映画『his』の完成披露試写会が、1月8日、東京・スペースFS汐留にて行われ、主演の宮沢氷魚と、共演の藤原季節、外村紗玖良、監督の今泉力哉が舞台挨拶に登壇した。
『愛がなんだ』で大ヒットを記録した今泉力哉監督の最新作となる本作は、周囲にゲイだと知られることを恐れ、東京からひとり田舎にやってきた井川迅(宮沢)と、かつての恋人で突然迅のもとを去り、子供を連れて8年後に再び現れた日比野渚(藤原)の男性ふたりの恋愛を描く。同性の二人が子供を持ち、家族として世間とどう向き合い、生きていくのか・・・彼らを待ち受ける社会の関わり方や、偏見、差別、そして、優しい眼差しを通して新しいLGBTQをテーマにした作品が出来上がった。
新年にふさわしく、宮沢と藤原は袴姿、紗玖良ちゃんは華やかな振袖姿で登場すると、会場からは大歓声が上がった。とりわけ愛らしい紗玖良ちゃんに「可愛い!!」と多くの声がかかる。
まずは、新年の抱負を聞かれた登壇者たち。宮沢は「オリンピック競技を生で1つ観たいですね」と明かし、藤原は「今まであんまり我慢をしてこなかったので、今年は我慢を覚えようかと」とキッパリ。ところが、「今、ちょっと我慢しなくていいですか? 我慢できなくて・・・」と口を開き、「実は、明日、紗玖良ちゃんの誕生日なので、みんなでHappy Birthday♪を歌いたいなと思って」と提案した。宮沢からもハイタッチを受けた紗玖良ちゃんは「ありがとうございます!」と満面の笑みを浮かべ、今泉監督も「これは我慢しなくていいよ!」と、藤原の提案にOKサイン。
これまで「LGBTQをテーマにした作品は作らない」と公言してきた今泉監督だったが、「新しいものになっていると思う。同性愛だけじゃなく、人と人との関わり、奥さんの側の気持ちなども描いています。デリケートなところもあるので、できる限り気になるところは消して作りました」とし、「役者さんの熱量と相談しながら作っていきました。とにかく、この作品には誰も悪い人がいない。みんなどこか弱いところを持っているんです。僕も知らないことがあって勉強になりました」と新しい挑戦に満足げ。
宮沢も「自分は男子校だったのですが、周りにもLGBTQの友達が普通にいたので当たり前だと思っていたんです。でも、社会に出ると差別や偏見があって。自分がこういう題材の作品に出て(彼らの)救いになれればと思っていたので、今回出演できて光栄に思います」と真摯に語った。
また、ロケ地となった岐阜・白川町では、コテージで共同生活を送ったという宮沢と藤原。藤原が「濃密な2週間でした」と言うと、すかさず宮沢が「誤解を招くから(笑)」と制す一幕も。藤原が「撮影がけっこう大変だったので、唯一の息抜きというか、オアシスみたいでした」と振り返ると、宮沢は「最初はイヤでした。朝から晩まで一緒にいたので、寝る時くらいは自分の時間が欲しいなと思っていたんですが、いざ一人になると不安になって・・・。やっぱり助けられました。ありがとうね」と藤原に感謝の気持ちを伝えていた。現場では、父親役の藤原が紗玖良ちゃんを膝の上にのせて遊んだり、こたつで宮沢、藤原、紗玖良ちゃんの3人で丸まって寝たりしていたそうで、和やかな現場の様子を楽しそうに話した。
さらに、撮影について話が及ぶと、宮沢が突然、「実はこの作品で初めてのことがありまして・・・」と意味深に話し出す。「芝居での初キスシーン、ファーストキスは藤原季節くんでした!」と告白。放送ではドラマ「偽装不倫」で共演した杏とのキスシーンが先だったが、撮影は『his』のほうか先だったという。藤原は「全く知らなかったよ」と驚くと、監督が「季節さんは初めてじゃなかった?」と面白がる。藤原は「ごめん、他にもけっこう・・・」と苦笑い。宮沢が「僕は何人目?」と嫉妬顔を浮かべ、タジタジの藤原だった。
この日は本作の大ヒットを祈願し、餅つきを実施。宮沢と藤原がリズムよく餅をついて完成。出来上がった餅を美味しそうに味わった。
最後に宮沢が「たくさん考えさせられると思います。答えは1つではない。この作品を観た皆さんの思ったことが1つひとつの答えです」とメッセージを伝え、舞台挨拶を締めくくった。
映画『his』
【ストーリー】
井川迅は周囲にゲイだと知られることを恐れ、ひっそりと一人で田舎暮らしを送っていた。そこに、6歳の娘・空を連れて、元恋人の日比野渚が突然現れる。「しばらくの間、居候させて欲しい」と言う渚に戸惑いを隠せない迅だったが、いつしか空も懐き、周囲の人々も三人を受け入れていく。そんな中、渚は妻・玲奈との間で離婚と親権の協議をしていることを迅に打ち明ける。ある日、玲奈が空を東京に連れて戻してしまう。落ち込む渚に対して、迅は「渚と空ちゃんと三人で一緒に生きていたい」と気持ちを伝える。しかし、離婚調停が進んでいく中で、迅たちは、玲奈の弁護士や裁判官から心ない言葉を浴びせられ、自分たちを取り巻く環境に改めて向き合うことになっていく――。
宮沢氷魚 / 藤原季節
松本若菜 松本穂香 / 外村紗玖良 中村久美
鈴木慶一 根岸季衣 堀部圭亮 戸田恵子
監督:今泉力哉
企画・脚本:アサダアツシ
音楽:渡邊 崇
主題歌:Sano ibuki「マリアロード」(EMI Records/ UNIVERSAL MUSIC)
製作プロダクション:ダブ
企画製作:メ~テレ
製作:映画「his」製作委員会
配給・宣伝:ファントム・フィルム
©2020映画「his」製作委員会 (日本/5.1ch/カラー/127分)
公式サイト:https://www.phantom-film.com/his-movie/
2020年1月24日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー