Open Close

佐久間由衣&奈緒インタビュー! 映画『君は永遠にそいつらより若い』 「この映画で“生きろ”というメッセージが届けられたら嬉しい!」

「君は永遠にそいつらより若い」-(8)-2

芥川賞作家・津村記久子のデビュー作にして第21回太宰治賞受賞作品である『君は永遠にそいつらより若い』を映画『あかぼし』『スプリング、ハズ、カム』の吉野竜平の手で実写映画化。現在全国公開中だ。

本作は、卒業間近の大学生である主人公がなんとなく過ごす日常の中で、ふとした折に「暴力」「児童虐待」「ネグレクト」などの社会の闇と、それに伴うやり切れない「哀しみ」に直面する物語。

主人公の大学生・堀貝佐世(ホリガイ サヨ)役の佐久間由衣と、痛ましい過去を持つ猪乃木楠子(イノギ クスコ)役を演じた奈緒が、この映画で感じたメッセージを真摯に語ってくれた。

「君は永遠にそいつらより若い」-(23)

― まずは、今回のオファーを受けたときのお気持ちをお聞かせください。

佐久間由衣(以下、佐久間):とても嬉しかったです。オファーをいただいて、原作と台本を読ませていただきました。私は自分の身長の高さやショートカットであるということが役に合わなくて、思い描いているイメージと違う・・・と言われることがよくあるのですが、今回、原作に書かれているホリガイの容姿が自分と合っていて。自分が使えるものがあれば、ぜひ挑戦してみたいと思いました。

どこにでもいそうな大学生の女の子が主人公ですが、身近な人がいなくなってしまったり、新しい出会いがあったり、いろいろ悩みもある。原作の文章の中に滲み出ているヒリヒリする部分、そういう小説ならではの表現というものを映画にすることになるので、大切に丁寧に丁寧に臨みたいと感じました。

奈緒:私はプロデューサーの深谷さんが私の初舞台を観に来てくださって、その時に「原作を読んでください。イノギさんの役をお願いしたい」というお話をいただきました。原作を読ませていただいて、この作品自体がとても魅力的でしたし、主人公のホリガイさんが、これまで見たことのないような主人公でした。社会と向き合ってもがいていて、他人のことを気にしすぎていて不器用で、生きていくのが上手じゃない。そんなホリガイさんの姿にとても惹きつけられ、そんな彼女をイノギさんのように放っておけないような人って絶対に世の中にいるんだろうなと。

その二人を中心に、関わってくる他の登場人物のみんなも目が離せない人たちばかりで。作品だと目が離せないけれど、きっと日常にいたら注目はされない人たちなんだろうなと感じたので、ぜひこれは参加させていただきたいと思いました。この難しい題材でイノギさんという役を自分が担う責任もありましたが、最初からプロデューサーの深谷さんの作品に対する熱意と深い愛を感じていたので、是非ご一緒させて頂きたいと思いました。

「君は永遠にそいつらより若い」-(91)

「君は永遠にそいつらより若い」-(94)

― お二人は今回初めて共演されましたが、最初の印象と共演をされてからの印象を教えてください。

佐久間:クランクインする前に監督が奈緒ちゃんとお茶会をする機会を作ってくださったんです。お見合いみたいな(笑)。そのときが初対面だったのですが、奈緒ちゃんが先に到着されていて、扉を開けて入ると私が原作と台本で読んでいたイノギさんがそこにいたんです。そこでもうこの映画が素敵なものになると感じました。

あとから、普段から奈緒ちゃんが役と向き合うときにその役をイメージして顔合わせをすることがあると聞いて、もう本当に素敵な女優さんだなと思って刺激を受けました。これから同じ時間を過ごせるのが楽しみだなって思ったし、そのあと色々な話をしてチャーミングな一面とかも知ることができました。現場では言葉を交わさなくても落ち着いていられるような関係性になっていたし、盛り上がるときは盛り上がって、そういう時間を奈緒ちゃんと作っていくことができたのが、素晴らしい財産でした。

でも、ビジュアルはイノギさんだったんですけど、どこか面白みがあるんです。真面目に楽しんでいる印象があって、お芝居が好きなんだなぁと思いました。以前からいろんな作品を拝見していますが、遊び心を感じます。舞台でもやっぱり本気で楽しんでいて(笑)。普段からユーモアがあって、たまに毒を吐くこともあって凄く面白いんです。私が奈緒ちゃんを素敵な女優さんだと思ってた理由が、一緒にいるにつれてわかっていきました。

