韓国クライム・サスペンスとして話題を集めた映画『さまよう刃』が、いよいよ9月6日(土)に日本公開される。日本でも大ベストセラーとなり映画化もされた、サスペンスの巨匠東野圭吾による衝撃の同名作品を、イ・ジョンホ監督自ら脚本を書き、メガホンをとって本格的サスペンスに仕上げた。監督が伝えようとしているテーマとは? 主演のチョン・ジェヨンはこの難しい役を演じるにあたって、どのような気持ちで臨んだのか・・・。
公開を記念し、プロモーションのため来日したイ・ジョンホ監督とチョン・ジェヨンがインタビューに応じてくれた。
作品の重いイメージとは反対に、爽やかな笑顔でインタビュールームの扉を開いた背の高いイケメン二人。「アニョハセヨ~」「宜しくお願いします」とニッコリ。和やかな雰囲気の中、早速インタビューが始まった。
― 本作が日本で上映されることになった感想は?
チョン・ジェヨン:とても光栄に思っています。日本の小説が原作ですし、日本でも映画化されていると聞いています。韓国で作られた『さまよう刃』が、日本のみなさんからどのような反応をもらえるのか、とても気になるし心配もありますがワクワクしています。
イ・ジョンホ監督:私は以前から原作者の東野圭吾さんのファンでしたので、東野さんの小説を原作として映画化でき、日本で公開されるということは緊張と同時に楽しみでもあります。この小説を初めて読んだとき、韓国人としてもとても情緒が伝わってきました。小説を読んで慟哭し、共感しました。この作品のテーマには日本でも韓国でも同じように感じる普遍的な情緒というものが、きっとあるのではないかと思っています。
― 作品を演出、または演じるにあたって、自分の中で課題だったことは?
イ・ジョンホ監督:一番難しいと思ったのは、当初この原作を映画化するという提案を受けたときに、(作品が)青少年犯罪を扱っているということでした。ともすると人はできることであれば目を背けたいと思う分野のもの。それを映画化しなくてはいけないというところで大きなプレッシャーを感じました。実際に撮影に入ってからも、あらゆる場面において非常に慎重に考える必要があったので、全てのシーンにおいてあれこれと悩みながら慎重に選択をしながら撮っていきました。“青少年犯罪に対する法律が間違っているんだ”ということを前面に打ち出すのではなく、罪を犯していても悪魔のような青少年には描かないようにしようと思ったんです。これを観た人たちが、この問題をどうしていったらいいのかと悩むことができるトーンを維持していこうと心がけました。
チョン・ジェヨン:父親としてその心情をどう理解していくかというところが一番の課題でした。セリフが多いわけでもないし、その時々の場面においてどんな心境なんだろうか、どういうふうに歩くのが正解なのか、どう動くのがいいのだろうかと。父親としての心情を本当に理解していくということが、やはり思っていた以上に難しいなと感じながら演じていました。
― 特にこだわったシーンやお気に入りのシーンは?
チョン・ジェヨン:どのシーンを撮ることも難しかったですが、一番大変だったのはラストの少年と対峙するシーンです。カンヌンという駅の周辺で撮影したのですが、人も多く色々な意味で混乱の中の撮影でした。
イ・ジョンホ監督:この映画を制作するのに3年半くらい準備しました。私が特にこだわって印象に残っているシーンは2つあります。まず1つは、父親のサンヒョンが、雪原の中で一人たたずみ、自分の死を意識しているのか、娘の魂と対話しているところです。復讐の目的さえ見失いそうになっている・・・そして娘に謝罪するシーンです。チョン・ジェヨンさんもとてもいい演技を見せてくださり、想像以上に良いシーンを撮ることができました。2つめは、私もラストです。そのシーンがこの映画のテーマの全てを表現しているのではないかと思います。あの場面のチョン・ジェヨンさんの顔に全てが表れているのではないか。あの時の表情がとても良くて今でも時々見るくらいです。
― 監督から見て、チョン・ジェヨンさんはどんな俳優ですか?
