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【第32回東京国際映画祭】アーロン・クォック(郭富城)、楊千樺(ミリアム・ヨン)が登場!! アジアの未来部門「ファーストフード店の人々」ワールドプレミアQ&A

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アジアの未来部門「ファーストフード店の人々」(原題:《麥路人》)の舞台挨拶&Q&Aにウォン・シンファン(黃慶勳)監督と俳優のアーロン・クォック(郭富城)、楊千樺(ミリアム・ヨン)が登壇した。香港の四大天王の一人として歌手・アイドルとして一時代を築いたアーロンと、歌手・女優として確かなキャリアを築いて来たミリアム。香港の二人の大スター来日に、客席はいずれも満席。大いに盛り上がった。

今回上映されたのは、アジアの新鋭監督が競うアジアの未来部門で、本作が初監督作品となるウォン・シンファン監督の「ファーストフード店の人々」のワールドプレミア。

今回の映画祭で本作は2回上映され、10月29日の初回上映にはウォン・シンファン監督、アーロン・クォックとミリアム・ヨンの3人が、30日にはウォン監督とアーロンの上演後Q&Aでの登壇が予定されていたが、29日の上演前に、3人が急遽挨拶のため登壇。舞台挨拶を行った後、観客と一緒に映画を見た後、予定どおりQ&Aにも登壇した。
2回目の10月30日の上演には、監督とアーロンがQ&Aに登壇した。
写真は1回目のみだが、Q&Aトークについては2回分を合わせてご紹介する。

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初回の登場では、ゲストたちの意向で上映前にも登場。思いがけない登場に、観客は大喜び。3人は大歓声に迎えられた。

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ウォン監督:こんなにたくさんの日本の観客にお会いできて嬉しいです。ありがとうございます。
ミリアム:みなさん、こんにちは!楊千樺です。初めて東京国際映画祭に来られて、しかも自分の出演作で参加出来て嬉しいです。
アーロン:今回第32回東京国際映画祭に初めて参加でき嬉しいです。観客のみなさんはずっと応援して下さっている。映画祭は好きな仕事です。こうして大好きな作品をお届けできることを、とても嬉しく思っています。ファンのみなさん、これからもこの作品を応援して下さい。
三人は挨拶した後、客席へ。ファンに囲まれてワールドプレミア上映となる本作を鑑賞した。

映画のメインの舞台となるのは、某大手ハンバーガーチェーンの24時間営業の店舗。
厳しい経済状況の人々が、いつも同じ店で夜を過ごし、絆を築いていた。
アーロンが演じるのは、かつて投資会社で巨額の金額を動かしていたが、今はすっかり落ちぶれてしまった阿博(Bowen)。阿博の羽振りがいい頃に、歌手として宴会に呼ばれた秋紅(ミリアム)は売れないまま、小さな店で歌い続けているが、2年前、すっかり落ちぶれた阿博と再会。以来、阿博と共に店で夜を過ごす夫を亡くした母子、妻を失った老人(アレックス・マン 萬梓良)、家出をした少年などを優しく見守ってきた。

社会の片隅で懸命に生きる人たちの姿、その悲しみと苦悩を丁寧に描く。
香港だけでなく世界中に通じる根深い経済問題と、家族のきずなの難しさが心に迫る。
また、ブルース・リーやジャッキー・チェン映画のヒロインとして活躍したノラ・ミャオが出演しているのも嬉しい。

冒頭に石原ディレクターからの「中国語の題名にも英語の題名にも、ハンバーガーチェーン店を暗示する言葉が含まれているために、邦題には苦労した」との解説の後、ゲストが登場した。

映画では落ちぶれてやせ細っていたアーロンだが、登壇したのは精悍でエネルギッシュなアーロン。変わらぬスターの輝きを感じさせてくれた。

10月29日 Q&A

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ウォン監督:この映画は初監督作です。自分の夢でもありました。観て頂いて、ありがとうございます。
アーロン:これまでに何本も映画を撮ってきましたが、この映画は2年前にカンヌ映画祭の時に(シナプスを)見て、「どんな条件でも、どんな金額でもこの映画をやりたい」と申し出ました。この映画を応援して頂けたらと願っています。香港の映画を応援したいという気持ちがあります。こうして皆さんに見て頂けたので、是非みなさまにも香港映画を応援して頂けたら嬉しいです。
ミリアム:この作品に参加できたことを光栄に思っています。ラストシーンが、重かったかもしれませんが、娯楽映画としてだけでなく、人と人とのつながりや優しさを伝えられる素晴らしい作品だと思っています。この作品に参加できたことを喜んでいます。

―アーロンさんとミリアムさんは共演していかがでしたか?

