小学館「ビッグコミック増刊号」で 2017年から連載を開始し、「第25回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 優秀賞」を受賞した、鬼才・西村ツチカによる「北極百貨店のコンシェルジュさん」(小学館)を、『パプリカ』(2006)、『風立ちぬ』(2013)など多くの作品に原画として参加し、「ボールルームへようこそ」(MBS/2017)でTVアニメ初監督を務めた板津匡覧がメガホンを取り、待望の映画化。10月20日より全国公開される。
本作は、お客様は全て動物という不思議な百貨店 <北極百貨店 >を舞台に、 新人コンシェルジュ・ 秋乃と、 “特別な”お客様たちとの間で繰り広げられるファンタジーストーリー。フランス南東部の都市アヌシーで開催されるアヌシー国際アニメーション映画祭2023の「Screening Events(特別上映)」部門に正式に招待されたほか、本年度のファンタジア国際映画祭では長編アニメ部門観客賞銀賞を受賞、さらに第36回東京国際映画祭アニメーション部門での上映も決定し、多くの注目を集めている。
百貨店に訪れる動物の中で、ひと際華やかなクジャクのカップルを七海ひろきと花乃まりあが務め、作品をより艶やかに彩っている。元宝塚歌劇団男役スターと元宝塚歌劇団花組トップ娘役の2人だからこそ醸し出せる空気感に魅了されること間違いなし! そんな2人に本作に魅力や見どころを語ってもらった。
― クジャクのカップルということで、とてもお二人にピッタリな役だと思いますが、まずは本作の出演が決まったときのお気持ちをお聞かせいただけますか?
七海ひろき(以下、七海):もともと他の役でこの作品のオーディションを受けていたのですが、実はそのオーディションの中にこのクジャクの役はなかったんです。原作を読んでぜひクジャク役をやってみたいと思って。「こちらもちょっと録ってみたので、よかったら聞いてみてください!」と一緒に音源を送ったんです。可能性があれば・・・と思ってお願いしてみたのですが、採用していただいて凄く嬉しかったです。
花乃まりあ(以下、花乃):私は初めてお声がけいただきましたが、声の仕事にずっと興味があったので、素直に嬉しく光栄に思いました。幅広い世代の方に楽しんでいただける、温かい作品だったことがさらに嬉しかったです。
― 七海さんは、クジャクが羽を広げるとき、その華やかさを出せるように意識されたそうですが、その際に特に心がけたことは何でしょうか?
七海:想像することによって、それが声に乗るという部分があるのではないかと思っていて。自分はクジャクになったことはありませんが(笑)、小学生のときに飼育委員をやっていて、クジャクの世話をしていたんです。その時に見たクジャクの羽を広げる瞬間が、本当に華やかだったことを覚えていて。それを思い出しながら、想像力を働かせて臨みました。
― 花乃さんは、初めて声優にチャレンジされていかがでしたか?
花乃:凄く難しかったです。原作のクジャクの彼女は映画版とはセリフも少し違っていて、もう少しキャラクターとしてキツイ感じというか、ビビットな感じという印象がありました。でも、せっかく七海さんとカップル役をやらせていただくのだったら、もう少し柔らかくて艶やかな感じでもいいんじゃないかと思い、言葉尻も少し変わっているので、そんなところを意識しました。
― やはり、七海さんとご一緒されるということは精神的に安心感もあったのでしょうか?
花乃:本当にその通りです! 七海さんがいるから、きっと何があっても大丈夫だと思って、リラックスして挑むことができました。
― 先輩・七海さんの声優ぶりをご覧になっていかがでしたか?
花乃:これまでも色々な場所でご縁のある先輩ですが、七海さんが声のお仕事に対して凄く熱量を持っていらして、ご自身のビジョンを持って臨まれていることはよく伺っていました。今回は少しの時間でしたが、ご一緒させていただいて、やはりこの仕事にかける情熱を感じました。「もう少しこういうふうにしてみて」とリクエストされたことに対して、声だけで色々なパターンを持っていらっしゃるのが本当に凄い。私の知らない七海さんがそこにいました。
― 七海さんは、花乃さんの初声優の印象はいかがでしたか?
