映画『国宝』の完成報告会が、4月23日、東京・帝国ホテルにて行われ、主演の者吉沢亮をはじめ、共演の横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、見上愛、田中泯、渡辺謙と李相日監督が登壇した。
作家・吉田修一自身が、本作の歌舞伎指導も務めた中村治郎の元で3年の間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にし、書き上げた小説「国宝」を実写映画化した本作は、任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる主人公・喜久雄の50年を描いた壮大な一代記。
父を抗争の末に亡くし、上方歌舞伎の名門・丹波屋に引き取られ、稀代の女形として脚光を浴びていく主人公・喜久雄を吉沢亮、上方歌舞伎の名門・丹波屋の御曹司として生まれ、喜久雄の親友でありライバル・俊介を横浜流星、上方歌舞伎の名門・丹波屋の看板役者である花井半二郎を渡辺議が演じ、さらに高畑充希、島しのぶ、森菜、見上愛、田中泯ら豪華俳優陣が顔を揃えた。李相日監督がメガホンを取り、脚本は、『八日目の蝉』、『コーヒーが冷めないうちに』『おおかみこどもの雨と雪』などを手掛けた奥寺佐渡子が担当。中村鴈治郎が歌舞伎指導を務めた。この日、本作の主題歌に原摩利彦 feat. 井口理の「Luminance」が決定したことも発表され、本予告が解禁となった。
先日、第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」への選出も発表され、早くも大きな期待が寄せられている本作。監督は「超狭き門ですが、日本のエンターテインメントと作品性も認められ、歌舞伎という日本の伝統を覆す映画体験をしていただければ」と出品を喜ぶ。
その発表を、横浜と一緒に京都で仕事をしていたという吉沢は「映画に携わらせていただいている人間として、カンヌは憧れの舞台。そこにおじゃまできることも嬉しいし、流星と一緒にいるときに発表を聞き、運命じみたものを感じました」としみじみ。「監督おめでとうございます」と言うと、監督は「君もね(笑)。総力戦ですから」と笑顔で返す。横浜も「京都で喜びを分かち合いました。魂を込めた作品なので心から嬉しいです。海外の方にどう受け取ってもらえるか楽しみです」と心躍らせた。
喜久雄と向き合い、怒涛の日々を送った吉沢は「撮影期間も含め、1年半歌舞伎の稽古を重ねて役に向き合ってきました。1つの役で1年半も向き合うのはなかなかできないこと。どの作品も全力でやっていますが、今回は掛けた時間とエネルギー量が桁違いでした。それだけのものを背負って現場に臨んだ、僕の役者人生の集大成。培ってきた全てをぶつけた作品です」と感慨。完成した本編を2回観たそうで、「いろんな思いがあったので、1回観ただけでは全てを処理しきれなかった。とにかく凄いものを観た。余韻が凄かったです。カメラワーク、お芝居、ライティング、総合芸術の素晴らしさがこの作品にありました」と目を輝かせた。
横浜は「俊介と言う人物は自分とは正反対で苦手なタイプの人間なんです。まずは彼を理解し愛すことから役作りを始めました。李監督は僕自身が律して眠らせているものを開放して、挑戦させてくれるので役者冥利に尽きます。力不足も感じましたが、とても幸せな時間を過ごすことができました」と回顧。「芸に人生を捧げたキャラクターたちの生き様が美しく、感銘を受けました。彼らのような人生を送るためには、芸に励むのみ。役者の方が観れば、いろんな思いが感じられると思います」と役者としての自身も感銘を受けていた。
喜久雄の恋人で彼の人生に関わっていく春江を演じた高畑は、完成作品を観て「本当に食らってしまって」と一言。「映画を観たあと1~2日引きずるんです。重厚な作品に参加させていただけたなと思いました。春江は喜久雄と俊介を、若いときから歳を取ったところまで一番長く寄り添う役がら。2人(吉沢と横浜)が凄く頑張っていたので、自然と舞台裏でも『何か力になれないか』と思いました」とコメントした。
半二郎の妻で俊介の母・大垣幸子を演じた寺島は、自身が歌舞伎と近い存在であることから、「(原作を読んで)リアルに考えてもあまり成り立たないような、夢のあるような物語だと感じました。歌舞伎の世界ではあり得ないこと。やはり世襲なので」とキッパリ。現場では「役者というよりスタッフの一員のようでしたね(笑)。自分が見てきた(歌舞伎と)違うと感じたところ、セットなどは監督にお伝えしました」とリアルな映像に一役買っていた様子。
