映画『ひとよ』ジャパンプレミア試写会が、9月25日、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて行われ、主演の佐藤健をはじめ、共演の鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、佐々木蔵之介と、白石和彌監督が舞台挨拶に登壇した。
本作は、運命を激変させたひとつの事件をきっかけに、別々の人生を歩んだ母親と三兄妹の家族が15年後に再会し、葛藤と戸惑いの中で、一度崩壊した家族の絆を取り戻そうともがく姿を描き出す。
東京でフリーライターとして働く次男・雄二を佐藤、町の電気屋に勤務し、三兄妹で唯一自身の家庭を持つが夫婦関係に思い悩む長男・大樹に鈴木、事件によって美容師になる夢を諦め、スナックで働きながら生計を立てる末っ子の妹・園子に松岡、そして、15年ぶりに三兄妹のもとへと帰ってくる母親・こはるを田中裕子が演じる。
佐藤は「素晴らしいキャストの皆さんと白石監督のもと、今回は自分で何かをしようと気負いのようなものが一切なく、これまで経験したどの現場よりも力の抜けた状態で臨めたと思います」と撮影を振り返り、「この作品に参加できたことを光栄に思います」と感慨深げ。
鈴木は「とにかく評判がいいんです(笑)。この現場で兄弟の空気感などを気負わずにやっていたんですが、それを白石監督がライブ感あるエンターテイメントでパワフルな強い映画、かつ家族の話に仕上げてくれています。皆さんも(この作品を観て)登場人物の誰かに置き換えて感情移入して自分の家族への想いを再確認できる映画になっていると思います」と作品をアピールした。
松岡は「今日のオープニングはスモークがたかれたようで、派手な演出をしましたが、物語は地味なタクシー会社の話でございます。大好きな作品になりました。『出してもらってありがとうございました』と胸を張って言えたのは(デビューして)16年間で初めてでした」と出演を心から喜んでいた。
タクシー社長役を演じた音尾は「今、客席を通って登場したらお客様が大きなポップコーンを持っていらした。この映画にポップコーンがふさわしいかわからないが、映画はそれだけ自由でいいのかと。ポップコーンを食べながら楽しんでいただきたいと思います」とジョークを交えながら語り会場の笑いを誘う。
新人タクシー運転手役の佐々木は「6月末ころにクランクアップしたばかりでまだ、役が自分の中に残っている感じがして、観てもらうのが気恥ずかしい気分です」と笑顔。
白石監督は「この作品が完成したのは8月末。でも4年前から企画されていたので、力作になってよかったです」と作品の出来栄えに自信をのぞかせ、「これまで疑似家族を描いていきたが、本物の家族を描かないと、いち作家としてステップアップできないんじゃないかと思っていた」と作品への強い思いを吐露。
そんな白石組へ初参加した佐藤、鈴木、松岡。佐藤が「この作品の話が来る前から勝手に(役を)想定していました。出られるなら線を太くして体内を汚して臨もうと」と明かすと、白石監督も「本当にそうだった。嬉しい」と笑顔を見せ、当初より相思相愛だった様子。
鈴木は「『日本で一番悪いやつら』を映画館で観たとき、(主演の)綾野剛に『あれは凄い! (出演して)羨ましい。そして悔しい』と伝えました」と告白。「いつも活発な役が多いんですが、内向的な役をやらせてもらって光栄」と満足げ。
すると、松岡がすかさず「今までにない汚い佐藤健、今までにない頼りない鈴木亮平が観れるってことですね!」とPR。
そんな松岡は劇中で佐々木の髪をつかみかかったそうで、「こんな優しい佐々木さんの頭をひっぱりたり叩いたりすさまじかったです」と言いながら、すまなそうに佐々木の顔を覗く。当の佐々木は「ここちよかったですね~」とあっけらかんと笑っていた。
今作で9回目の白石組参加となる音尾は「逆に、いつ切られるかと思ってビクビクしています。お歳暮のグレードをあげなきゃ!」と連続出演なりの悩みを打ち明け、監督に「通行人でもいいんで、出させてください」と懇願していた。
本作のタイトル「ひとよ」にちなみ、忘れられない夜は?問われ、白石監督が「音尾くんとは高校が一緒で1つ(学年が)下。音尾くんが一度会いたいと言ってくれて語りあった夜は忘れない。だから卒業なないです」と答えると、「何年でも留年いたします!」と頭を下げる音尾だった。
同じ質問に、佐々木は「この仕事(俳優)をすると決めた夜」と答え、「家業を継がないと告げないといけなかった」と振り返る。同じく鈴木も「この仕事をやろうと決めた夜」とし、「大学の時にやった演劇で、出てきた最初のお客さんが泣いていたのを見て“これを一生の仕事にしよう”と決めました」としみじみ。
佐藤は今作でのシーンを1つ挙げ、「蔵之介さんに全力で飛び蹴りをした夜です」と言い、「アクションシーンだけど、打ち合わせなし。ただの暴力でしたね。なんのごまかしもない」と本気で役に向き合った夜を思い出していた。松岡も「あー、けんしん!と思った!」と佐藤が出演の『るろうに剣心』をたとえてそのシーンの凄まじさを伝えていた。
<あらすじ>
あまりに切ない“母なる事件”から15年。希望を夢見た者たちのゆく末は━
どしゃぶりの雨降る夜に、タクシー会社を営む稲村家の母・こはる(田中裕子)は、愛した夫を殺めた。それが、最愛の子どもたち三兄妹の幸せと信じて。そして、こはるは、15年後の再会を子どもたちに誓い、家を去った—。たった一晩で、その後の家族の運命をかえてしまった夜から、時は流れ、現在。次男・雄二(佐藤 健)、長男・大樹(鈴木亮平)、長女・園子(松岡茉優)の三兄妹は、事件の日から抱えたこころの傷を隠したまま、大人になった。抗うことのできなかった別れ道から、時間が止まってしまった家族。そんな一家に、母・こはるは帰ってくる。15年前、母の切なる決断とのこされた子どもたち。皆が願った将来とはちがってしまった今、再会を果たした彼らがたどりつく先はー
監督:白石和彌
脚本:髙橋泉
原作:桑原裕子「ひとよ」
出演:佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟(千鳥)、佐々木蔵之介・田中裕子
製作幹事・配給:日活
企画・制作プロダクション:ROBOT
(c)2019「ひとよ」製作委員会
公式サイト:www.hitoyo-movie.jp
11月8日(金) 全国ロードショー