映画『ロストケア』の完成披露舞台挨拶が、2月2日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われ、主演の松山ケンイチをはじめ、共演の長澤まさみ、鈴鹿央士、戸田菜穂、加藤菜津ら豪華俳優陣と、前田哲監督、原作者・葉真中顕が登壇した。
葉真中顕の第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」、「そして、バトンは渡された」の前田哲監督が映画化。本作は、社会に絶望し、自らの信念に従って犯行を重ねる殺人犯・斯波と、法の名のもとに斯波を追い詰める検事・大友が、互いの正義をかけた緊迫のバトルを繰り広げ、現代社会に、家族のあり方と人の尊厳の意味を問いかける社会派エンターテイメント。
介護士でありながら、42人を殺めた殺人犯・斯波宗典を松山ケンイチ、その彼を裁こうとする検事・大友秀美を長澤まさみが演じ、他に鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、藤田弓子、柄本明といった実力派俳優が集結した。
長年温めてきた作品の完成となり、松山は「やっと形になった。まずは(観客の)皆さんの反応を見たくて、実は僕一緒に観ていたんです」と観客とともに鑑賞していたことを明かし、「ずっと監視していたんですよ(笑)。つまらなかったら頭とか体が動くけど、そうじゃなかった。柄本さんのギリギリの演技のところでは鼻をすする音が聞こえてきて、自分が感動する部分がほとんど一緒だったんです。そんな皆さんの空気感の中で観れて僕自身も凄く感動できた。ありがとうございます」と感無量の面持ちで語った。
監督は「2013年に葉真中さんの本が出版されて、ちょうど読み終わったのを見計らったように松山さんから電話があって、いい作品があるから(映画を)やろうという話になったんです」と、経緯を話し、「10年もずっと話が成立しないなか、葉真中さんに待っていただいた」と頭を下げる。葉真中は「感激しております」と、監督の情熱と映画化の完成を喜んでいた。
出演したキャストたちも完成作品を観てそれぞれ思うことがあったようで、長澤は「自分が出ていない初めて観るシーンも多く、斯波とお父さんのシーンにはグッとくるものがあって身につまされた。観るべき映画、観てほしい映画だと思う」と熱い思いを吐露。
鈴鹿は「心の奥底に訴えてくるものがあった。介護というものは、僕らもいずれは直面すること。自分だったらどうしますか?と言われた感じがした」と感想を述べ、加藤も「介護って何だろうと考えた。親や周りの人を大切にしようと思いました」と、若い二人にも感じるものが大きかった様子。
戸田は「心の中に重い鉛を受け取った気がした。フィクションではあるけれど、起きうること。この映画を観た方が受け取ったものを発信してほしい。温かい社会になってくれれば」と思いを馳せた。
今日初めて作品を観た松山は「どういう作品になっているかというより、お客様がどう受け取るかを共有したかったんです。僕も(この話は)自分ごとになると思っている。斯波が大友に対して知ってほしいと思ったことは(観客に)伝わったと思う。今は平和な世の中だが、穴はどこにでもたくさんある。いつ落ちてもおかしくない。見たいものと見たくないものを区別するのではなく、見ないといけないんです、未来の為に。ぜひ家族や色んな人と共有してほしい、知ってほしい」と力を込めた。
イベントでは、鑑賞後の観客からの質問に直接答える企画も。「この作品を通して受け取ってほしいことは?」という質問に、長澤は「家族と自分たちの将来を語ることと同じように、生涯のことを話し合うことが凄く重要だなと思います。きょうだいで話あったり、友達と話しあったりして、ディスカッションしていくことが大事かと。この映画から感じたことを感想として述べるところから始めてもらえたらいいなと」と答える。
その言葉に、松山が「僕もまーちゃんと同じ!」と同調。長澤も「ケンちゃんも?」と笑顔を見せ、会場を和ませる。松山は「備えって大事、必要だと思います。僕もどうすれば斯波が殺さないで済んだかを考えるんです。いろんな要因はあると思うんですが、1つ間違いなく言えることは、孤独だったということ。やっぱり孤立させない、孤独にさせないということが大事なんじゃないかなと思います」と力説。
すると、監督が「この二人、現場では全然話さなかったんですよ(笑)」と暴露。それでも、松山は鈴鹿にも「おおちゃん!」とお構いなしに声をかけて笑いを誘う。もちろん、松山と長澤は役に入り込むためにしていたことだが、そんなチームワークがこの作品を作り上げたようで、監督も「この俳優たちの全身全霊で演じていただいた芝居の凄さを伝えてもらえたら嬉しいです」としみじみ。
また、松山と長澤が対峙するシーンは見どころの1つ。初めての共演となる二人だったが、長澤は「相手への信頼感が大事。斯波を松山さんが演じるという信頼感があった。きっと大丈夫だと思ったんです。会話をせずとも向き合えたら幸せ。素晴らしい日々でした」と回顧。
二人の様子を後ろから見ていたという鈴鹿は「自分がパソコンを打つのも忘れて見入ってしまいました」とその迫力に感動していた。
映画『ロストケア』
<ストーリー>
早朝の民家で老人と介護センター所長の死体が発見された。
犯人として捜査線上に浮かんだのは死んだ所長が務める訪問介護センターに勤める斯波宗典(松山ケンイチ)。
彼は献身的な介護士として介護家族に慕われる心優しい青年だった。検事の大友秀美(長澤まさみ)は斯波が務める訪問介護センターで老人の死亡率が異常に高いことを突き止める。この介護センターでいったい何が起きているのか?大友は真実を明らかにするべく取り調べ室で斯波と対峙する。「私は救いました」。斯波は犯行を認めたものの、自分がした行為は「殺人」ではなく「救い」だと主張する。
斯波の言う「救い」とは一体何を意味するのか。なぜ、心優しい青年が未曽有の連続殺人犯となったのか。斯波の揺るぎない信念に向き合い、事件の真相に迫る時、大友の心は激しく揺さぶられる。「救いとは?」、「正義とは?」、「家族の幸せとは?」、現在の日本が抱える社会と家族の問題に正面から切り込む、社会派エンターテインメント映画が、今幕を開ける!
出演:松山ケンイチ 長澤まさみ
鈴鹿央士 坂井真紀 戸田菜穂 峯村リエ 加藤菜津 やす(ずん) 岩谷健司 井上肇
綾戸智恵 梶原善 藤田弓子/柄本 明
原作:「ロスト・ケア」葉真中顕 著/光文社文庫刊
監督:前田哲 脚本:龍居由佳里 前田哲
主題歌:森山直太朗「さもありなん」(ユニバーサル ミュージック)
音楽:原摩利彦
制作プロダクション:日活 ドラゴンフライ
配給:日活 東京テアトル ©2023「ロストケア」製作委員会
公式サイト:lost-care.com
2023年3月24日 全国ロードショー!