七海:とても初めてとは思えませんでした。初めてだったこともあって、最初にその音響監督の方が一緒にブースの中に入ってきて、マイクの距離感を教えてくださったんです。その時も「緊張してる」って言っていましたが、マイクに一声入った瞬間にもう「クジャク!」でした。私も「なんて素敵な声!」と思いましたが、ブースの外でも「凄く美しい声ですね!」と賑やかに盛り上がってました。
― そして、この物語はファンタジーでありながら、登場する動物が絶滅種の動物を扱っていて、勉強になるところもたくさんあります。本編をご覧になった感想をお聞かせいただけますか。
七海:最初に印象に残ったのが音楽です。何度も流れる百貨店の曲がずっと耳に残っていました。映像とともに音楽も心に残ることってありますよね。色彩がすごい豊かで、その内容ももちろんなんですけど、目に映る情報と耳から入る情報がすごく印象的で華やか。きれいな曲が流れてる中で動物模様が表現されていて、誰かが誰かを常に思っているというところが、とても素敵な作品だと思いました。そして、悪い考えを持ったキャラクターが誰もいなくて、ほのぼのとしているところがいいですね。
花乃:本当にほのぼのしていて、私も姪っ子と一緒に観たいと思いました。子供たちと観たいですね。私自身もこの作品には自分の知らなかった動物がいっぱい出てきて、それを自然と覚えられるんです。文句(もんく)ばかり言っている“カリブモンクアザラシ”や、“ワライフクロウ”が「ホホホ」と笑っているなど、ネーミングも楽しいですし、そんな動物がもうすぐ地球からいなくってしまう、またはいなくなってしまった動物なんだということを押しつけがましくなく、私たちに考えさせてくれます。百貨店という歴史があってずっと続いていくものに対して、この動物たちはどうなんだろう・・・というようなことを小さな子供から大人まで楽しみながら、そこにある考えや思いを馳せたメッセージが自然に伝わってきて、ご覧になったあとに、楽しかった!可愛かった!だけでは終わらない凄い作品だなと思いました。
― また、この作品は新人コンシェルジュの秋乃さんの成長物語でもあります。お客様の要望に応えるコンシェルジュの仕事ですが、お客様に届ける表現者として何か相通ずるものはありますか?
花乃:私は舞台での活動が多く、公演に日数が長かったり、期間が変わったりすると、自分のコンディションやモチベーションを保つことが一番難しいのですが、プロとして公演を観てくださったお客様に、嘘をついたらおしまいだと常に思っています。その時の感情を嘘ではなくて、自分の本当の気持ちを乗せて演じるということを大切にしたいと考えています。そういう意味では、その“誠意”の精神に繋がるかと思います。
七海:誰かに対して表現していくお仕事なので、絶対にお客様を大切にするという精神は共通していると思います。お客様のことを考えながら(自分の表現を)届けたい。もちろん自分がやりたいから表現者として立っているわけですが、それが自分よがりになってしまうのではなく、お客様の時間と対価に合った、それ以上のものが出来たかということはいつも考えています。あとは、周りの人との繋がりですね。
― なるほど。秋乃さんも森さんや岩瀬さんら先輩たちに助けられて成長していきます。
七海:仕事をしていると、全てのことが1人ではできないと思っていて。自分だけでは限界があるので、本当に周りの人々の繋がりはとても大事だなと感じています。
花乃:七海さんは普段から、そう仰っていますよね。カイさん(七海さんの愛称)は周りの方々に対する感謝を常々言葉にされているので、本当に素晴らしい先輩です。
― ところで、本作の舞台は百貨店です。何か百貨店の思い出エピソードがあったら教えていただけますか?
七海:幼いころ、百貨店で迷子になったことがあるんです。名古屋の百貨店だったと思いますが、見たこともない綺麗なものがいっぱいあって夢中になっていたら、母たちとはぐれてしまい、いつの間にか迷子センターにいたんです(笑)。小さいときのそういう記憶って忘れないんですね。その時にコンシェルジュさんというか、迷子センターのお姉さんに「大丈夫だよ」と言ってもらって少し安心した記憶があります。百貨店には子供が夢中になるものがいっぱいあるってことですね。
花乃:そうそう、何でも揃っていて遊園地みたいですよね。なので、私も迷子になったことがあります(笑)。今でも百貨店が好きなんですが、特に食料品売り場が大好きなんです。その中でもクリスマスから年末にかけての百貨店の雰囲気が大好きで、毎年必ず大晦日と前日の30日に母と姉と一緒に百貨店にお買物に行くのが決まりでした。お正月におばあちゃんが東京に来てくれていたので、年を越す準備とおせちの材料、いつも高くてなかなか食べないご馳走とか買って。あの年末年始の百貨店の活気!美味しいもののてんこ盛りが好きすぎて(笑)。今は離れて住む母とも、自分だけでもしょっちゅう行くパワースポットです。
― クジャクの華やかさがとてもお二人にお似合いでしたが、もしクジャク以外に演じるとしたら、気になる動物・推しキャラはいますか?
