映画『キリエのうた』の公開記念舞台挨拶が、10月14日、東京・新宿バルト9にて行われ、主演のアイナ・ジ・エンドをはじめ、共演の松村北斗(SixTONES)、広瀬すずと、岩井俊二監督が登壇した。MCは本作にも出演している笠原秀幸が務めた。
岩井俊二監督が、音楽の小林武史とタッグを組んだ最新作となる本作は、別れと出逢いを繰り返しながら、4人の人生が交差し、絡み合い、奏でる13年の物語。歌うことでしか“声”を出せない住所不定の路上ミュージシャン・キリエ(路花)を、6月29日をもって解散したBiSHとして活躍し、ソロとして活動の場を広げる異色のアーティストアイナ・ジ・エンドが演じ、いなくなってしまった彼女を探す青年・夏彦を松村北斗、慈愛に満ちた小学校の先生・風美(フミ)を黒木華、”キリエ”のマネージャーを買って出る、謎の女・逸子(真緒里)を広瀬すずが扮する。
公開日の昨日、劇場で本作を鑑賞したというアイナは「吉祥寺の劇場で観て、パンフレットも買いました。ちょうどパンフレットを買って見ているスーツのお兄さんが独り言で、『ここのシーン良かったんだよなぁ・・・』とさされている姿を見ながら『キリエ、ここにいるよ、ここに来てるよぉ~』と思いました(笑)」と、ほくそ笑み、「観てくださった方の感想が聞けたと思って嬉しかったです」と満面の笑みを浮かべた。
松村も「いろんな声が届いています」としながら「それぞれにどのキャラクターが1番好きとか、どのキャラクターに1番刺さったとか、共感したとか、1番言葉にできないキャラクターはこれとか、ペンタゴングラフ的に、みんな違っている。それはこれだけ13年間を描いて、あれだけのキャラクター数がいたら、それは然るべしだろうなと思った。(観終わってから)誰かと喋りたくなったり、もっと(違う)解釈をしてみたくなるようになったと思います」とコメントした。
広瀬は「雪の中でアイナちゃんが歌い始めるシーンが私のクランクインだったんですけど、真横で聴いていたその声が世界中に届き始めているって、本当に凄いことだなと。きっと皆さんにグザグサ心に刺さるというか、お腹の底にポンと落ちてくるような、魂の叫びみたいな表現はきっといろんな人に届くんじゃないかと思います」としみじみ。
監督も「あの歌声は現場で録ったものなんです」と、その場で生まれたものをそのまま切り取ったことを伝える。
周囲の声に監督は「X(旧Twitter)を見ていると、本当に時間を忘れるくらいのたくさんのコメントが寄せられていてありがたいです。どんどん届いているんだなと、感無量です」と反響を喜びつつ、「コメントを見ていると、そういう風に観てくださっているんだ、僕の解釈とは違うんだなとか、観てくれた方の分だけ作品になっている。それが映画の醍醐味ですが、みんな違っている『キリエのうた』が広がっているなと実感しています」と語った。
また、本作は先日開催された釜山映画祭にも出品され、監督、アイナ、松村、広瀬が現地に参加した。アイナは「岩井監督が凄くモテていて。海外の俳優さんたちに声をかけられていた。プリンセスみたいな女優さんとツーショット撮っていて」と、海外でも人気のある岩井監督の姿に驚いたという。監督は「あぁ、ファンビンビンさんだね」とツーショット写真をお願いされた女優の名を明かし、会場のファンも驚きの声をあげていた。
松村は「言語は違っていても、歌声の説得力が凄かった。(キリエの)歌が刺さっているなと。国を超えて伝わっていて、“キリエ”の歌がど真ん中にいるんだなと感じました」と、感動の面持ちで話す。
完成作品を観て、アイナは「映画の劇場がみんなの逃げ場になったらいいなと思った。1日のお疲れの場所になり、癒してあげたい」と感想を述べ、広瀬は「自分が出ていないシーンでもストーリーがあって衝撃的でした。そして、みんながキリエに救われていた。真緒里として凄く罪悪感を感じて、アイナに長文の謝りメールを送りました(笑)」と明かす。
本作では、何気ないしぐさ、行動にもエチュードがあり、いろいろな心情が乗っているのを感じる。笠原と広瀬は「夏彦が靴ひもを触るシーンがたまらない」と声を合わせる。「触る必要がないのに、ああいうときそういう行動に出るのがわかる!“なっちゃんの靴ひも!”」と、いち観客目線で話し、興奮を隠せない。そのシーンは監督にとってもこだわりのシーンだったそうで、松村も「真っ昼間から日が落ちるまでやりましたね」と、回顧していた。
最後に監督からそれぞれに思いのこもったメッセージが贈られる場面も。それぞれのシーンを振り返りながら、広瀬には「真緒里はそのまんまの素直に、逸子は仮面をかぶったような役柄で、ややこしいシーンを行ったり来たりしながら頑張ってもらえた。神社にたどり着くのに積もった雪の中を一人で何か言いながら歩いている姿に路花を引っ張っていく姿が見えた。それが2日目だったんですが、ここから僕の映画が始まるなと思った。独創的なインスピレーションで(作品を)作りあげて、まさにあれは広瀬すずの作品だと思いました」と。
松村は「松村北斗さんに初めてお会いしたときに、なんて美しい方なんだと。服を脱ぐとまた美しすぎて動揺してしまった(笑)。震災の時に書いた小説を封印していたが、その話をそのまま入れた。手つかずのままの(物語に)一体どういう反応が起こるのだろうと思いながら用意した役で、ただ一色の役でない、いろんな心模様が変わりながら、状況に追い込まれながら心が傷つきながら進んでいった。その的確にその瞬間を演じてくれて、まさにこの役は松村北斗が作り上げた作品だと思っています」と称える。
アイナには「まず、歌っている姿を観て、この人しかいないと思った。撮影前から作詞、作曲をお願いし、さらに演技初めてにも関わらず姉と妹の二役をお願いして、本当に大変だったと思い、心の中で冷や冷やしてました。でも奇跡のキリエと路花が誕生したと思います。これは紛れもなくアイナ・ジ・エンドの100%の作品だったと思います」と感謝の気持ちを口にした。
さらに、サプライズで3人に監督から「不可能を可能にする」という花言葉の青いバラの花束をプレゼントしていた。
『キリエのうた』
出演者:アイナ・ジ・エンド 松村北⽃ ⿊⽊華 / 広瀬すず
村上虹郎 松浦祐也 笠原秀幸 粗品(霜降り明星) ⽮⼭花 七尾旅⼈ ロバート キャンベル ⼤塚愛 安藤裕⼦ 鈴⽊慶⼀ ⽔越けいこ
江⼝洋介 吉瀬美智⼦ 樋⼝真嗣 奥菜恵 浅⽥美代⼦ ⽯井⻯也 豊原功補 松本まりか 北村有起哉
原作・脚本・監督:岩井俊二(文春文庫刊)
企画・プロデュース:紀伊宗之(『孤狼の血』シリーズ『シン・仮面ライダー』『リボルバー・リリー』他)
音楽:小林武史
主題歌:「キリエ・憐れみの讃歌」Kyrie (avex trax)
製作プロダクション:ロックウェルアイズ
配給:東映
コピーライト:Ⓒ2023 Kyrie Film Band
公式HP:https://kyrie-movie.com/
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