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アーロン:先輩として僕からお話ししますね。彼女は勘の良い女優さんです。彼女はこの撮影と他の作品とを同時に撮影していました。全く違う役柄で、こちらではとても難しい役柄を演じていました。これはチームだからできたことだと思います。監督は本作が初監督作品ですが、非常に才能のある方で、シーンをひとつひとつ的確に演出してくれました。同時期にまったく違う役を撮影するのは、大変難しいことだと思いますが、ミリアムさんは非常に頭が良く、非常に上手く切り替えてえんじたのですが、これはチームワークがよかったから出来たことだと思います。

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ミリアム:この作品に参加させて頂いて、とても嬉しいことでした。素晴らしい監督、アーロンさんが信用してくださったことが、非常に嬉しかったです。中でも、オファーを下さったアーロンさんのマネージャーの小美さんには感謝したいです。お蔭で、このような難しい役に挑戦することができました。難しいというのは、同時に撮影していた作品では家族があり弟がいる、とても幸せな奥さんの役で、こちらでは孤独な寂しい役で、自分にとっては殻を破るチャンスだったと思います。人は幸せを感じることが大事だと、この映画を通して感じました。ウォン監督、アーロンさんに出会えたことも、大変ラッキーでした。

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―監督デビュー作での大作。どんな思いで撮影されましたか?
ウォン監督:スーパースターが出演してくださいましたが、撮影現場ではスーパースターも俳優として来てもらっているので、私の演出で演技をしてくれる俳優です。

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―アーロンさんとミリアムさんはファーストフード店で時間をつぶすことがありますか?

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アーロン:脚本を受け取った時、実際にホームレスの方が24時間のファーストフード店にいるのかを調べました。見つけたのが、彼らがどのような生活をして、何を考えているのか、将来をどう考えているのかと取材をしたもので、それを全部今回の役に取り入れました。また、日本でもネットカフェで暮らしている人がいることを知りました。ただ、この映画で大事なのは、24時間営業のファーストフード店は単なるロケーションであって、伝えたいのは、人と人との愛です。

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ミリアム:自分にとってファーストフード店は子供時の記憶です。子供の頃は、「ママ、日曜日にはあそこにいってフライドポテトやハンバーガ食べたい」と言った楽しい記憶です。今でも子供を連れて行くようになって、ファーストフード店で子供の誕生会をしたりと、子供の楽しみを探します。でもこの作品の脚本で私が感動したのは、映画の中では一部分ですが、自分の辛さや困難、愉快でないことについては、父母や兄弟姉妹、一番近い関係の友達に、言えないでいるという点です。近いからこそ言えなかったり言いづらくて、それで辛い思いをしていたりするのではないか。この映画を通して、自分の両親や身近な友達、兄弟姉妹とのことをよく考えてみて欲しいと思います。家族こそが信頼でき、一番の愛であることをよく考えなければいけないと思います。家庭から私たちの生活は始まります。

―監督に締めの言葉をお願いします。
ウォン監督:本作の英語のタイトル“」I’m livin’ it”には「生きている」「住んでいる」という2つの意味があるので、このタイトルをつけました。中国語の題名の“麥路人”の「麥」は有名なファーストフード店を意味しますが、「路」という字には「口」がたくさんあります。それでこの題名をつけました。

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フォトセッション後、3人はファンクラブ会員などを中心にサイン会を開催。サインをもらえなかった人にも握手で挨拶。フレンドリーな姿で観客の歓迎に応えた。