七海:私はカリブモンクアザラシです。もともと幼いころからアザラシという動物が好きなんです。原作を読んだときからアザラシが出てる!と思っていたんですが、このカリブモンクアザラシちゃんは凄く文句を言っているんです。でも顔が可愛いんですよ。ちょっと複雑な気持ちで見ていたんですが、この子がいることによって秋乃さんが色々な対応をしたり人間(動物?)模様を見ることができるんだなと思うんです。たくさん文句を言っていますが、私はこの可愛いフォルムにすっかり癒されてしまって・・・。憎めないキャラクターなんです。
花乃:カップルで言えば、私たちクジャクカップルの強敵となるのが、ニホンオオカミのカップルだと思っています。2人(2匹)の空気感が素敵ですし、キャラクターとしてもとても可愛いので、クジャクとは全く違うタイプのカップルですが、推しキャラです。クジャクの他にやってみたい動物はウミベミンクの娘さんです。あの女優さんの感じが素敵。ウミベミンクが女優なんだ・・・という、キャラクターと動物の当てはめ方がとても面白い作品ですよね。
― それでは、最後にこれから本作をご覧になる皆さんへメッセージをお願いします。
七海:とても色彩が華やかで、何度観てもたくさんの発見があって、どのキャラクターに注目するかによって、また少し自分の気持ちも変わったりする作品になっています。お子様から大人、そして親子やカップル、お友達同士で観ていただくと、必ず楽しめると思いますので、ぜひこの北極百貨店にいらしてください。
花乃:私も本当に幅広い世代の方に楽しんでいただけると思います。そして、この作品に関わらせていただいた身としましては、皆様の心にずっと残る作品だったらいいなと思ってます。大切な方とぜひ観に来ていただけたら嬉しいです。
【七海ひろき】
茨城県出身。元宝塚歌劇団男役スター。現在は俳優・歌手・声優として多方面で活躍。「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語」では、座長として歌仙兼定役を演じた。主なアニメ出演作品は、「マッシュル-MASHLE-」(アビス・レイザー)など。
【花乃まりあ】
東京都出身。2010年宝塚歌劇団に入団。14年花組トップ娘役に就任。17年宝塚歌劇団を退団。近年の主な出演作に、舞台:『恋のすべて』(鈴木聡作・演出)、『8人の女たち』(板垣恭一演出)、『ザ・ミュージック・マン』(ダニエル・ゴールドスタイン演出)、TV:「越路吹雪物語」(EX)、情報番組「ZIP!」(NTV)にレギュラー出演。
撮影:ナカムラヨシノーブ
映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』
◆あらすじ
新人コンシェルジュとして秋乃が働き始めた「北極百貨店」は、来店されるお客様が全て動物という不思議な百貨店。
一人前のコンシェルジュとなるべく、フロアマネージャーや先輩コンシェルジュに見守られながら日々奮闘する秋乃の前には、あらゆるお悩みを抱えたお客様が現れます。
中でも<絶滅種>である“V.I.A”(ベリー・インポータント・アニマル)のお客様は一癖も二癖もある個性派ぞろい。
長年連れ添う妻を喜ばせたいワライフクロウ
父親に贈るプレゼントを探すウミベミンク
恋人へのプロポーズに思い悩むニホンオオカミ・・・
自分のため、誰かのため、様々な理由で「北極百貨店」を訪れるお客様の想いに寄り添うために、秋乃は今日も元気に店内を駆け回ります。
<キャスト>
秋乃:川井田夏海
エルル:大塚剛央
東堂:飛田展男
森:潘めぐみ
岩瀬:藤原夏海
丸木:吉富英治
給仕長:福山潤
トキワ:中村悠一
ワライフクロウ夫:立川談春
ワライフクロウ妻:島本須美
ウミベミンク娘:寿美菜子
ウミベミンク父:家中 宏
クジャク:七海ひろき
クジャク彼女:花乃まりあ
二ホンオオカミ:入野自由
二ホンオオカミ彼女:花澤香菜
バーバリライオン:村瀬 歩
バーバリライオン彼女:陶山恵実里
カリブモンクアザラシ:氷上恭子
ゴクラクインコ:清水理沙
ネコ:諸星すみれ
ウーリー:津田健次郎
原作:西村ツチカ『北極百貨店のコンシェルジュさん』(小学館「ビッグコミックススペシャル」刊)
監督:板津匡覧
脚本:大島里美
キャラクターデザイン・作画監督:森田千誉
コンセプトカラーデザイン:広瀬いづみ
美術監督:立田一郎[スタジオ風雅]
動画検査:野上麻衣子
撮影監督:田中宏侍
編集:植松淳一
音響監督:菊田浩巳
音楽:tofubeats
アニメーション制作:Production I.G
製作:アニプレックス、Production I.G、KDDI、ADKマーケティング・ソリューションズ、トーハン
配給:アニプレックス
主題歌:「Gift」Myuk(Sony Music Labels Inc.)
©2023西村ツチカ/小学館/「北極百貨店のコンシェルジュさん」製作委員会
公式HP:https://hokkyoku-dept.com/
X:@HOKKYOKU_Dept
Instagram:@hokkyoku.dept
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