喜久雄を慕う歌舞伎役者の娘・彰子を演じた森が、吉沢に対して「現場で見ていた吉沢さんは、青い炎のように見えて近寄れなかった・・・」と話すと、吉沢は「喜久雄は彰子と一緒にいても、常に自分の世界の中にいるような感じだったので、僕から森さんにあまり話しかけるのも違うのかなという空気感もありました」と返しながら、「青い炎を燃やしていました」と笑った。
また、森は「カメラが回っていないときに、吉沢さんがポロッと物を落とされたことがあったんですが、女性らしく凄く美しく拾われて。凄すぎる!こういう時間を彰子は目にしていくんだと思って、演じるときの手助けになりました」と吉沢の振る舞いを称え、吉沢を照れさせる。
喜久雄と京都の花街で出会う芸妓・藤駒を演じた見上は、「撮影2カ月前から日本舞踊、1カ月前から三味線を始めましたが、日本舞踊のお稽古で、すれ違いで横浜さんを見て『これは間に合わないかも』と焦りました。芸ごとから役を作っていくことはとても新鮮でした」と振り返った。
人間国宝・万菊を演じた田中は、ダンサーとしても深い思いがあったようで、「自分は伝統や常識から逃げるように生きてきた人間ですが、踊りが生まれたこと、始まりの歌舞伎に憧れを持っていた。人間が開発した言葉に踊りつき、歌舞伎舞踊という見事な文化を生み出した。歌舞伎の話をするのは初めてですが、まさか僕に(出演オファーが)来るとは思ってもみなかったです」語り、「この映画に出していただき、僕の新しいスタートラインになると思います」と出演を喜んだ。
渡辺は「李監督から『歌舞伎というエンターテインメントの世界で生きている中で溜まってしまった澱(おり)や業(ごう)のようなものが花井半次郎の中に欲しい』と言われた。演目の稽古もしましたが、喜久雄や俊介の2人をどう見つめ、彼らから放たれたものを突き上げていけるかが僕にとっては重要でした」と役と向き合ったと話す。
また、完成作品を観て「これは『吉沢の代表作品になるね』と李監督に話しました。作品を背負う覚悟、執念を彼は持ち続けていた。俳優仲間として凄い物を作ったんだなと尊敬しました」と太鼓判を押し、吉沢に賛辞を送った。
歌舞伎を映画化する難しさについて、李監督は「なぜ100年近くも歌舞伎の映画ができなかったか? それは無理だから・・・と思った」と述べつつ、「吉田さんがそれを突破して、次は自分が背負おうと思った。それで吉沢さんを引き入れ、自分だけでは背負えないものを分け合った」と明かす。そして「ラッシュを観終わったあとに吉田さんから『100年に1本の芸道映画!想像を超えてきた』と言っていただいた。吉田さんもどこかで、歌舞伎俳優ではない方々に、あのたたずまいを作れるのかと考えていたと思う。その杞憂を全て吹き飛ばし、もの凄く喜んでくださいました」と、映画の出来栄えに自信をのぞかせていた。
◆予告編
<ストーリー>
後に国の宝となる男は、任侠の一門に生まれた。
この世ならざる美しい顔をもつ喜久雄は、抗争によって父を亡くした後、
上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込む。
そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介と出会う。
正反対の血筋を受け継ぎ、生い立ちも才能も異なる二人。
ライバルとして互いに高め合い、芸に青春をささげていくのだが、
多くの出会いと別れが、運命の歯車を大きく狂わせてゆく…。
誰も見たことのない禁断の「歌舞伎」の世界。
血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切り。
もがき苦しむ壮絶な人生の先にある“感涙”と“熱狂”。
何のために芸の世界にしがみつき、激動の時代を生きながら、
世界でただ一人の存在“国宝”へと駆けあがるのか?
圧巻のクライマックスが、観る者全ての魂を震わせる ――。
<作品概要>
タイトル:『国宝』
原作:「国宝」吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
脚本:奥寺佐渡子
監督:李相日
出演:吉沢亮
横浜流星/高畑充希 寺島しのぶ
森七菜 三浦貴大 見上愛 黒川想矢 越山敬達
永瀬正敏
嶋田久作 宮澤エマ 中村鴈治郎/田中泯
渡辺謙
製作幹事:MYRIAGON STUDIO
制作プロダクション:クレデウス
配給:東宝
コピーライト:©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会
公式サイト:kokuhou-movie.com
公式X:https://x.com/kokuhou_movie
公式Instagram:https://www.instagram.com/kokuhou_movie/
2025年6月6日(金) 全国東宝系にて公開!