チョン・ジェヨン:監督は今回が2本目の興行映画になりますが、前作の『ベストセラー』という作品もとても面白く観させていただきました。実際にお会いしたのは本作が初めてですが、監督にしておくにはもったいないくらい、とてもハンサムで背も高くて(笑)。韓国の(監督の中で)3本の指に入るんじゃないかと思うほどのルックスと実力を持ち合わせた監督です。僕は、監督よりハンサムじゃないから、キャスティングされたんじゃないかと思いますよ(笑)。
イ・ジョンホ監督:いやいや、チョン・ジェヨンさんは韓国ではとってもハンサムな俳優さんですよ。
チョン・ジェヨン:普段はもう少しマシなんですけどね。昨日はちょっとお酒を飲んじゃって・・・「スミマセン(日本語で)」(笑)。
― チョン・ジェヨンさんから見た、監督はどんな方ですか?
イ・ジョンホ監督:ごらんのように彼は韓国で最もハンサムな俳優の一人であり、千の顔を持つ俳優と言われています。これまでも数々の作品に出演されていますが、独自のポジションを確立されています。真剣でシリアスな表現からコミカルな表現までやってのけられる俳優はそう多くはいません。そういった少数の俳優の中の一人であり、演技においては100%の信頼をおいていたので、何の心配もありませんでした。当初から本作のシナリオを気に入ってくれて、今日初めて話しますが、彼はとても勇敢な方だなと思います。こんなハードな素材の作品で、真の人間の重い感情を表現しなくてはいけない役を引き受けてくださって、とても勇気があると思いますし、社会を見つめるしっかりとした姿勢がある方です。初めて会った時も、『自分が出ている部分をたくさんカットしても構わない。社会に投げかけるべき内容の部分はしっかり出してほしい』と言ってくださるほどでした。
― 韓国映画で“復讐”や“バイオレンス”というジャンルでいうと『悪魔を見た』や『アジョシ』などの作品がありますが、今回の作品を演じたり演出する上で分析したり参考にすることはありましたか?
チョン・ジェヨン:特に研究や分析はしていませんが、この映画に臨むにあたって情緒面において参考になる作品はないかと監督にうかがったところ、『息子』という作品を教えていただき感銘深く観ました。もちろん、この作品も“復讐”という素材が入りますが、『オールドボーイ』や『悪魔を見た』というジャンルのものとは少し要素が違うと思います。
イ・ジョンホ監督:私も他の“復讐”を扱った作品を意識することはありませんでした。大きな意思が働いて復讐に臨むのではなく、たまたま犯人の男の子が発した言葉、その状況に置かれた父親の衝動的な行動が結果的に“復讐”という形にはなりますが、他の復讐的ジャンルのものとは違いますね。
― 撮影で特に大変だったことは?また、共演者のイ・ソンミンさんを含め、撮影中の楽しかったエピソードがあったら教えてください。
チョン・ジェヨン:実は監督に叱られたことがあったんです。撮影時は真冬で本当に寒かったんですね。ですから普通は温かい下着をつけて衣装を着るのですが、許されませんでした。でも、あまりに寒くて衣装チームの人と相談して一枚多く着て現場に出たんです。ところが、監督に『急に体が分厚くなりましたね』とすぐに気がつかれてしまい・・・仕方なく本来の衣装で臨みました。監督はたくさん重ね着をして温かくしているのにね。
※これを聞いた監督苦笑い。
イ・ジョンホ監督:本作には10代の俳優たちもたくさん出演します。警察で刑事の前で取り調べを受けるシーンがあるのですが、刑事役のイ・ソンミンさんには言わずに10代の彼らに“刑事に対してもっと生意気に”演技をするようにディレクションを与えてみたんです。何も聞いていなかったイ・ソンミンさんが、あまりにも生意気な彼らの態度に本人も気づかないうちに胸ぐらを掴んで殴ってしまいそうになるくらいの場面がありました。
― その場面は実際に映画の中で使われているのですか?
