、映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイド with レジェンドライダー』、『おみおくり』(18)、『科捜研の女 -劇場版-』(21)など、舞台・映画・ドラマを中心に活躍中。
撮影:ナカムラヨシノーブ
『ひみつのなっちゃん。』
【ストーリー】
ある夏の夜、なっちゃんが死んだ。つまらない冗談を言っては「笑いなさいよ!」と一人でツッコミを入れていた なっちゃんは、新宿二丁目で食事処を営むママ。その店で働くモリリンはドラァグクイーン仲間のバージンとズブ子を呼び出す。彼らがまず考えたのは なっちゃんが家族にオネエであることをカミングアウトしていなかったこと。証拠を隠すため なっちゃんの自宅に侵入した 3 人は、なっちゃんの母・恵子と出くわしてしまう。何とかその場を取り繕った彼らだが、恵子から岐阜県郡上市の実家で行われる葬儀に誘われてしまい、なっちゃんの“ひみつ”を隠し通すため”普通のおじさん”に扮し、一路郡上八幡へ向かうことになる……。
滝藤賢一
渡部 秀 前野朋哉 カンニング竹山
豊本明長 本多力 岩永洋昭 永田薫 市ノ瀬アオ(821) アンジェリカ 生稲晃子 菅原大吉 ・ 本田博太郎 松原智恵子
脚本・監督:田中和次朗
主題歌:「ないしょダンス」渋谷すばる
製作:東映ビデオ 丸壱動画 TOKYO MX 岐阜新聞映画部
ロケ協力:岐阜県郡上市
ドラァグクイーン監修:エスムラルダ
配給:ラビットハウス 丸壱動画
©2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会
公式サイト:himitsuno-nacchan.com
公式 twitter:@HimitsuNacchan
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