映画『葛城事件』の初日舞台挨拶が、6月18日、東京・新宿バルト9にて行われ、主演の三浦友和をはじめ、共演の新井浩文、若葉竜也、田中麗奈と、赤堀雅秋監督が登壇した。
本作は2013年に赤堀監督の作・演出で劇団THE SHAMPOO HATが上演した同名の舞台を映画化。抑圧的に家族を支配する父親・葛城清と、リストラされ孤立する長男・保、無差別殺傷事件を起こし死刑囚になる次男・稔、精神を病む母・伸子の家族が崩壊していくさまを描く壮絶な人間ドラマ。
上演後の舞台挨拶となったが、客席を見渡した赤堀監督は「どんよりしているかと思ったけど、温かい拍手をいただきホッとしました。巷では“絶望的な映画”、“救いのない映画”と言われていますが、僕のなかでは“希望の映画”「です」と胸を張った。すると、新聞の切り抜き記事を胸ポケットから取り出した三浦は、「ここに、この作品の広告が掲載されていて、試写のコメントが載っているんです。“邦画史上類を見ない家庭崩壊映画の誕生”“二度と見たくない名作”“血の気が引くエグさ”と(笑)」と嬉しそうに読み上げ、満足そうに笑った。
鬼気迫る迫力で父親を演じた三浦は、脚本を読んだときの感想を「清の孤独と、弱さにすごく惹かれました」と語り、印象的なシーンについて「『3年目の浮気』(を熱唱)に命を懸けました」と明かす。
このシーンはデュエット曲「3年目の浮気」を男性パートだけ一人で必死に歌うというもの。
「(一人で歌うと)曲として成立しないのでストレスがたまってしまいました」と話すと、「練習で奥様(百恵夫人)と歌ったんですよね?」と監督。「はい、一緒に歌ってくれたのでストレス解消になりました」と照れ笑いし、会場を沸かせた。
近年は、映画『アウトレイジ』でヤクザの若頭役などを演じ、“悪役”もしっかり板についてきた三浦だが、本作はそれを上回る凶悪さ。「芸能人として大事な好感度はなくしましたね(笑)」と言い、「これからは“優しいお医者さん”とか“物わかりのいい警察官”とかを選んでやっていきたいです」と、イメージチェンジを希望した。
オーディションで役を勝ち取った若葉は「濃密な時間でした」と振り返る。かつて若葉と共演した三浦は「10代の時は清く正しい子だったんですよ。ところが、本読みの時にあったら、雰囲気が稔そのものだったので、数年でずいぶん変わるもんだなとビックリしました」とその成長を喜んでいた。稔と獄中結婚する・順子役を演じた田中は「感情移入するのが難しい役でした。今まで演じてきた役とは違って、普段とは違う角度で彼女(順子)を見つめて入りこみました。貴重な体験でした」としみじみ。
同作の舞台版にも出演した新井は、俳優としても活躍する赤堀監督に向け「俳優としては正直、うちの方が上なんです」ときっぱり。「演出だと小芝居が大嫌いなのに、自分が演じるとすぐ小芝居するんです」とチクリ。これには監督も笑いながら同調。しかし、「監督としてはすごく好きです。脚本も演出も好きだし、カット割りも好きです」としっかりと称え、「可愛らしい部分がたくさんあって、人間的な人なんです」と優しい笑顔を送っていた。
翌日の父の日にかけて、清のような父がいたらどうですか?という問いには、「イヤでしょ」「イヤです!」と声を揃えた新井と若葉。「自殺しないといけないし・・・」「刺さなきゃいけないし・・・」と答え、笑いを誘う一幕も。
最後は、三浦が「こういうミニシアター系と言われる映画を、みなさんのお力で発展させていただきたいです」と熱い思いを伝え、イベントを締めくくった。
『葛城事件』
【STORY】
親が始めた金物屋を引き継いだ葛城清(三浦友和)は、美しい妻との間に2人の息子も生まれ、念願のマイホームを建てた。思い描いた理想の家庭を作れたはずだった。しかし、清の思いの強さは、気づかぬうちに家族を抑圧的に支配するようになる。長男・保(新井浩文)は、幼い頃から従順でよくできた子供だったが、対人関係に悩み、会社からのリストラを誰にも言い出せずにいた。堪え性がなく、アルバイトも長続きしない次男・稔(若葉竜也)は、ことあるごとに清にそれを責められ、理不尽な思いを募らせている。清に言動を抑圧され、思考停止のまま過ごしていた妻・伸子(南果歩)は、ある日、清への不満が爆発してしまい、稔を連れて家出する。
そして、迎えた家族の修羅場・・・。葛城家は一気に崩壊へと向かっていく―
出演:三浦友和 南果歩 新井浩文 若葉竜也/田中麗奈
監督・脚本:赤堀雅秋
配給:ファントム・フィルム
映画の区分:PG12
©2016『葛城事件』製作委員会
公式HP:http://katsuragi-jiken.com
公式twitter:https://twitter.com/katsuragi_jiken #葛城事件
新宿バルト9ほか全国公開中