【ゲイ】と【腐女子】から「私」と「あなた」へ
ゲイであることを隠しながら生活する男子高校生とBL好きを隠している女子同級生との恋愛を通じ、世間にはびこる“ふつう”という価値観とのギャップに向き合う男女の姿を描いた映画『彼女が好きなものは』。原作は、小説家・浅原ナオトの「彼⼥が好きなものはホモであって僕ではない」(角川文庫刊)。Web⼩説サイト「カクヨム」で話題となり、2018年2⽉に書籍化、2019年4⽉にはNHKで「腐⼥⼦、うっかりゲイに告る。」のタイトルでドラマ化もされ、⼤きな反響を呼んだ。本作『彼女が好きなものは』は2021年12月3日(金)に全国公開する。
主人公の安藤純を演じるのは神尾楓珠。「異性を愛したい」「家庭を築きたい」と世間で“ふつう”と言われる幸せを手にしたいと願いながらも、自分らしさとの狭間で葛藤する純を繊細に演じている。純がゲイだと知らずに告白をする女子高校生の三浦紗枝役には山田杏奈。そのほか前田旺志郎、三浦獠太らが純と紗枝のクラスメイトを好演、純の恋人の佐々木誠役には今井翼が扮し、自分の性的指向やアイデンティティに悩む純にかつての自分を重ねるように、優しく寄り添う。
【ゲイ】と【腐女子】から「私」と「あなた」へ…。12月3日公開の映画『彼女が好きなものは』の先行上映イベントが11月26日に都内で行われ、主演の神尾楓珠、共演の山田杏奈、今井翼、そして草野翔吾監督が出席した。
「異性を愛したい」「家庭を築きたい」。世間で“ふつう”と言われる幸せを手にしたいと願いながらも、自分らしさとの狭間で葛藤する主人公・安藤純を繊細に演じた神尾。「僕自身には経験のないことなので、純の抱える葛藤などが掴みにくく難しいところもあったけれど、世間の目と自分の考えをすり合わせて純の悩みや葛藤と向き合っていきました」と撮影を回想した。
純に恋をする女子高校生の三浦紗枝役の山田は「自分の好きなものが言えないところは純と共通する点。本当の自分をさらけ出すのは難しい事だけれど、その中で周りの人と共に生きていくのにはどうしたらいいのかを考えながら演じました」と役作りを振り返った。
純の恋人・佐々木誠役の今井は「僕自身にとって、このような役柄は初めて。同性を愛しているからと言って閉鎖的に過ごさなければいけないということはないと思います。同性を愛することは特別なことではありません、純には包容力をもって接しようと思いました。」と演じる上での心構えを口にしていた。
草野監督は満席の客席に大感激。「会場に入った瞬間にグッときました。一席空けの映画館ばかりに行っていたので、満席という景色に感激です」と満面の笑みを浮かべていた。
印象的なシーンの話題になると、今井は温泉デートのシーンをあげ、純と誠が一緒にいる所を紗枝に目撃される場面を挙げた。紗枝から投げられたヨーヨーが破れて神尾、今井が水を浴びるというシーンでは「きちんと命中させないと衣装を乾かして一やり直さなければいけないので、実は一発勝負の撮影だったんです。内心ドキドキしていましたし、投げられることを分かっている風に見えてはいけないので、ビンタされる芝居と同じ要領で平静を装いながらやっていました」と苦労もあったよう。
また神尾とのラブシーンを挙げて「女性とのラブシーンもそうですが、(神尾演じる)純がいちばん美しく見えるように心掛けて演じました。楓珠君は、若いのにとてもしっかりしている素敵な俳優さん、安心して演じることができました」と一回り以上年下の神尾に全幅の信頼を寄せていた。
すると神尾は、誠との別れのシーンでラムネが噴き出す箇所を挙げて「実際はラムネがこぼれる予定ではなかったけれど、いざ本番でやってみたらラムネがこぼれたんです。それを今井さんがとっさにハンカチを出して芝居でカバーしてくれたときは、誠さんの優しさに触れて泣きそうになりました。あのシーンを思い出すと今でも泣きそうになる」と今井のアドリブに感動。今井も「二人の最後の時間の中で自然とそういう演技になりました。撮影を重ねる中で生まれたコミュニケーションがそういうところに出たのかもしれないです」と心境を解説。草野監督も今井の咄嗟のアドリブに「今までの純と誠の関係性がギュッと見えた気がした、とてもいいシーンですよね!」と大興奮していた。
今井は神尾について「巷では僕の若い頃の顔と(神尾君の)系統が似ていると言ってくれる人がいるみたいで、ありがたいんですよ」と神尾にお礼を言うと、神尾も「こちらこそですよ!」と恐縮しつつ「僕ら二人のシーンは濃い顔と濃い顔で迫力のあるシーンになっています」と笑わせた。そんな今井について神尾は「今井さんが初日の日に「初日は緊張するなぁ」と僕に声をかけてくれました、僕らの目線の高さに合わせてくださり、僕の緊張をほどいてくれました。純としてしっかり対峙できたのは、今井さんのお人柄のお陰です」と感謝していた。
最後に今井は「完成した作品を観た時に、高校生たちの透き通った美しさが画になっていると思います。自分も40にはなったけれども、またいつか学生服を着てお芝居ができたら笑」と学生役に意気込み。すかさず神尾が「それは監督にお願いしてください!」と草野監督に話を振ると、草野監督も「おおお!」と満更ではなさそうだった。
▼先行上映情報
11月26日(金)より
【東京】TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ新宿、
【大阪】TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズセブンパーク天美 先行上映中
『彼女が好きなものは』
【STORY】
⾼校⽣の安藤純は⾃分がゲイであることを隠して日々を過ごしている。ある日、書店でクラスメイトの三浦紗枝が、男性同⼠の恋愛をテーマとした、いわゆるBLマンガを購⼊しているところに遭遇。BL好きであることを秘密にしている紗枝は「誰にも言わないで欲しい」と純に口止めをするのだが、彼女はまだ知らなかった。⽬の前にいる純がゲイであることに。
純には妻⼦ある同性の恋⼈・誠がいるが、書店での遭遇をきっかけに、純と紗枝は急接近。紗枝の友⼈達とダブルデートをしたり、クラスメイトたちと遊園地で遊んだりと仲を深めるうちに、純は紗枝から告⽩をされる。 「⾃分も“ふつう”に⼥性と付き合い、“ふつう”の人生を歩めるのではないか︖」。⼀縷の望みにかけるかのように、紗枝の告⽩を受け⼊れ、付き合うことになったのだが・・・。
監督・脚本:草野翔吾
原作:浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」(角川文庫刊)
出演:神尾楓珠 山田杏奈 前田旺志郎 三浦獠太 池田朱那
渡辺大知 三浦透子 / 磯村勇斗 山口紗弥加 / 今井 翼
エグゼクティブプロデューサー:成 宏基
プロデューサー:前原美野里、宮本 綾
宣伝プロデューサー:小口心平
企画協力:KADOKAWA / 企画・制作・プロデュース:アニモプロデュース
配給:バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース
製作:「彼女が好きなものは」製作委員会
2021年/日本/121分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/デジタル
(c)2021「彼女が好きなものは」製作委員会 PG12
公式サイト: https://kanosuki.jp
12月3日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー