映画「本心』の公開記念舞台挨が、11月9日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われ、主演池松壮亮をはじめ、共演の三吉彩花、水上恒司、妻夫木聡、田中裕子と、石井裕也監督が登壇した。
映画『月』や『舟を編む』などで知られる石井裕也監督が、平野啓一郎の傑作長編小説を原作に映画化した本作は、今から少し先の2025年、亡くなった母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせることを選択する青年・石川朔也と、彼を取り巻く人間の【心】と【本質】に迫る革新的なヒューマンミステリー。主人公・石川朔也を池松壮亮が演じ、三吉彩花、水上司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子ら豪華実力派俳優が集結した。
4年前に原作と出会った池松が自ら石井監督へ企画を持ち込んだ渾身の意欲作となる本作が公開し、池松は「感無量で、言葉がありません」としみじみ。(企画段階では)もう少し先の舞台になるかと思っていたんですが、映画と時代が追いかけっこをして、自分たちの生活に近づいてきた。公開できて嬉しいです。(制作に向けて)なかなか味方が見つからない中、石井さんが力を注いでくださった。監督ほか、皆さんと公開を迎えられて誇りに思いますし、嬉しいです」と万感の思いを語った。
石井監督は「この話を最初にしたときが、僕はバーだったと思っているんですが、池松くんはタクシーの中・・・と言うんです。4年前のことですが、こうやって記憶って曖昧。人間も曖昧なんです。この映画が曖昧なスタートで良かったと思っています」と語る。
朔也とバーチャルの母との再会にシーンは見どころの一つだが、池松は「強烈に記憶に残っているシーンです。母を作り上げてしまって、最愛の人と会えた喜びと、これは母でありながら、(本当の生身の)母ではないという複雑さがあった」と気持ちの揺らぎもあったよう。
その場に登場した田中に心情を訪ねると「ろうそくがともって暗闇の中から私が出てきたという感じですよ」とあっけらかん。妻夫木は「お二人が演じられているのを見て、命が吹き込まれる感じがして、僕も(バーチャル人間を)作りながら感動しまいした」と語る。監督も「出番を待つ田中さん姿をよく覚えています。実態があるようなないような感じで・・・」と話すと、田中は「緊張していただけですよ(笑)」と笑い飛ばしていた。ただ、池松は「僕はなるべく(田中さんを)見ないようにしていました。朔也として(母に)会いたかったので」とこだわりも。
水上は、池松と対峙するシーンに触れ「アクションは楽しかったです」とするも、「監督が『水上くん、まだできるよ』というので緊張しました」と苦笑い。池松は「最近、特殊詐欺のニュースを見ると、水上くん、大丈夫かな?と思ってしまいます」と水上のリアルな演技を称えつつも、会場の笑いを誘っていた。
これまで長い付き合いで親交を深めている、池松、妻夫木、石井監督。池松は「監督との出会いは僕が20代で、石井さんが28~29歳のころだったと思うけど、何も変わらないですね。しいて言うならお酒が少し弱くなったくらいかな。貧乏ゆすりも変わらないです(笑)」と。
妻夫木は「尊敬するのに年齢は関係ないと思えた人たち。仲間というより親族のような感覚。特に変わっていませんが、深みが増して変わってほしくないところが強大になった」と述べる。池松は妻夫木との間がらを「10年前に兄弟役をやらせていただいて、その頃から心の距離が近くて安心感がある」と特別な関係値を吐露。
監督も「2人は僕にとっても特別。仕事仲間だけれど親戚のような・・・。道を誤らなければ人生を並走していくような大切な人たちです」と力を込めた。
また、「映画の昔と今の違いについて」を田中に尋ねると、「昔は1つのシーン、1つのカットを撮るのに2日かけたりすることもありました。“いい霧”がくるのを待つんです」と話すと、監督は「憧れですね。今は霧が出なければVFXで作ってしまうようなことがあるけれど、やっぱり思いやエネルギーが違う。軸は変えずに新しいものを取り入れなければいけない」と意見した。
イベントでは、来年ついに訪れるこの物語と同じ”2025年”の近い将来への展望と抱負を本心”で語る場面も。監督は「今年は厄年だったので、肉体の衰えを感じたので、来年は気を付けようと」と言い、田中は「今年もいい年でした」とニッコリ。妻夫木が「今年は40肩で・・・もう治りましたが」と笑いつつ「来年は健康第一で」といい、水上は「今年もいい年でした。たくさん失敗してちょっとだけ結果が出て。20代はいろんな現場を経験したい。来年も益々頑張ります!」と目を輝かせた。三吉は「今年は国内外を飛び回らせていただいて充実した年でした。来年は20代最後の歳なので、30代に向けてさらに充実した1年を送りたいです」とコメント。池松は「今年も変わらず何事もなく、過ごせて幸せでした。来年は世界の未来に自ら手を伸ばしていけるよう、自分の心で世界に触れていくようにしたい」と期待に胸を膨らませていた。
【STORY】
工場で働く青年・朔也(池松壮亮)は、同居する母(田中裕子)から仕事中に電話が入り「帰ったら大切な話をしたい」と告げられる。帰宅を急ぐ朔也は、途中 に豪雨で氾濫する川べりに母が立っているのを目撃。助けようと飛び込むも重傷を負い、1 年もの間昏睡状態に陥ってしまう――。目が覚めたとき母は亡くなっていて、生前“自由死”を選択していたと聞かされる。また、ロボット化の波で勤務先は閉鎖。朔也は、唯一の家族を失くし、激変した世界に戸惑いながらも幼なじみの岸谷(水上恒司)の紹介で「リアル・アバター」の仕事を始める。カメラが搭載されたゴーグルを装着し、リアル(現実)のアバター(分身)として依頼主の代わりに行動する業務を通して、人々が胸の内に秘めた願いや時には理不尽な悪意に晒され、人の心の奥深さとわからなさを日々体感してゆく。そんななか、仮想空間上に任意の“人間”を作る「VF(ヴァーチャル・フィギュア)」という技術を知る朔也。いつまでも整理のつかない「母は何を伝えたかったのか?どうして死を望んでいたのか?」を解消したい気持ちから、なけなしの貯金を費やして開発者の野崎(妻夫木聡)に「母を作ってほしい」と依頼する。野崎の「本物以上のお母様を作れます」という言葉に一抹の不安をおぼえた朔也は「自分が知らない母の一面があったのではないか?」と、手掛かりを求めて、母の親友だったという三好(三吉彩花)に接触。彼女が台風被害で避難所生活中だと知り、「ウチに来ませんか」と手を差し伸べる。かくして、朔也と三好、VF の母という奇妙な共同生活がスタートする。その過程で朔也が知る、母の本心とは。そして「人に触れられない」苦悩を抱える三好を縛る過去、彼女だけが知る母の秘密とは。その先に浮かび上がるのは、時代が進んでも完全には理解できない人の心の本質そのものだった――。
【クレジット】
池松壮亮
三吉彩花 水上恒司 仲野太賀 / 田中 泯 綾野 剛 / 妻夫木 聡田中裕子
原作:平野啓一郎「本心」(文春文庫 / コルク)
監督・脚本:石井裕也
音楽:Inyoung Park 河野丈洋
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:RIKI プロジェクト
©2024 映画『本心』製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/honshin/
公式 X:@honshin_movie (ハッシュタグ:#本心映画化 #本心)
全国絶賛公開中!