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映画『影踏み』 篠原哲雄監督インタビュー! 監督が思う「影踏み」らしい瞬間とは?

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「64-ロクヨン-」「クライマーズ・ハイ」などで知られる人気ミステリー作家・横山秀夫の「影踏み」がついに映画化! 警察小説の旗手である横山作品の中でも犯罪者側を主人公にした異色の犯罪ミステリーを、映画ならではの解釈と映像でダイナミックに表現。主演は山崎まさよし、監督は映画『花戦さ』や『ばぁちゃんロード』などで知られる篠原哲雄が務めた。

山崎とは映画『月とキャベツ』から、20年来の盟友である篠原監督が、前作とは全く違う山崎まさよしを描き出す。主人公・真壁修一の心情の深さ、弟の啓二(北村匠海)との対峙・・・観る者の心を鷲掴みにする本作。監督が描きたかったものは何か・・・。篠原監督に話を聞いた。

― 警察小説の名手と言われる横山氏の作品ですが、これまでの映画化作品とは違い泥棒の話です。小説の魅力をどう捉えて映画にされたのでしょうか。

小説は事件だけでなく、色々な行動が多角的に語っていくと思いますが、僕はこの小説を映画にすることを前提に、方法論を考えがなら読んでいました。読みながら中軸に存在する人物の描き方を考えて。直感的に弟の存在というものは自分の頭の中に芽生えていて、小説を読みながら立体的になっていきました。小説では主人公が、クリスマスイブの日に泥棒仲間の依頼で、ある女の子の家に忍び込んで逆にプレゼントを届けるという話があるんです。とてもステキな話なんですが、残念ながらその設定はこの映画の中には入らないかな・・・という感じで。

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― 主人公はもちろんのこと登場人物にそれぞれの物語があり、色んな視点で観ることができます。演出での苦労はありましたか?

脚本の段階でしっかり構築はしましたので、あとは実践的にどう撮っていくかということが重要だったんです。現場で俳優の芝居みながらふくらませたりはしましたが。

― 山崎まさよしさんとは映画『月とキャベツ』から23年経ち、再びタッグを組まれていかがでしたか?

1996年に『月とキャベツ』が制作されたときから、山崎まさよしと篠原でまた映画を作ろうという話はしていたんです。『影踏み』を題材に映画化しようと決まったときから、主人公は山ちゃんでいこうと決めていました。だから、最初から彼の様相が頭の中で浮かんでいました。『月とキャベツ』のあとに、『けん玉』や『BUNGO -日本文学シネマ- グッド・バイ』も一緒にやっていますが、『月とキャベツ』ではミュージシャン役、今回は泥棒役なので全然違う役になります。彼の持ち味からしてもミュージシャン役のほうが等身大の青年でアプローチしやすかったかもしれませんが、映画の人物はフィクションですからなりきることはありえない。当然作っていかなければならないわけです。でも、本人の中にはダークな部分もきっとあるはず。人前ではそんなふうに見せないけれど、トラウマ的に誰かを傷つけてしまったり、誰かが亡くなってしまってそのことが何かずっと心に残っているとか、そのことが大きいことか小さいことかは分からないし、そこまで私的な話はしていませんが、そういう意味で“人間の奥底にあるダークネスとの対峙”と考えれば彼自身も向かいやすかったかもしれません。

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― それは年齢を重ねていき、山崎さんの生き様、人となりがキャラクターに反映してくるということになるのでしょうか。

そうですね。そうなっていると思います。

― また、北村匠海さんがとても存在感があります。山崎さんとはミュージシャン同士ということもありますが、監督から見てお二人の演技の化学反応はいかがでしたか?

相性が良かったと思います。北村くんはとても爽やかな印象がありますが、彼も必ずしもそれだけではないはずです。

サブ写真③『影踏み』

― 確かに、最初に出てくる無邪気な雰囲気から、物語の確信に入ってくる時には形相も変わってきます。

北村くんは凄く芝居が上手い人だなと感心していました。自分から色んな引き出しを開けてくれました。

― 撮影がオールロケだったということも演じる上で影響はあるんでしょうか?

撮影の環境もありますね。あとは北村くんの場合、金髪やアロハなどのルックス、そして山崎さんとの対峙などを含め、役がらを本人なりに色々考えていたと思います。もちろん、間違っているようなことがあれば、「これはどうなんだろう」と話し合いをしますが、北村くんとはあまりそういうことはなかったんです。ほとんど彼自身が作り出したものを良しとして受け入れました。多少プラスアルファしたかもしれませんが。

― スムーズな撮影だったということですね。山崎さんと北村さんの関係性も良かったのでしょうか。

そうですね。クランクイン前に山崎さんと北村くん、僕とプロデューサーの4人で食事をする機会があって、その時に彼の芸歴とか、どんなふうに俳優になったのかとか、ご両親の関係とか、いろいろ雑談したんです。その時に二人はお互いミュージシャンですから気の合う話もあったようです。その日も二人で一緒にタクシーに乗って帰りましたし、いい感じだったんじゃないでしょうか。

メイン写真『影踏み』

― 主人公はもちろんのこと、登場人物たちがとても人間臭く描かれています。監督が映画を撮るとき、特にこだわっていることはなんでしょうか?

