映画『渇水』の初日舞台挨拶が、6月2日、東京・TOHOシネマズ 日比谷にて行われ、主演の生田斗真をはじめ、共演の門脇麦、磯村勇斗、山﨑七海、柚穂の豪華俳優陣と、髙橋正弥監督、プロデューサーを務めた白石和彌が登壇した。
林満の小説「渇水」を『凶悪』『孤狼の血』シリーズ、『死刑にいたる病』などで知られる映画監督・白石和彌の初プロデュースにより刊行から 30 年の時を経て映画化。本作は、水道料金を滞納する家庭の水を日々停めて回る業務に就く水道局員の主人公が、心の渇きにもがきながらも“生の希望”を取り戻していく様を描くヒューマンドラマ。水道局員・岩切俊作を生田斗真が演じ、門脇麦、磯村勇斗、尾野 真千子ら実力派俳優が脇を固め、真の絆とは何かを問いかけ、観る者を生への希望で照らし出す。監督は、数々の監督作品で助監督としてキャリアを重ねてきた髙橋正弥が務めた。
1990年に書かれた原作を30年かけて映画化を実現した高橋監督は「バブル期の終わりに華やかな生活の裏で、貧困や児童虐待の要素が書かれているんですが、2020年代になってもそういった問題は解消されていない。これがそのままだったらさらに20年30年たっても変わらないということになる。それは非常に我々大人の世代が今変えていかなきゃいけないんじゃないかと思った。次の世代に格差社会、貧困、ネグレストなどがないということを展示提案したくて、映画をつくらせていただきました」と、映画制作への熱い想いを口にした。
そんな高橋監督の思いに感銘を受けたという白石は「原作はもっとビターで、ある種残酷な終わり方だったけれど、この映画では二人が生きて行きついた未来にメッセージを込められていて、ここに何か今の時代にこの作品を作る意義があるんじゃないのかなと感じました」とコメントした。
大雨の天候の中、劇場に駆け付けた観客に感謝の気持ちを述べた生田。「好きなシーン、印象に残るシーン」を問われると、「若い俳優(山﨑と柚穂)の二人が水の入っていないプールでシンクロナイズドスイミングごっこをしているシーンが鮮明に記憶に残っています」とし、「(水はないのに)キレイに輝く水が見えて、とても際立ったシーンでした」と述懐。
山﨑も「そのシーンは私も好きです。物語はそこから始まっていますし、幸せの裏の辛さもあるんだと思いながら演じました」と振り返る。柚穂も印象に残っているシーンだと話した。
門脇が「生田さん演じる岩切の感情が決壊する瞬間には感動しました。まるでダムの壁が壊れたくらい凄かった。印象に残っています」と答えると、生田自身も「普段感情に蓋をしているような、何も感じないようにしていた男が感情を爆発するシーンだったので、(自身も)大切にしていたシーンなので、そう言っていただけると嬉しいです」と笑顔を見せる。
一方で、磯村は「母親役の門脇さんがネイルを塗っているシーン」を挙げ、「本当に渇ききっているなと。何も喋らなくても説得力のあるシーンでした」としみじみと語った。
白石は「縁側でみんなでアイスを食べているシーンですが、鬼の長回しでして(笑)。アイスを食べるだけのシーンだけど、すげーなと思って(笑)」と含み笑い。アイスを1本食べきらないといけないシーンだったそうだが、磯村は「何本も食べましたよ。5~6本?」と苦笑い。生田も「真夏なのに震えている磯村くんを見ました 。不憫でしたね(笑)」と続けて、会場の笑いを誘っていた。
また、高橋監督はそれぞれの俳優たちに感謝の気持ちを伝え、「生田さんは目の強さ。感情が爆発するとき一番強い目の演技をしてほしいと思っていた。死んだような目をつづけてくれて感銘を受けていた。(岩切が)生田さんで良かったなと思っています」と絶賛。門脇には「佇まいが凛としていて何ものにも負けない姿があった」とし、磯村には「セリフがないとき、岩切の隣に立って見ているときの設定だとしても感情を込めて演じていた。いいところに立って、いい芝居をしているんだよと、スタッフの評判も良かったです」と吐露。
白石も「一見地味な作品ですが、実際観を作ってくれた。それぞれが落とし込んでリアルに演じてくれていました」と満足気だった。
本作は、台湾での上映、上海国際映画祭の参加も決定。海外の人々にこの作品を観てもらえることに生田は「国を超えて、たくさんの方に届けられるのは本当に嬉しい」と感慨。先日カンヌ映画祭で男優賞を受賞した役所広司の名前を挙げ「役所さんカッコよかったよね。憧れるなと思いました」と、さらなる飛躍をいだいている様子だった。
映画『渇水』
<STORY>
日照り続きの夏、市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)は、来る日も来る日も水道料金が滞納する家庭を訪ね、水道を停めて回っていた。県内全域で給水制限が発令される中、岩切は二人きりで家に取り残された幼い姉妹と出会う。蒸発した父、帰らなくなった母親。困窮家庭にとって最後のライフラインである“水”を停めるのか否か。葛藤を抱えながらも岩切は規則に従い停水を執り行うが――。
生田斗真
門脇麦 磯村勇斗
山﨑七海 柚穂/宮藤官九郎/宮世琉弥 吉澤健 池田成志
篠原篤 柴田理恵 森下能幸 田中要次 大鶴義丹
尾野真千子
原作:河林満「渇水」(角川文庫刊)
監督:髙橋正弥
脚本:及川章太郎
音楽:向井秀徳
企画プロデュース:白石和彌
製作:堀内大示 藤島ジュリーK. 徳原重之 鈴木仁行 五十嵐淳之
企画:椿宜和
プロデューサー:長谷川晴彦 田坂公章
製作:「渇水」製作委員会
製作プロダクション:レスパスビジョン
制作協力:レスパスフィルム
配給:KADOKAWA
©「渇水」製作委員会
2023/日本/カラー/ヨーロピアンビスタ/100分
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