「君は永遠にそいつらより若い」-(54)

「君は永遠にそいつらより若い」-(55)

奈緒:私は最初に、監督に「佐久間さんってどういう方ですか?」って聞いたんですよ。そうしたら、「すごく真面目な方ですよ」と一言返ってきて。実際に初めてお会いしたときは、凛とした人だなと感じましたし、第一印象は佇まいがとても綺麗な人だなと思いました。

由衣ちゃんは凛として静かに流れている空気をまといながらも、大きな口を開けて笑ってたりとか、おちゃらけてたり、ひょうきんな部分もあって、こんなに綺麗な人なのに、なんでこんなに周りを緊張させないんだろうと、凄く感じました。第一印象の静かな部分と、話していくなかで見えた親しみやすい無邪気な部分というのは由衣ちゃんが併せ持つ素敵な魅力だと思いますし、今回一緒にお芝居をしていく中で由衣ちゃんは私のことも凄く思って考えていてくれていたと思います。

奈緒:なんだか、お互いを褒めあってるね(笑)。

佐久間:そうだね(笑)。

奈緒:カメラを回して特にセリフがないシーンもありましたが、そういうシーンのときでも安心してホリガイさんとイノギさんでいることができたと思います。由衣ちゃんをとても頼りにしてましたし、一緒にいて楽しかったです。二人でカキなべをするシーンはセリフがないんですよ。

佐久間:でも楽しかったよね(笑)。

「君は永遠にそいつらより若い」-(84)

― 監督から特別な演出などはありましたか?

佐久間:クランクインする前にたくさん話し合いができていたので、現場では特別に何か言われることはあまりなかったです。監督の中で、確実に見えてるものがあって、ポツリポツリという言葉を耳にすませて聞き逃さないようにしていた気がします。監督はボロボロになるくらい原作を読み込まれていて、そのうえで私たちに委ねてくれていたのではないかと。

奈緒:私も現場であまり演出を受けた記憶はないです。どちらかというと、吉野監督は準備段階から演出が始まってる感じがします。由衣ちゃんとお茶会を設けてくれたのもそうですし、役に対して、例えばイノギさんが持ってるリュックの中身一つをとっても、どういうものが入ってるのかということまで全部共有できていました。それはどういうふうに動くかというお芝居のやり方ではなくて、もっと内面的なところでどうやってその人としていられるかを一緒に作ってくれたような気がします。なので、そういう動きをするように言われなくても、自然とそれがにじみ出るように監督に誘導されてたような気がします。

「君は永遠にそいつらより若い」-(45)

― 奈緒さんは監督と一緒にイノギさんの履歴書を作られたとか?

奈緒:はい。血液型から好きなお酒やサボテンが好きそうとか、どういう映画が好きなんだろうとか、甘いもの好きかなとか・・・まるで本当にイノギさんという人が存在するかのように、イノギさんってどういう人だろうねって話をしました。甘いお酒は飲まなそうに見えて甘いお酒飲むんだよなみたいな(笑)、細かい癖一つのところまでいろいろ話しました。

― 佐久間さんも履歴書を作られましたか?

佐久間:はい、作りました。いま奈緒ちゃんが言っていたようなことや、家の中っていうシーンが何回か出てくるので、散らかってるんだけど汚れてるわけじゃないとか。散らかってるけど、何がどこにあるかわかってる。洗い物はちゃんとしていて水回りキチンとできていて不潔ではないけど、几帳面でもないんだよねというようなところですね。

「君は永遠にそいつらより若い」-(75)

― それでは、完成作品の感想と、これから映画をご覧になる皆さんに見どころとメッセージをお願いします。

佐久間:私は初号試写を見終わった後に涙が止まらなくなってしまいました。自分が出演している映画でそういう感じになったことはあんまりないのですが、小日向さん演じるヨッシーが言った「人は朝起きて歯を磨くみたいに簡単に死ねちゃうんだよな」というセリフが、すごく響いて涙が止まらなくなってしまいました。私たちは何かを選択しながら常に生きています。朝起きて、生きるか死ぬかを人は選べることができて、歯を磨くか、顔を洗うか、全て選択して生きていけるわけです。

その中で私たちはたまたま“生きる”を選び続けてるから生きているけど、そうじゃない選択を取るってすごく苦しいことなんだなと思いましたし、日常って当たり前じゃないんだという感想を持ちました。生きていると苦しいこともあるけれど、みんなには生きることを選択してほしいと思いましたし、自分なんて大した人間じゃないと感じている人もいるかもしれませんが、そんなことないし、誰かと関わっている時点で誰かを救えているはず。この映画がそういう存在になれたら嬉しいです。