何だろう・・・。僕は撮影するときに、みんなをあくせくさせないし、現場で突くようなことはしないんです。むしろ俳優が振る舞いやすく、自然にその役を演じられるように自分の身を置いています。だからあまり強制もしないし、好きなようにやってくれ・・・という感じです。決してほったらかしているわけでないですよ。演じやすいようにね(笑)。

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― ラストの修一の心情がとても胸に迫ります。

ラストのシーンは、彼がどういう表情をするのか、今後の生き方の序章のような場面なので、僕もけっこう粘りました。最初に演じたときは少し違うなと思ったので、山崎さんに「ちょっと考えてみてください」って言って。そうしていくうちに徐々に顔つきも変わっていったんです。僕はそういうやり方です。そうやって自然と感情が表に出てくる。どの俳優さんにも「こうしてくれ」とは言わないですね。

― では、監督が本作で一番好きなシーン、印象深いシーンがあったら教えてください。

「影踏み」というタイトルの意味は、少しわかりづらいかもしれないですよね。物語では主人公が過去を乗り越えていく話のなかで、ある人物と交錯していきます。そこが「影踏み」らしい瞬間だと思っています。そこをどう描くかがテーマでした。普通ではありえないことですが、物語のキーポイントとなると思います。映画の中のキラーショットですね。観ていただければ「影踏み」の意味もきっとわかると思います。

― そこに注目して観てみると、監督が伝えたかったことがよくわかる?

人は過去のトラウマを乗り越えなければいけないし、しがらみや血縁もある。でも、それも大事にしながら自分の中に取り入れて全部飲み込んで生きていくんです。映画のポスターにそれが上手く表れているような気がします。

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【篠原哲雄(しのはら・てつお)プロフィール】
1962年2月生まれ。東京都出身。明治大学法学部卒。その後、助監督として森田芳光、金子修介、根岸吉太郎監督作品などに就く傍ら、自主制作も開始。1989年、8ミリ『RUNNING HIGH』がPFF89特別賞を受賞。1993年に16ミリ『草の上の仕事』が神戸国際インディペンデント映画祭でグランプリ受賞。国内外の映画祭を経て劇場公開された。初長編『月とキャベツ』(96)で山崎まさよしが主演。その後、『洗濯機は俺にまかせろ』(99)をはじめ、『はつ恋』(00)、『深呼吸の必要』(04)、『地下鉄(メトロ)に乗って』(06)など多彩な作品を数多く手がける。近年では『花戦さ』(17)、『プリンシバル~恋する私はヒロインですか?~』(18)、『ばぁちゃんロード』(18)などがある。『君から目が離せない ~Eyes On You~』(19)では、山崎まさよしが主題歌を提供した。

『影踏み』本ポスタービジュアル

映画『影踏み』
<STORY>
ノビ師(泥棒)の真壁修一は、ある夜、侵入した稲村邸で、寝ている夫に火を放とうとする妻・葉子を目撃する。咄嗟に止めに入ったが、なぜか偶然、その場に居合わせた刑事に現行犯逮捕される。2年後、出所した修一を迎えたのは、弟の啓二と恋人の久子だけ。なぜ稲村邸への侵入がバレたのか? なぜ自分だけが逮捕されたのか? そして放火殺人を謀った葉子の行方は―。謎を解明するため、修一は探偵さながらの行動を開始する。

山崎まさよし 尾野真千子 北村匠海
中村ゆり 竹原ピストル 中尾明慶 藤野涼子 下條アトム 根岸季衣 大石吾朗 高田里穂 真田麻垂美 田中要次 滝藤賢一 鶴見辰吾 / 大竹しのぶ
監督:篠原哲雄
脚本:菅野友恵
原作:横山秀夫(「影踏み」祥伝社文庫)
音楽:山崎将義
主題歌:「影踏み」山崎まさよし(EMI Records)
企画協力:伊参スタジオ映画祭実行委員会 上毛新聞社
製作プロダクション:ドラゴンフライエンタテインメント
エグゼクティブプロデューサー:千村良二 岡本東郎
プロデューサー:松岡周作
配給:東京テアトル
©2019「影踏み」製作委員会
公式サイト:http://Kagefumi-movie.jp

11月15日(金)より 全国公開中!