映画『いつまた、君と ~何日君再来~』の試写会が6月4日、東京・新橋のスペースFS汐留にて行われ、観覧後に向井理と俳人・星野高士氏が登壇する俳句イベントが開催された。
本作は、向井理の祖母・芦村朋子の半生を綴った「何日君再来」を原作に映画化。物語は、戦後の混乱期、夫・吾郎(向井の祖父)と妻・朋子が、時代の波に翻弄されながらも、日本人の誇りを失わずに懸命に生きる、壮大な愛を描いている。書籍は、向井が大学生のときに、祖母の手記をパソコンで打ち直し、家族や親戚と共に自費出版をして、卒寿(90歳)をむかえた祖母へお祝いとしてプレゼントしたもの。この原作をもとに向井自身が7年の歳月をかけ、企画にも携わった渾身の作品だ。
本作が映画化に至った経緯について、向井は「僕は言い出しただけ。周りに助けられました。脚本も一番書いてほしかった『ゲゲゲの女房』の山本さんにお願いできましたし、監督も深川栄洋さんが務めてくださり、嬉しいことだらけでした。このタイミングで映画化できたのは良かったです」と微笑んだ。
俳人として、最近はTV出演も多く、親しみやすいキャラクターとわかりやすい解説で人気の星野氏は、この日も本作を観賞。観るのが3回目と話し、「映画で涙することはあまりないのですが・・・泣きました。泣きたくない意地があるのに、破られましたね(笑)、感動しました。今日も3回目の涙を流してしまいました。(向井さんは)お祖母ちゃん孝行な俳優さんですね。昨日はお会いできると思ったら眠れなかった。直にお会いできて、今夜も眠れそうにありません」と語り、会場を沸かせた。
向井の祖母になる朋子を星野氏もファンだという尾野真千子が熱演。実際の朋子さんもとてもアクティブな女性だったと話す向井。「小学生~大学2年生くらいまで10年くらい一緒に暮らしでいました。二人でインドネシアに旅行したこともあります。一人でもイタリアに行って。最初は1週間くらいで帰ってくるかと思ったら、結局3か月くらい行ってました。絵を描いてきて帰ってきてから個展開いていましたね」とエピソードを披露。
向井演じる祖父・吾郎については「名前も聞いたことがなくて手記の時に知ったくらい。印象はユーモアがあって、みんなを楽しませる人。そして、書き物が好きで俳句も書いていました。脚本家の山本むつみさんがとてもていねいに台本にしてくださったので、それを忠実に演じました」とし、「忠実という意味では、トラックも70年近い昔の車を用意し、実際に運転しました。エンストさせるのが難しかったです」と語る。
一方、正岡子規に師事し、明治・大正・昭和の三代にわたる俳人・小説家として知られる高濱虚子のひ孫にあたる星野氏は「俳句をやり始めて、虚子の凄さがわかりました。私もお祖母ちゃんに可愛がられていて。お祖母ちゃん(俳人・星野立子氏)の俳句に出会ってこれはすごい!俳句をやってみようと思ったんです」と、祖母の影響で俳人となったことを明かした。
イベントは、激中で吾郎が朋子に俳句を送ることにちなみ、一般の俳句ファンが映画を観た感想を俳句にしたため、星野氏がそれを添削をするというもの。挙手で自身の俳句を披露する形になったが、積極的にたくさんの手があがり、向井と星野氏も選ぶのに迷うほど。どの作品も力作ばかりだったが、それでも星野氏の手が少しだけ加わるだけで、より味わい深い作品となっていた。
最後は星野氏も『向ひ合ふ 千の谺(こだま)や 大夏野』と、一句。
「夏の野原のシーンが印象的だったので。千のこだま(メッセージ)を受けていろいろ乗り越えて、これからも行くんだなと。上後に向井さんの“向を、最後に尾野真千子さんの“野”を入れました」と説明し、向井に送った。
あらためて向井は「僕の家族の記録を残したいのではなくて、あの時代を残しておきたかったんです。あの時代の人々の苦労や悔しさを形として残しておかないと。この10年、20年で、ものすごいスピードで残せる場所がなくなっている。今作のロケ場所を探すのも大変でした。場所がなくなると同時にその人たちの思い出もなくなってしまう。少しでもその時代の形で残しておきたかったんです」とその熱い思いを吐露。
「愛してるとか好きとか一切言わなくても、その情景が伝わるのが日本映画のいいところ。大変な時代を諦めず乗り越えてきた人たちが先祖にいたから僕たちがいる。少しでも先人たちに思いを馳せるのもいいんじゃないかなと思います」とメッセージを伝え、イベントを締めくくった。
『いつまた、君と ~何日君再来~』
<ストーリー>
どんなに貧しくても、父ちゃんが私の誇りだった。私、やっぱり父ちゃんがいい。
81歳になった芦村朋子(野際陽子)は、不慣れな手つきでパソコンにむかい、亡くなった夫・吾郎との思い出を手記として記録していた。しかし、朋子は突然倒れてしまう。そんな朋子の代わりに、孫の理が手記をまとめていくことに。そこに綴られていたのは、今まで知ることのなかった祖母・朋子(尾野真千子)と祖父・吾郎(向井理)の波乱の歴史と深い絆で結ばれた夫婦と家族の愛の物語だった。そして、その中ではじめて語られる朋子の子供たちへの思い―。その手記は、進路に悩んでいた理(成田偉心)に、そして朋子に対してずっとわだかまりを抱いていた娘・真美(岸本加世子)の心に変化をもたらしていく-。
出演:尾野真千子 向井理 岸本加世子 駿河太郎 イッセー尾形 成田偉心/野際陽子
原作:『何日君再来』芦村朋子
主題歌:「何日君再来」高畑充希(ワーナーミュージック・ジャパン)
脚本:山本むつみ「ゲゲゲの女房」「八重の桜」
監督:深川栄洋「神様のカルテ」「60歳のラブレター」
製作:「いつまた、君と ~何日君再来~」製作委員会
配給:ショウゲート
(C)2017「いつまた、君と ~何日君再来~」製作委員会
公式サイト:http://itsukimi.jp/
6月24日(土)より、全国ロードショー