「君は永遠にそいつらより若い」-(52)

奈緒:この作品は私自身一本の作品として、とても好きな映画だと思いましたし、心からみんなに勧めたい気持ちになりました。ものすごく強くてまっすぐな“生きろ”というメッセージを、この映画から感じるので、たくさんの方に生きているうちに届いてほしいと思いました。

監督が「大丈夫?って聞かれて、大丈夫って笑って言ってるんだけど本当は大丈夫じゃない人のためにこの作品を作った」と仰っていました。この作品はまさにそういう監督が思い描いていた映画になってると思いますし、少なくともこの作品に関わったみんながそういう気持ちを持って、この1本の映画を作りました。それが誰かに対して、映画を観に来てくれる方たちに対して、「私たちがいますよ」「気にする人たちがここにいます」という、一つのメッセージになって届いてくれたらいいなと思います。

「君は永遠にそいつらより若い」-(4)

【佐久間 由衣(さくま ゆい)】
1995年3月10日生まれ。神奈川県出身。
2014年女優デビュー。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17)ではヒロインの親友役を演じた。同年「明日の約束」での演技で、10月期コンフィデンスアワード·ドラマ賞の新人賞を受賞。初主演映画『”隠れビッチ”やってました。』(19/三木康一郎監督)では第32回東京国際映画祭で東京ジェムストーン賞を受賞。ほかにも『あの日のオルガン』(19/平松恵美子監督)、『劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』(19/野口照夫監督)などに出演。近作に『殺意の道程』(バカリズム脚本、住田 崇監督)。また、2020年12月~21年1月にかけて出演した舞台「てにあまる」(演出:柄本 明)で初舞台を飾った。最近はドラマ「ひきこもり先生」、「彼女はキレイだった」に出演。NHKドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」が放送中。また11月4日に初の写真集「佐久間由衣写真集 SONNET 奥山由之撮影」が発売される。
佐久間由衣 公式サイト:https://yuisakuma.com

【奈緒(なお)】
1995年2月10日生まれ。福岡県出身。
NHK連続テレビ小説「半分、青い。」(18)でヒロインの親友役に抜擢され、19年「あなたの番です」(NTV)ではサイコパス役を怪演し話題を集める。舞台出演作に「終わりのない」(19/世田谷パブリックシアター)、玉田企画「今が、オールタイムベスト」(20)。
初主演映画に『ハルカの陶』(19/未次成人監督)。ほかにも『サムライマラソン』(19/バーナードローズ監督)、『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(20/中田秀夫監督)、『事故物件 恐い間取り』(20/中田秀夫監督)、『みをつくし料理帖』(20/角川春樹監督)、『劇場版 シグナル 長期未解決事件捜査班』(21/橋本 一監督)など多数出演。『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21/堀江貴大監督)が公開中。待機作に『マイ・ダディ』『あなたの番です 劇場版』などがある。

インタビュー撮影:ナカムラヨシノーブ

KESW_poster

映画『君は永遠にそいつらより若い』
<STORY>
大学卒業を間近に控え、児童福祉職への就職も決まり、手持ちぶさたな日々を送るホリガイは、身長170cmを超える22歳、処女。
変わり者とされているが、さほど自覚はない。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。
同じ大学に通う一つ年下のイノギと知り合うが、過去に痛ましい経験を持つイノギとは、独特な関係を紡いでいく。
そんな中、友人、ホミネの死以降、ホリガイを取り巻く日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。

佐久間由衣 奈緒
小日向星一 笠松将 葵揚 森田想
宇野祥平 馬渕英里何 坂田聡

監督・脚本 吉野竜平
原作 津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』 (ちくま文庫)
主題歌 小谷美紗子「眠れない」
製作統括:トリックスターエンターテインメント
制作プロダクション:マウンテンゲート・プロダクション
配給:Atemo
配給協力:アーク・フィルムズ
企画協力:筑摩書房
製作:「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会 読売新聞社 トリックスターエンターテインメント キョードーグループ オセアグループ 博報堂DYミュージック&ピクチャーズ
2020|日本|日本語|シネマスコープ|5.1ch|DCP|PG12|118分
©「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会
公式サイト:https://www.kimiwaka.com/

9月17日(金) テアトル新宿ほか全国公開中

佐久間由衣さん&奈緒さんツーショット
直筆サイン付きチェキプレゼント!

応募はこちらから

「君は永遠にそいつらより若い」-(107)