イ・ジョンホ監督:映画ではそのシーンが使われたわけではないんですが、「あいつら凄く生意気で!」とすごく頭にきていた状態だったので、次のシーンでは感情が上手く乗ってとてもいいシーンが撮れました(笑)。
一方、チョン・ジェヨンさんは10代の子たちと争うシーンがあったのですが、10代の彼らは経験が浅く、蹴るフリをする加減がわからないんですね。なので、チョン・ジェヨンさんを実際に蹴ってしまうんです。ジェヨンさんも驚いて「わー!」と声をあげてしまう場面もあったんですよ(笑)
チョン・ジェヨン:私たち俳優にとって、とても頭にきたエピソードですよね(笑)。せっかくそこまでして撮ったのに、本編ではカットされちゃっているんですから(笑)。
― 若い俳優さんたちとは仲良く撮影できましたか?
イ・ジョンホ監督:もちろんです。僕たちは時間も守って10代の子たちをしっかり保護しながら撮影しました。あくまでも演技上では生意気で不良の学生でしたが、実際には本当にいい子たちでしたよ。10代の俳優は演技の経験がない人が多く、オーディションを何回も経て選ばれた人たちが演じています。
本作に対する熱い思いと、真剣に丁寧に作った作品であることを伝えてくれた、チョン・ジェヨンとイ・ジョンホ監督。二人の笑顔からは達成感と自信が感じられ、作品が日本で公開されることを心から喜んでいる様子だった。
“青少年犯罪”に対する問題は重く難しいものではあるが、この映画を観て、まずは一人一人が感じて考えてみることに大きな意味があるのではないだろうか。
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■応募方法 Astageアステージ公式Twitterアカウント「@astage_ent」をフォロー&リツートしてくださった方の中から抽選で2名様へプレゼントします。(発送先が日本国内の方に限ります)
■応募締切 9月20日(土)まで
・当選者の発表は、賞品の発送(2014年10月上旬予定)をもって代えさせていただきます。当落に関するお問い合わせはお受けできません。
・当選者の方にはDM(ダイレクトメッセージ)にて当選のご連絡をさせていただきます。
※DM(ダイレクトメッセージ)は@astage_entをフォローいただいてませんと、お送りすることができません。
たくさんのご応募をお待ちしております!!
映画『さまよう刃』
<STORY>
最愛の娘を殺した少年に自らの手で裁きを下そうとする父親、それを阻止しなければならない警察官。
父親の復讐は“正義”か“悪”か?そして、待ち受ける衝撃的な結末とは?
町内の廃墟と化した銭湯で、冷たくなった死体で発見された女子中学生スジン。 父親のサンヒョンは妻を亡くしてから男手ひとつでスジンを育ててきた。一人娘の死を目の前に、喪失感でただただ茫然とする。そんなある日、サンヒョンに犯人の情報が書かれた匿名のメールが届く。そこに書かれている住所を訪ねると、少年たちに暴行され死にゆく娘スジンの動画を見て笑うチョルヨンを目撃する。一瞬、理性を失い誘発的にチョルヨンを殺してしまうサンヒョンは、また別の共犯者の存在を知り犯人を捜そうとする。一方、スジンの殺人事件の担当刑事オッグァンはチョルヨンの殺害現場を見てサンヒョンが犯人だと見抜き、追跡し始めるのだった。正義とは何か?誰が犯人を裁くのか?世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎えるー。
原作:「さまよう刃」東野圭吾(朝日新聞出版)
監督・脚本:イ・ジョンホ
撮影:キム・テギョン
音楽:キム・ホンジプ
出演:チョン・ジェヨン、イ・ソンミン、ソ・ジュニョン、イ・ジュスン、イ・スビン
2014年/韓国/韓国語/122分/
原題:방황하는 칼날/
配給:CJ Entertainment Japan
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公式サイト:http://samayouyaiba.net/
9/6(土)角川シネマ新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー