映画『ひとよ』公開記念舞台挨拶が、11月9日、東京・TOHOシネマズ日比谷にて行われ、主演の佐藤健をはじめ、共演の鈴木亮平、松岡茉優、佐々木蔵之介、MEGUMIと、白石和彌監督が登壇した。
本作は、運命を激変させたひとつの事件をきっかけに、別々の人生を歩んだ母親と三兄妹の家族が15年後に再会し、葛藤と戸惑いの中で、一度崩壊した家族の絆を取り戻そうともがく姿を描き出す。
東京でフリーライターとして働く稲村家の次男・雄二を佐藤、町の電気屋に勤務し、三兄妹で唯一自身の家庭を持つが夫婦関係に思い悩む長男・大樹に鈴木、事件によって美容師になる夢を諦め、スナックで働きながら生計を立てる末っ子の妹・園子に松岡、そして、15年ぶりに三兄妹のもとへと帰ってくる母親・こはるを田中裕子が演じる。
昨日公開を迎え、佐藤は「改めて、人ひとりの力はちっぽけで、映画はたくさんの人に支えられて作られていると感じました。特に今回、僕は助けられました。助けられたというより、周りの方々に頼りきっていましたね。撮影で向き合った時に感じるものを活かそうと思いました」と撮影の日々を振り返り公開を喜んだ。
公開前から大きな反響を呼んでいる本作。佐藤は「僕は、撮影が終わると『このキャラクターたちとお別れするのか』と、寂しくなるような映画が好きなんです」とし、「『この先、この家族はどうなるのか気になる』『この先を想像する作品』という感想をいただいています」と明かした。
劇中で繰り広げる家族の場面で、共感するシーンを尋ねられると、佐藤は松岡のセリフに言及し「園子がベロベロになってタクシーで帰ってくるんですが、リバースして・・・、『まだ吐くよ』っていうセリフが、めっちゃいい! 好きですね(笑)」とベタ褒め。松岡は「あれですか!?」と驚く。白石監督によるとそのセリフは松岡のアドリブだったという。佐藤や松岡が「白石監督はアドリブで意味が変わってもいいっていう、懐が大きいところがあるんです。意味が変わったら本線にどう戻すんですか?」と不思議がると、白石監督は、「皆さんの見えないところでなんとかしてるんですよ!(笑)。キャストさんたちを信頼しているので」と笑顔で答えていた。
同じ質問に、松岡は親の介護に疲れている・弓役を演じる筒井真理子のセリフ挙げ、「『私も私の時間欲しいもん』に共感しました。介護だけでなく、責任を一身に受けて頑張っている方は共感するのではないでしょうか?強烈でした」と語った。
佐々木は、田中裕子演じるシーンについて「こはるは自首する前に、子供たちを抱きしめないんです。今しか抱きしめられないと思うのに。でも15年経って帰ってくると、ガシって抱きしめる。あれはたまらないですね」としみじみ。白石監督は、「母(田中)が橋の上で言うセリフ『立派か! 立派なのか!』と言うところがツボに入りました。裕子さんらしいセリフで凄いなと思いました」と田中の演技力を大絶賛。
クライマックスで見せるカークラッシュのシーンについて話が及ぶと、「このシーンは、とても大切にしていたシーンです」と監督。「企画から4年。稲村家をはじめとしたキャラクターたちがちゃんとコミュニケーションを取れていないと感じ、この家族が前に進むためにはちゃんとぶつからないといけないと思ってクラッシュさせました」と説明。「雄二はこんなに運転が上手いんだ・・・と思いましたね(笑)」と笑うと、佐藤は「本当に運転しましたよ(笑)。車酔いしましたよね?」と鈴木と松岡を気遣う場面も。鈴木は「かなりギリギリのところをせめていたよね。ドキドキしました」とニッコリ。松岡は酔い止めに梅干しを食べていたと暴露。それでも皆、佐藤のドライビングテクニックに舌を巻いていた。
また、三兄妹がスナックで喧嘩するシーンについて、松岡は「園子は、怒りのあまりピーナッツを雄二に投げるっていうシーンですが、健さんの髪にピーナッツがついたのでリテイクになったんですけど、実際本編に使われてたのはピーナッツがついているカットでした。あれはなぜですか?」と監督に疑問を投げかけた。すると白石監督は、「(佐藤が)可愛かったので…(笑)」と返し、会場の笑いを誘った。
大樹の妻役を演じたMEGUMIは、夫婦喧嘩のシーンを振り返り「大樹を罵倒するシーンばっかりなんですが、監督の方を見ると笑ってるんですよ」と監督を見やると、白石監督は「いい追い込み方してるなと思って。笑いました」と楽しそう。
本作のテーマの確信とも言える「家族とは何か」と問いかけられると、白石監督は「最も大切なものです。子供としては親から頂いたものでもあるし、親としては、子供には無償の愛を捧げたいと思う。めんどくさいけれど、だからこそ愛おしいと思います」と力を込める。MEGUMIは「めんどくさいこともありますが、そこが崩れると自分にも影響が及ぶ最も大事にしなければならい存在」と。佐々木は、「共鳴し合えるもの。悲しいことも嬉しいことも一緒に響き合える存在」、松岡は「他人と向き合わなければならない時に土台になってくれる。家族はそういう時に踏ん張らせてくれる存在かと」と述べた。鈴木は「最も濃い人間関係だと思います。一緒に過ごした時間や、血がつながっている・つながっていないも含めて、良い意味でも悪い意味でも切りたくても切れない濃い人間関係」とコメント。佐藤は「大切な存在。僕は30歳で、これから家族を築いていく立場から憧れの存在です」と、目を輝かせた。
最後に佐藤は、改めて「素直になれなかったり、家族と向き合わなければならなかったりするとき、一度クラッシュしなければならないかもしれないと、白石監督も仰っていました。皆さんも1度クラッシュするぐらいの気持ちでぶつかっていくことも大事なのではないでしょうか」と観客に呼びかけ、舞台挨拶を締めくくった。
<あらすじ>
あまりに切ない“母なる事件”から15年。希望を夢見た者たちのゆく末は━
どしゃぶりの雨降る夜に、タクシー会社を営む稲村家の母・こはる(田中裕子)は、愛した夫を殺めた。それが、最愛の子どもたち三兄妹の幸せと信じて。そして、こはるは、15年後の再会を子どもたちに誓い、家を去った—。たった一晩で、その後の家族の運命をかえてしまった夜から、時は流れ、現在。次男・雄二(佐藤 健)、長男・大樹(鈴木亮平)、長女・園子(松岡茉優)の三兄妹は、事件の日から抱えたこころの傷を隠したまま、大人になった。抗うことのできなかった別れ道から、時間が止まってしまった家族。そんな一家に、母・こはるは帰ってくる。15年前、母の切なる決断とのこされた子どもたち。皆が願った将来とはちがってしまった今、再会を果たした彼らがたどりつく先はー
監督:白石和彌
脚本:髙橋泉
原作:桑原裕子「ひとよ」
出演:佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟(千鳥)、佐々木蔵之介・田中裕子
製作幹事・配給:日活
企画・制作プロダクション:ROBOT
(c)2019「ひとよ」製作委員会
公式サイト:www.hitoyo-movie.jp
11月8日(金) 全国ロードショー