韓国映画史上に残る究極のサスペンス・スリラー『哭声／コクソン』のプレミア上映会が、1月24日、東京・シネマート新宿にて行われ、本作に出演の國村隼と、監督のナ・ホンジンが登壇した。
2016年カンヌ映画祭や世界の映画祭で観る人を震撼させ、韓国でも観客動員数が700万人に迫る大ヒットを記録している本作は、『チェイサー』『哀しき獣』で知られるナ・ホンジン監督の最新作。平和な田舎の村に得体の知れないよそ者が訪れるとともに、村人が自身の家族を惨殺するという事件が多発。よそ者を追い詰めていくが次第に村が混乱の渦に巻き込まれていく。村に大きな変化をもたらす”よそ者“を演じた國村が日本から参加。物語のキーマンとして圧倒的な存在感を示している。
立ち見も出るほどの超満員の客席を見渡し、その反響ぶりに嬉しさを隠せない國村隼とナ・ホンジン監督。「みなさんに観ていただき、嬉しくて嬉しくて一人一人にハグしたい気分です。本当にありがとうございます」と國村。約5年3か月ぶりの来日となったナ監督は、「シナリオから6年くらいかけて作った映画。今日という日を迎えられて嬉しいです」と感無量の様子。チイーチインでは活発な質疑応答が繰り広げられた。
「すでにリドリー・スコット監督の製作会社からリメイクのオファーが入ったとのことですが、韓国サイドでは『この題材を撮れるのはナ・ホンジン以外いない』と明言されたそうですが、オファーがきたらもう一度本作を撮りますか？」という質問に、監督は「スコット・フリー（製作会社）から連絡があったという事は聞きましたが、『演出できるのはナ・ホンジンしかいない』と冗談半分で言ったのだと思いますよ(笑)。でも自分はリメイク版を演出するつもりはありません」と、キッパリ。「でも國村先生はこの映画に重要な方なので、必ず必要になると思います。ですからオススメしたいです」とニッコリ。
それを受けて國村も「オススメされてもやはり、ナ・ホンジンがメガホンを取らないのであれば、私もやることは多分ないんじゃないかと思います」と微笑みながら、やんわりとお断りが。
「本作は前作2本とは全く異なるタイプの映画になっているが、監督本来の志向はどちらなのか？」と聞かれ、監督は「前の2作品とは違って、今作は自分らしく自由に作りたいと思った作品。自分のありのままに作りました」とコメント。國村を起用した理由は「シナリオができて日本人俳優が必要ということになった。國村さんと同じぐらいの年の俳優をたくさん調べました。國村先生のことは以前から作品を通じて知っていて、ずっと尊敬していた存在。國村先生の色んな作品を観ているうちに、カットごとに完成された演技をしている特徴に気づきました。『哭声／コクソン』の中で、“よそ者”という役は、この人ってどういう存在なの？ と疑問を投げかけるとても重要な役どころなので、その役をやり遂げられるのは國村先生しかいないと思い、日本に来てオファーをさせていただきました」と告白。國村を先生と呼ぶほどの信頼ぶりをうかがわせた。
監督のことを全く知らなかったという國村は、過去の2作品を観て、本作の脚本を読み「とんでもない才能だなと思いました」と。続けて「実際撮影に臨むと最初に思った以上に、ナ・ホンジンていう人は、“才能が人の形をしている”と思いました。撮影していくにつれて新たなビジョンがどんどん出てきて、そのイメージをもっともっともっと…とテイクを重ねていくんです。それを真の当たりにして、“やっぱりすごい”と感じました」と熱弁。その衝撃はかなりのものだったようだ。
共演のファン・ジョンミンへの感想を聞かれた國村は「ファンさんに限らず、韓国の役者さんは映画の世界に来るまで色々なスキルを重ねている。経済的にもとても苦労したという様な話を聞くと、日本の役者の事情と非常に似ていて面白いなと思いましたね」とコメント。「いろんな役を演じていらっしゃるけれど、どこかにファンさん自身の、物事に対する真摯な人柄みたいなものがちょこっと出てきて、そのままの方ですね」と説明した。
また、キャスティングについては「その役に一番合う人を選ぶ」という監督だが、「年上の國村さんを裸にしてしまったり、けっこう無理なことをお願いするのは大変ではなかったか？」との問いには、「本当に申し訳なかったと思っております(笑)。でも、シナリオがそういうふうに出来上がっていたので･･･」と苦笑い。「撮影を通して、たくさんの事を國村さんから学び、驚き、感嘆しました。また撮影の過程を通して、さらに尊敬し大好きになりました」と、あらためて感謝の気持ちを伝えていた。
最後に國村は「今までこんな映画はありませんでした。カテゴライズできないエンターテインメント。新しい映画の楽しみ方の一つになる。それを体験させてみたい！という人がいたら、ぜひ誘って一緒に映画を観に来てくださいね」とメッセージを伝えた。監督は、「監督ナ・ホンジンの全てを賭け、注ぎ込んだので未練はありません。どんな評価を受けようがその全てを受け止める所存です。こんな人間が6年の全てをかけて作った映画です」と自信に満ち溢れた表情で語り、イベントを締めくくった。
映画『哭声／コクソン』
＜STORY＞
平和な田舎の村に、得体の知れないよそ者がやってくる。彼がいつ、そしてなぜこの村に来たのかを誰も知らない。この男についての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が自身の家族を残虐に殺す事件が多発していく。そして必ず殺人を犯した村人は、濁った眼に湿疹で爛れた肌をして、言葉を発することもできない状態で現場にいるのだ。事件を担当する村の警官ジョングは、ある日自分の娘に、殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。ジョングが娘を救うためによそ者を追い詰めていくが、そのことで村は混乱の渦となっていき、誰も想像てきない結末へと走り出す――。
監督：ナ・ホンジン
出演：クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒ
2016年/韓国/シネマスコープ/DCP5.1ch/156分
配給：クロックワークス
(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION
公式サイト：http://kokuson.com/
公式Twitter：@ kokuson_movie
公式Facebook：https://www.facebook.com/kokuson0311
3月11日、シネマート新宿他にて公開