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10月30日Q&A
夜遅くの上映にもかかわらず、客席は満席。ウォン監督は場外から、映画を観客と一緒に鑑賞したラフなオレンジ色のセーター姿のアーロンは客席から登場し、盛大な拍手で迎えられた。2人も満面の笑顔で登場した。

「みなさん、映画はいかがでしたか?」と呼びかけ、大きな拍手をもらって、一層嬉しそうな笑顔を見せたアーロン。前日のQ&Aでは言葉少なだった隣に座るウォン監督について「本作が初めての監督作品ですが、助監督やスタッフとして二十数年も働いてきた人です。こういう作品を撮りたいと長い時間温めてきたので、この場を借りて監督を紹介したいと思います。実は、ウォン監督は『白毛(白髪)』というあだ名があります。頭のてっぺんに生まれた時から白髪があります。映画みたいな感じがするでしょ」と紹介。「東京国際映画祭にアジアの未来部門に選ばれておめでとうと言います。がんばりましょう!」とウォン監督に話しかけ、仲睦まじい様子を見せた。
「とても緊張しています」と言ったウォン監督は、アーロンについて尋ねられると「演技については言うまでもなくプロです。役づくりのために、何も食べずに空腹で現場に来て、撮影を終えると近くでウロウロしているので、何をしているのかと思ったら、食べ物を物色していました」と撮影秘話を明かすと、アーロンは「演じたのはホームレスで毎日、食べるために必死に何でもやる役なので、リアルに役作りをするためには役に入りこむことが大切でした」と苦労を語った。さらに「この作品で自分も見たことがなかった新しいアーロンで登場したと思います。映画を見て、いろいろ考えさせられました。短い人生で悔いのない生き方をいなくてはならないと改めて感じました」とも話した。

さらにアーロンは「監督と脚本家は残酷な人だと思います。なぜかと言うと、撮影前には僕と3人でディテールについて話し合いましたが、私を(役の上で)どんどん不幸な状況に追い込んでしまうからです。それも愛を示すためで、きっと多くの観客が私の役を好きになってくれるでしょう。監督、″ありがとう″!」と語った。

ウォン監督がそんなアーロンに「本当にアーロンには謝らないといけないと思います。撮影現場では煙草を吸えと繰り返し強制したので」といえば、アーロンは「煙草はこの映画では大切なアイテムだと思っています。主人公は、問題に直面する度に煙草を吸うことで考え、そして安らぎを手に入れようとしていたと考えています。撮影を終えて、自分も肺癌になるのではと心配になって医者に行きましたら、肺はきれいですよと言ってもらって安心しました」と明かした。
またウォン監督は「主人公は母親に会いに行けるのに逃げて会いにいかない。親に会うのは、大切なこと。そんな大切なことから逃げるような人だから、最後まで合わせなかったのだ。母親と会うのはとても大切なこと。どうぞみなさんも大切にしてくだい」と語った。

アーロンは「数年前、カンヌ映画祭で本作のプロデューサーからこの作品のシナプスをもらって、冒頭の数行を読んで気に入りました。人間は信念を持っていれば希望が生まれる。でも貧困は無常にも希望を奪うというテーマを描くとあって、是非とも映画を撮って欲しいと思いました。私は若い監督、新人監督と仕事をするのが好きです。自分とは全く違う役を演じる、映画という芸術を通してこうした人々を助けることになれば、映画が別のレベルに達したことになります。私もこの映画を通して24時間営業のファーストフード店で夜を過ごす人々について知ることができました。こうした暮らしをする人々について、我々はもっと考えた方がいいのではないか…それがこの映画のメッセージだと思いました」と熱く語りました。

この日のフォトセッションは、ウォン監督とアーロンが観客側に座って観客と一緒に撮影。夜中の11時半を過ぎるにも関わらず、熱い熱い映画祭の夜となった。

「ファストフード店の住人たち」i’m livin’ it 麥路人 (香港)
監督:ウォン・シンファン(黃慶勳)
出演:アーロン・クォック(郭富城)、ミリアム・ヨン(楊千樺)、アレックス・マン(萬梓良)